利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0228

利用課題名 / Title

粒子徐酸化制御に基づく次世代Li2次電池電極設計

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

二次電池/ Secondary battery,電子分光/ Electron spectroscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

神原 淳

所属名 / Affiliation

大阪大学 大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-308:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)with AES


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 Siナノ粒子は,高密度高容量高サイクル安定性を両立しうるLiイオン電池(LiB)の負極活物質として期待される。ただし,ナノ粒子化に伴う比表面積の増大により,一般に重量比当たり含有酸素量を増加させる。重量比当たりの酸化量増加は,電池電極内でのLiとの不可逆相の生成増加に直結し,とりわけ電池の初期効率特性の低下を招く。この課題に対して我々は,ナノ粒子生成直後の酸化過程の制御に注目し,ナノ粒子における成長直後の酸化反応の特徴を定量評価すると共に,粒子表面酸化を抑制する方策について検討している。この定量評価には,調整されたサイズを持つナノ粒子表面のSi-O結合状態の理解が不可欠である。そこで今回,X線光電子分光を利用して,種々条件にて作成したSiナノ粒子の表面酸化状態を分析した。また,Siナノ粒子に第2元素を担持させた複合構造ナノ粒子は,高安定なサイクル充放電に寄与する事を見出しており,この複合構造ナノ粒子表面で野酸化状態の特徴も明らかとした。

実験 / Experimental

X線光電子分光計測は,アルバックファイ製PHI 5000 VersaProbeを用いた。 測定にはAl 線を用い,焦点サイズ200 µm,出力50 W, 15 kVでの測定を行なった。パスエネルギーは27 eV,ステップを0.1 eVとし,Si 2p光電子ピークを30回繰り返し測定した。また,予備実験としてスパッタリング測定も行なった.Arイオン銃の加速電圧は4 kVで2×2 mmの領域をスキャンし,スパッタリングは各12 s間行い,スパッタリングなしの測定を含め計5回の測定を行なった. 本測定で用いた試料は,プラズマスプレー物理蒸着法 (PS-PVD : Plasma spray physical vapor deposition)法により作製した.PS-PVD法は,高温のプラズマ中に原料を供給し,蒸発,急冷し固化させることでナノ粒子を作製する技術である.PS-PVD法は,原料は99.5%Siの冶金級粉末であり低価格であること,作製効率が1 kg/h程度と高効率であること,プラズマを発生させて原料を投入する一貫プロセスであるため連続駆動が可能であることが長所として挙げられる.Siナノ粒子料は,目標粒径に調整し生成させ,直ちに異なる酸化雰囲気内にて冷却することで,酸化状態の異なると期待するナノ粒子を作製した。特に,酸化抑制を意図した徐酸化処理を検討した。

結果と考察 / Results and Discussion

Fig. 1に,酸化度および粒径の異なる2つのSiナノ粒子に対しSi2p光電子スペクトルを測定した結果,およびビーク分離を行なった結果を示す。これらはスパッタリング処理なしの測定結果である。Fig.1(a) の比較的粒径が小さく,酸化度の多いSiナノ粒子では,表面近傍のSi-OボンドはSi4+ボンドの割合が多い結果が示された。一方,(b) の比較的粒径が小さく,酸化度の少ない徐酸化処理を施したSiナノ粒子では,(a) と比較し酸化Si側のピークが低エネルギー側にシフトしていることが確認され,Si4+ボンド割合が多く,Si3+ボンド割合が多い結果が示された。以上の結果より,同程度のサイズのナノ粒子であっても,徐酸化処理を施すことにより含有酸素量が低減した試料においては,その表面酸化状態は4+の酸化状態で酸化膜厚が薄い構造ではなく,3+以下のサブオキサイドの生成が優先的に生じて(4+までのSi-O結合は進行せず),酸化量が低減される特徴が判明した。 Fig. 2にはSnを第2元素として担持させたSiナノ粒子のXPS結果を示す。特に,エッチングと試料乾燥がXPSのSn結合状態に及ぼす影響を示している。試料はPS-PVDにより作製したSn担持Si粒子であり,(a), (b) は作製まま,(c), (d) は電池作製時の1時間110℃の乾燥を行った試料である。また,エッチング回数は(a), (c) が0回,(b), (d) が1回である。Fig. 2より乾燥およびエッチング有無に関わらず,Sn4+の面積比は最も高くなっている。PS-PVDにより作製されたSnの特徴として,Snは容易に酸化しSnO2として存在する事が確認される。また,電極乾燥によりSn0+の面積比は減少しSn2+, Sn4+の面積比が増加する様子も確認される。従って,電池作製時の乾燥もSnの酸化進行を促すプロセスである可能性が認められた。一方,若干ながらエッチングによりSn4+の面積比は減少しSn0+, Sn2+の面積比が増加している。明らかにスパッタによりSn表面の酸化膜が除去された影響と考えられることから,Sn担持ナノ粒子は,ナノ粒子生成時の酸化では無く,ナノ粒子生成後の冷却過程において酸化されること,室温に置いても,電池化までの処理の雰囲気により酸化進行しうることが判明した。一方,エリンガム図ではSnよりもSiの方が熱力学的には酸化進行しやすい状態にある。従って,Snが4+まで酸化進行している結果は,Siよりも小さいSn粒径に関連し,ナノ粒子化に伴う酸化初期の酸化進行が顕著に表れる特徴の結果であると考えられた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 XPS spectra of Si2p for Si nanoparticle (a) normal, (b) retarded oxidation



Fig. 2 Effect of etching and sample drying on Sn in Si:Sn nanoparticles


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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