【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.15】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1025
利用課題名 / Title
半導体量子ドット三次元超格子の構築と構造・電子状態解析
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
半導体ナノ粒子,量子ドット,超格子,発光,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,ナノ粒子
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
濱中 泰
所属名 / Affiliation
名古屋工業大学大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
尾崎 晴香,鈴木 孝一朗,樋口 翔,瀬戸 貴大
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
上田 正,藤原 基康
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-210:オペランド多目的X線回析
MS-227:蛍光分光
MS-228:紫外・可視・近赤外分光光度計
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ナノサイズの半導体微粒子であるコロイド量子ドットを使った高効率な太陽電池やLEDなどの電子・光デバイスが提唱されている。このようなデバイスでは、多数の量子ドットが薄膜状に堆積した構造が使われるため、ドット間の励起電子移動・励起エネルギー移動といった現象が発現するが、高密度な量子ドット集団の物性には、未知な点が多い。また、量子ドットが三次元周期的に秩序をもって集積された量子ドット超格子では、量子共鳴や超蛍光といった興味深い電子・光物性が発現すると考えられている。このような量子ドット集団の創り出す新奇な光物性の解明を最終的な目標とし、本研究では、量子ドットの集積膜の構造と基礎光学特性の評価を実施した。
実験 / Experimental
粒径1.8 nm、2.4 nm、3.4 nmのCuInS2コロイド量子ドットを昇温法により合成した[1]。粒径3.1 nmのCdSeコロイド量子ドットをホットインジェクション法で合成した。それぞれの量子ドットの表面には、ドデカンチオールまたはヘキサデシルアミン配位子が結合している。量子ドットの合成と粒径・結晶構造の評価は所属大学でおこなった。また、これらの量子ドットの集積膜を自研究室でディップコート法によって作製した。それぞれの集積膜内部の量子ドットの配列構造を、分子研機器センターのオペランドX線回折装置を使い微小角入射小角X線散乱法(GISAXS)によって調べた。また、量子ドットおよび集積膜の吸収スペクトル(UV/Vis/NIR)と発光・発光励起スペクトル(PL/PLE)を、分子研機器センターにて測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1にCuInS2量子ドット集積膜のGISAXSパターンを示す。回折リングが観察され、量子ドットのサイズが小さいほど回折リングの半径は大きい。このデータより、FCC構造の格子点に各量子ドットが配置した最密充填構造をとっていると推定された。最近接ドットの表面間距離は1.3~1.7 nmであり、これはドデカンチオール配位子の分子鎖長に近い。回折パターンは等方的なので、FCC構造の微小な超格子ドメインが、ランダムに配向した構造と考えられる。図2はCdSe量子ドット集積膜のGISAXSパターンである。回折パターンはリング様であるが、特定の角度においてスポット的に強くなっている。これは、超格子ドメインの配向がランダムなのではなく、特定の方向に揃っていることを示している。最近接ドットの表面間距離は約2.2 nmと見積もられた。これはドデシルアミン配位子の分子鎖長に近い。したがって、どの量子ドット集積膜においても、量子ドットは配位子をスペーサとして最密に充填されていることがわかった。ディップコートにより、単一ドメインのサイズは数10 nm以下と小さいが、超格子を作製することができた。 量子ドットのPL/PLEスペクトルの測定結果には、集積膜と溶媒分散状態で異なる特徴がみられた。CuInS2量子ドットでは、集積されたドット間の励起エネルギー移動と励起キャリア移動を示す結果が得られた。一方、CdSe量子ドットでは、集積膜においてドット間で波動関数が共鳴結合した量子状態(ミニバンド)の形成を示唆する結果が得られた。今後は、より大きい超格子ドメインで研究を進めるため、構造制御を改善するとともに、時間分解発光分光法により励起状態の解析を実施する予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 CuInS2量子ドット集積膜のGISAXSパターン(粒径は左から順に3.4、2.4、1.8 nm)
図2 CdSe量子ドット集積膜のGISAXSパターン
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献 [1] T. Kuzuya et al., J. Colloid Interface Sci. 388, 137 (2012).・共同研究者:葛谷俊博博士(室蘭工業大学)、武田圭生博士(室蘭工業大学)・科研費 基盤研究(C) ・謝辞:オペランド多目的X線回折装置および蛍光分光と紫外可視近赤外分光光度計の利用にあたり、サポート頂いた藤原基康様と上田正様に感謝申し上げます。CdSe量子ドット合成をご指導下さった渡邊厚介博士(九州工業大学)に深く感謝申し上げます。・受賞 件名:名古屋工業大学大学基金学生研究奨励、氏名:鈴木孝一朗、所属機関名:名古屋工業大学大学院、受賞年月2023年3月、授賞理由:上記論文・プロシーディングなど1)および、口頭発表など3)の実績、備考:国内
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Koichiro Suzuki, Luminescence Enhancement in CuInS2 Nanoparticles through the Selective Passivation of Nonradiative Recombination Sites by Phosphine Ligands, The Journal of Physical Chemistry C, 126, 16751-16758(2022).
DOI: 10.1021/acs.jpcc.2c05187
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Rin Yokoi, Size-dependent radiative recombination characteristics of isolated CuInS2 nanocrystals, Journal of Luminescence, 252, 119353(2022).
DOI: 10.1016/j.jlumin.2022.119353
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1.瀬戸 貴大、中 智也、鈴木 孝一朗、濱中 泰、葛谷 俊博、“配位子を使ったAgInS₂ナノ粒子の表面改質と発光機構の転換”、第83回応用物理学会秋季学術講演会、2022年9月21日
- 2.増田 拓真, 濱中 泰,葛谷 俊博,武田 圭生,“自己組織化法によるCsPbI3ナノ結晶超格子の作製Ⅱ”,第83回応用物理学会秋季学術講演会、2022年9月21日
- 3.Koichiro Suzuki, Takahiro Seto, Tomoya Naka, Yasushi Hamanaka, Toshihiro Kuzuya,” Passivation of Surface Defects on Colloidal CuInS2 Nanoparticles via Post-Synthetic Ligand Exchange”, 11th International Conference on Fine Particle Magnetism,2022年10月18日
- 4.瀬戸 貴大、中 智也、鈴木 孝一朗、濱中 泰、葛谷 俊博、“配位子を使ったAgInS₂ナノ粒子の表面改質と発光機構の転換Ⅱ”、2023年第70回応用物理学会春季学術講演会、2023年3月17日
- 5.増田 拓真、濱中 泰、葛谷 俊博、武田 圭生、近藤 政晴、出羽 毅久、“CsPbI3量子ドット超格子の発光特性”、2023年第70回応用物理学会春季学術講演会、2023年3月17日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件