【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1029
利用課題名 / Title
有機分子の自己組織化に基づく新規有機・無機ハイブリッドナノ構造の構築3
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
量子ドット、ペロブスカイト、ナノ材料
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
増尾 貞弘
所属名 / Affiliation
関西学院大学生命環境学部環境応用化学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
山内 光陽,久保 直輝
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
サイズが10 nm程度までの半導体ナノ結晶(CsPbBr3やCdSe)は「量子ドット」と呼ばれ、 単独で卓越した発光特性や光耐久性を示すなど、機能性ナノ材料として魅力的な物質である。さらに、複数の量子ドットが集まると、量子ドット間の相互作用が働くようになり、単独の量子ドットでは示さない新たな光物性が発現する。この優れた特性を利用することにより、既存のデバイス性能を超えた発光ダイオードや太陽電池等の発光・光電子デバイスの創出が期待されている。しかしながら、このような量子ドット間の相互作用に由来する物性は、量子ドットの分散溶液を基板上で自然乾燥させて得られた最密充填構造(超格子)においてのみ観測されている。そのため、超格子のような特異な構造以外においては、「量子ドット配列構造」と「光物性」の相関関係は明らかになっていない。量子ドット配列構造由来の光物性を明らかにするためには、配列を構築・制御する必要がある。しかしながら、量子ドットは、溶液中で高い分散性を示すため、量子ドット間の相互作用のみでは配列構造は形成し難い。これを克服するために、報告者らは最近、有機分子の自発的に集まる性質(自己集合)を量子ドットに組み込むことで、 溶液中で量子ドットを配列させることに成功してきた。このアプローチを基盤にすることで、様々な量子ドット配列構造を構築することができれば、配列構造由来の新たな光物性の解明に繋がることが期待される。そこで本研究では、有機分子の自己集合を駆使することで、量子ドットの配列構造を自在に、そして精密に制御することを目的とした。配列制御に関する本手法が確立すれば、他の金属ナノ粒子、有機ナノ結晶、ポリマー粒子の緻密な配列制御の指針になり、当該量子ドット領域のみならず分子科学領域全体に多大な波及効果をもたらすことが期待できる。
実験 / Experimental
本研究では、「量子ドットの1次元配列構造」、および「量子ドット-有機分子交互配列構造」の構築に取り組んだ。量子ドットとして、球状のCdSe量子ドット、およびキューブ状のCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶(PNC)を合成した。また、有機分子として、1次元ファイバー構造の形成が見込まれるコレステロール誘導体(Chol)、および3次元的な集合構造の形成が見込まれるペリレンビスイミド誘導体(PBI)を合成した。有機分子集合体は、低極性溶媒を用いた再沈法により形成させた。得られた有機分子集合体と量子ドットを混合することで、両者の共集合体溶液を作製した。これらの量子ドット、有機分子集合体、共集合体のサイズや形状・構造を、電界放出形透過型電子顕微鏡(TEM: JEOL JEM-2100F)を用いて、200kVの加速電圧で測定することにより評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
・量子ドットの1次元配列構造の構築
TEM観察より、Cholは、ナノファイバーを形成することが確認された。このChol集合体のナノファイバーとCdSe量子ドットを共集合させると、Chol集合体に沿って球状のCdSe量子ドットが並んだ像が観測され、目的とした量子ドット1次元配列構造が構築されたことが明らかとなった。さらに、キューブ状のPNCとの共集合体においても、1次元配列構造を観測することができた。以上の結果から、有機分子集合体を用いた量子ドットの配列手法は、様々なサイズ・形状の量子ドットに適応可能であることが明らかになった。
・量子ドット-有機分子交互配列構造の構築
TEM観察より、低極性溶媒中でPBI集合体の構造(サイズ)が時間変化することを見出し、同一分子から様々な構造の集合体を得ることに成功した。さらに、各時間におけるPBI集合体に対してPNCを混合したところ、それぞれ異なる共集合構造となることが明らかとなった。なお、ナノサイズのPBI集合体を用いた際に、目的とした量子ドット-有機分子交互配列構造を得ることに成功した。これらの結果は、有機分子集合体の構造を精密に制御することで、目的とした配列構造を意図して作り分けることが可能であることを示唆している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献
1.Colloidal Quantum Dot Arrangement Assisted by Perylene Bisimide Self-Assembly M. Yamauchi, S. Masuo, Chem. Eur. J., vol.25, pp.167-172 (2019).
2.Self‐assembly of Semiconductor Quantum Dots via Organic Templates M. Yamauchi, S. Masuo, Chem. Eur. J., vol.26, pp.7176-7184 (2020).
3.Highly Ordered Quantum Dot Supramolecular Assembly Exhibiting Photoinduced Emission Enhancement M. Yamauchi, S. Yamamoto, S. Masuo, Angew. Chem. Int. Ed., vol. 60, pp.6473-6479 (2021).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yoshua Albert Darmawan, In Situ Observation of Emission Sites during the Halide Exchange Reaction in Single Cesium Lead Halide Perovskite Nanocrystals, The Journal of Physical Chemistry C, 126, 2627-2633(2022).
DOI: 10.1021/acs.jpcc.1c09108
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Hina Igarashi, Correlation between Single-Photon Emission and Size of Cesium Lead Bromide Perovskite Nanocrystals, The Journal of Physical Chemistry Letters, 14, 2441-2447(2023).
DOI: 10.1021/acs.jpclett.3c00059
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1. 第71回高分子討論会(2022年9月5-7日、北海道大学札幌キャンパス) 「ペロブスカイトナノ結晶の発光挙動評価 –単一光子発光のサイズ依存性–」増尾貞弘(依頼講演)
- 2. 第71回高分子討論会(2022年9月5-7日、北海道大学札幌キャンパス) 「超分子鋳型を鍵とした量子ドット配列構造の構築」山内光陽、中務加奈子、増尾貞弘
- 3. 第71回高分子討論会(2022年9月5-7日、北海道大学札幌キャンパス) 「ペリレンビスイミド誘導体–ペロブスカイトナノ結晶共集合構造の構築と制御」久保直輝、山内光陽、増尾貞弘
- 4. 第71回高分子討論会(2022年9月5-7日、北海道大学札幌キャンパス) 「ペリレンビスイミドをアクセプターとしたCdSe量子ドットのエネルギー移動」吉岡美結、山内光陽、増尾貞弘
- 5. 2022年光化学討論会(2022年9月13-15日、京都大学桂キャンパス) 「電子的に偏ったアゾベンゼンの集合状態における特異な発光挙動」山内光陽、町田恵利子、増尾貞弘
- 6. 2022年光化学討論会(2022年9月13-15日、京都大学桂キャンパス) 「ペリレンビスイミド集合体を駆使したペロブスカイトナノ結晶の配列制御」久保直輝、山内光陽、増尾貞弘
- 7. 第83回応用物理学会秋季学術講演会(2022年9月20-23日、東北大学川内キャンパス) 「ペロブスカイトナノ結晶のサイズと単一光子発生挙動の相関」増尾貞弘(招待講演)
- 8. 日本化学会第103春季年会(2023年3月22−25日、東京理科大学野田キャンパス) 「ペロブスカイトナノ結晶表面におけるペリレンビスイミド誘導体の吸着挙動の解明」久保直輝、山内光陽、増尾貞弘
- 9. 日本化学会第103春季年会(2023年3月22−25日、東京理科大学野田キャンパス) 「FAPbBr3ペロブスカイトナノ結晶−有機色素系における多励起子エネルギー移動の評価」福増知也、久保直輝、増尾貞弘
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件