【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1021
利用課題名 / Title
光エネルギー変換物質の励起状態の研究
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子スピン共鳴, 励起状態, 有機EL
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松岡 秀人
所属名 / Affiliation
大阪公立大学大学院理学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-214:電子スピン共鳴(E680)
MS-227:蛍光分光
MS-231:ピコ秒レーザー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
光エネルギー変換デバイスとして有機ELや有機薄膜太陽電池など有機半導体を用いた物質開発が世界的に行われている。特に、パイ共役系有機分子の三重項状態を活用することで、より効率の良いデバイス製作が可能となることが期待されているが、まだ有効な分子設計指針は確立されていない。本研究では、時間分解電子スピン共鳴(ESR)測定ならびに発光測定を行い、励起状態のダイナミクスを明らかにすることで、申請者らが開発してきた室温メタルフリーりん光性有機EL発光材料を中心とした有機デバイスの効率向上を目指す。
実験 / Experimental
非金属ヘテロ原子を様々な結合様式で配置したパイ共役系分子群に対し、ピコ秒レーザー、蛍光光度計、ならびにBruker社製E680 ESR装置を用いた実験を行った。具体的には、任意波形発生器(AWG)を用いることで広帯域の反転パルス(180度パルス)を生成して、高感度ESR測定を行った。また、YAG-OPOレーザーを併用し、有機EL発光体や無機半導体材料内で起こる光応答スピンダイナミクスを分子レベルで追跡した。また、ピコ秒レーザーを用いた短寿命の発光測定、ならびに蛍光光度計を用いた定常状態の発光測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
置換基の導入で吸収や発光特性を変化させることができ有機ELの発光中心として注目されるナフタレンジイミド誘導体を中心としたパイ共役系分子を対象に、それらの光励起状態のスピンダイナミクスを研究した。具体的にはまず、吸収・発光スペクトル測定によって、ほとんどの溶媒中で芳香族系溶媒との錯形成あるいは対象分子同士のaggregationが生じ、モノマー発光に比べて長波長側にシフトしたブロード(バンドレス)な発光を観測した。一方で、2-メチルTHFを溶媒として用いたとき、振動構造を伴う吸収・蛍光スペクトルの鏡像関係を観測することができた。溶媒に依存しないナフタレンジイミド分子固有のスピンダイナミクスを明らかにするため、時間分解ESR測定を2-メチルTHF中で行った結果、励起一重項から励起三重項状態への項間交差を明らかにすることができ、過去報告されている項間交差の経路の帰属が誤っていることを実証し、さらに励起三重項状態にあるナフタレンジイミド誘導体の電子スピン構造を初めて明らかにすることができた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献 H. Matsuoka et al., J. Am. Chem. Soc.,
139 (2017) 12968.
・共同研究者:和歌山大学システム工学部
・機器センターの藤原基靖様、伊木志成子様、上田正様、浅田瑞枝様、中村敏和様の支援に感謝します。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1)松岡秀人,芝野祐樹,秋元郁子,神崎祐貴 “時間分解 EPR および量子化学計算によるナフタレンジイミドの光励起スピンダイナミクス研究” 第61回電子スピンサイエンス学会年会, 令和4年12月2日
- 2)秋元郁子, 北尾大和, 松岡秀人, 中暢子 “分子研パルスESR装置による静電場印加下での時間分解サイクロトロン共鳴測定” 第61回電子スピンサイエンス学会年会, 令和4年12月4日
- 3)秋元郁子,磯山一馬, 細川剛志, 松岡秀人 “HPHT-Ibダイヤモンド結晶における光刺激による局在状態間の電荷移動” 日本物理学会 2023年春季大会, 令和5年3月24日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件