利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0120

利用課題名 / Title

トポロジカル絶縁体や2次元物質のXPS測定

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

電子分光/ Electron spectroscopy,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter,原子薄膜/ Atomic thin film,スピン制御/ Spin control,スピントロニクス/ Spintronics,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,原子層薄膜/ Atomic layer thin film


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

秋山 了太

所属名 / Affiliation

東京大学 大学院理学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

谷内息吹,清水翔太

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

沖津康平

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-308:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)with AES


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究では、トポロジカル絶縁体や表面状態を持つ薄膜のような2次元性の高い物質における、組成比の同定や価数の推定など元素の分析を行うことを目的とした。大きく分けて2つの物質系を取り扱った。一つは、BiにSbをドープしていき混晶とすることでBi1-xSbx(以下BS)としてあるxの範囲ではトポロジカル絶縁体となる。このときのSb濃度を補正したい。2つ目の物質系としてはFe(Se,Te)(以下FST)というトポロジカル超伝導体におけるSeとTeの元素組成比を知りたい。これは、FSTがSeとTeの比率次第でトポロジカル相転移を生じるからである。Teが0.3-0.9程度ではnon-trivialとなり、その両端の組成比ではtrivialとなる。したがって、作製した薄膜の組成比を知ることは極めて重要である。

実験 / Experimental

BSやFSTにおいて、異なる組成比を持つように狙ってMBE法により単結晶薄膜を作製する。そしてそれらに対してXPS測定を行い、光電子運動エネルギーのスペクトルから遷移軌道とその強度を元素ごとに観測し、元素組成比を見積もる。組成比はなるべく系統的に振り、作製条件と組成比の関係をシステマティックに知る。

結果と考察 / Results and Discussion

まず、BS薄膜についてXPSを行った。結果、図1のようにBiは160eV付近に4fピークが見られたが、Sbは3d 2/5がメインピークであるが、Oの1s軌道のピークとかぶるため解析が難しい。よって、3d 2/3ピークを解析して、これを3/2倍することでSb 3d5/2の面積強度とすることにした。3d 2/3ピークは図2のようになっており、これからSb濃度を算出すると2-19%の振れ幅でおおよそ狙い通りに系統的にドープされていることが分かり、良質なBS薄膜ができていることが確証できた。次にFSTについて測定を行った。SeとTeの比率を確かめるにはSe 3dとTe 3d 2/5ピークを比較すれば良い。図3のように測定結果が得られ、面積強度比からSe:Te=0.56:0.44であることが分かった。この組成比ではnon-trivialなトポロジカル超伝導体となっていることが期待されることが分かった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1:Bi1-xSbxにおけるXPSのスペクトル。BiとSbのピークが見られる。



図2:Sb濃度を振った試料におけるSbの3d 2/3ピークの強度。これから見積もったSb濃度は2-19%に分布した。



図3:Fe(Se,Te)薄膜におけるXPSのスペクトル。Se 3dとTe 3d 2/5ピークが見られた。この面積強度比からSe:Te=0.56:0.44と見積もられた。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は一部科学研究費補助金基盤研究A(23H00265)、基盤研究B(23H01111, 20H02616)、および学術変革領域A(23H04098)の支援を受けて行われた。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Shota Shimizu, Effect on superconducting transition temperature of topological superconductor Fe(Se,Te) modified with light elements (Poster) MPI-UBC-UTokyo Workshop 2023、2023年12月 
  2. 清水翔太, 秋山了太, 保原麗, 長谷川修司, 軽元素修飾したトポロジカル超伝導体Fe(Se,Te)の超伝導転移温度への影響, 日本物理学会第78回年次大会、2023年9月
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る