利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1031

利用課題名 / Title

ポリオキソメタレートの酸化還元反応メカニズムの定量的解析

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

ポリオキソメタレート, 電気化学, 酸化還元反応メカニズム


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

上田  忠治

所属名 / Affiliation

高知大学教育研究部総合科学系複合領域科学部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

伊木 志成子,藤原 基靖,長尾 春代

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-233:高磁場NMR(600MHz溶液)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ポリオキソメタレート(POM)の酸化還元反応メカニズムを定量的な解析を通じて,POMの酸化還元特性を利用した応用研究を論理的かつ戦略的に遂行できるようにするのが最終目的である。そのため,ESRやNMR等による分光学的手法と様々な電気化学的手法を駆使してPOMの酸化還元挙動を解析して,種々の電気化学的パラメータや共存分子との会合定数を算出する。

実験 / Experimental

支持電解質として0.1 M n-Bu4NPF6を含むアセトニトリル中における[VVM11O40]4-(M=Mo, W (VVM11))と[VM12O40]3- (VM12)の電気化学的酸化還元挙動を調べるためにサイクリックボルタモグラム(CV)を測定した。さらに,様々な酸濃度におけるCVの変化を調べ,CVのシミュレーションによって,POMの酸会合定数を算出した。それぞれのPOMの51V NMRスペクトル(分子研設備)と還元体のESRスペクトル(分子研設備)を測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

VVM11とVM12のCVを測定した結果を図1に示す。VVM11の1電子還元体(CVの第1還元波に対応)のESRスペクトルを測ったところ,VVM11の骨格部分に導入されたバナジウムが+Vから+IVへ還元されていることが分かった。一方,VMo12の1電子還元体のESRスペクトルから,骨格部分のMoが+VIから+Vへ還元されていることが分かった。しかし,VW12の1電子還元体のESRスペクトルについては,ESRシグナルが,30 K以下にならないと現れなかった(図2)。これは,中心のVに入った電子が,30 Kよりも高い温度ではランダムな方向に振動している結果によって得られる平均的なシグナルとして実質シグナルが現れない。しかし,30 K以下にすると,その運動が1方向に収束するため,シグナルが現れる。さらに,VVM11の2電子還元体(CVの第2還元波に対応)のESRスペクトルを測ったところ,VVMo11の場合は,2電子目は骨格部分のMoに導入され,Moが+VIから+Vへ還元されていることが分かった。一方,VVW11の場合は,2電子目は中心部分のVに導入され,Vが+Vから+IVへ還元されていることが分かった。さらに,様々な濃度の酸を含むアセトニトリル中におけるVVM11のVが+Vから+IVに関する部分だけのCVを測定し,VVW11とH+との会合定数を,CVのシミュレーションから算出することを試みた。また,酸を添加した溶液の51V NMRスペクトルも測定したところ,H+は骨格部分のバナジウムと相互作用していることがわかり,しかも複数のシグナルあるいはシグナルがブロード化していることから,H+と会合した種が複数種類存在していることを示す結果が得られた。このNMRの結果と様々な電気化学的な測定結果をもとに,Scheme 1に表したような反応機構でVVM11がH+との会合反応とともに酸化還元していると仮定して,CVのシミュレーションを行ったところ,図3に示すように,測定した酸濃度範囲では,シミュレーションから得られたCVと実験的に得られたCVとが完全に一致した。つまり,Scheme1 に示した反応機構が正しいことが証明されこのシミュレーションからとVVM11がH+との会合定数がTable 1のように得られた(図3,Scheme 1, Table 1はVVMo11に関してだけ示した)。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 A) VVMo11, B) VVW11, C)VMo12, D) VW12のCV



図2 VW12の1電子還元体のESRスペクトル



Scheme 1 酸性溶液中におけるVVMo11の酸化還元反応機構



Table1 VVMo11とH+との会合定数および不均化反応定数



図3VVMo11のCVの実測値(-)とシミュレーション(〇)との比較


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 1. 東慎也,山崎直輝,小河脩平,Guo Si-Xuan,Zhang Jie,Boas John,Bond Alan,上田忠治,“バナジウム導入ポリオキソメタレートの電気化学的酸化還元挙動”第82回分析化学討論会,令和4年5月14,15日
  2. 2. 山崎直輝,東慎也,小河脩平,上田 忠治,“遷移金属導入ポリオキソメタレートの電気化学的酸化還元に及ぼす有機分子の効果”日本分析化学会第71年会,令和4年9月22-24日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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