【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT0050
利用課題名 / Title
不秩序系における熱輸送の理解へ向けた非晶質構造やナノ構造の評価
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
薄膜、デバイス・センサー関連材料,電子顕微鏡/ Electronic microscope,熱電材料/ Thermoelectric material,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,X線回折/ X-ray diffraction,電子分光/ Electron spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
鎮目 邦彦
所属名 / Affiliation
東京大学 大学院工学系研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
佐々木道子,永廣怜平
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
沖津康平,府川和弘,飯盛桂子,太田悦子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-202:高輝度In-plane型X線回折装置
UT-308:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)with AES
UT-855:高精細電子顕微鏡
UT-858:電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
機械的強度を有する無機系の緻密断熱材料は、熱が介在するセンサーの支持脚や熱遮蔽コーティングへ応用できることからニーズが高い。アモルファス材料は原子配列の不秩序さのために振動モードの散乱特性に優れ、低い熱伝導率が期待できる。本研究ではアモルファスSiを母相として同じくⅣ族元素であるGe及びSnを添加したSi-Ge-Sn系に着目した。種々組成のアモルファスSi-Ge-Sn系材料を作製し、熱伝導率を計側した。支援機関においては、Si-Ge-Sn系材料の組成分析(XPS, SEM-EDX)及び密度・構造解析(薄膜法X線回折)を実施した。
実験 / Experimental
ターゲット材としてSi, Ge, Sn の3つを用いた3元スパッタによって、各ターゲットへの印可電圧を変化することで組成が異なる12種のa-SiGeSn薄膜をSiウエハ基板上に作製した(共同研究先機関にて実施)。それらの熱伝導率はナノスケール熱計測手法であるサーモリフレクタンス法によって測定した(自機関にて実施)。サーモリフレクタンス法によって熱伝導率を導出するためには薄膜の膜厚と体積比熱を事前に知る必要があり、これらの評価を支援機関の装置を利用して実施した。高精細電子顕微鏡(UT-855)による断面観察によって膜厚を測定した。高輝度In-plane型X線回折装置 (UT-202)によってX線反射率測定(XRR)を実施して薄膜密度を測定し、斜入射X線回折(GIXRD)によって回折を取得した。電子顕微鏡(UT-858)に付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)によって薄膜/Siウエハ基板のEDSスペクトルを取得してファイローゼット法によって全体の平均的な組成を定量化した。また一部の薄膜については、多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS, UT-308)によって組成のプロファイルを取得した。
結果と考察 / Results and Discussion
それぞれ異なるターゲット印可電圧で作製した12種のアモルファスSi-Ge-Sn系薄膜(#1~#12)について、膜厚・密度・組成・体積比熱・熱伝導率を定量した結果をTable 1に示す。ここで体積比熱は、測定した密度と組成の値を用いてノイマン-コップの法則に基づいて導出した値である。組成定量の結果、成膜されたサンプルにはいずれも10 at%以上の酸素混入が確認され、実際にはSi-Ge-Sn-O四元系となっていることが確認された。熱伝導率のサンプル組成依存性を示す。Sn濃度が増大するにつれ熱伝導率は低減する傾向が見られており、低いものは0.2 W/mKに達した。サンプル#10については、Fig. 1に示す断面SEMに見られるように、薄膜表面や内部に径数十 nmの粒が確認された。Fig. 2に示すようにGIXRD測定をしたところβ-Snと一致するピークが得られたため、アモルファス薄膜の固溶限を超えたSnが析出してβ相として結晶化していることが確認された。また、Table 1から分かるようにSn 濃度が高いほど O濃度が高い傾向が見られた。これについては、XPSによって深さプロファイルを取得したところ、Snの化学状態としては、表面は酸化物としてSnOx 奥部は金属 Sn として存在している割合が多いことが分かった。これは、成膜後に薄膜中のSnが大気中のO2と反応して酸化することを示唆しており、成膜後のサンプルの取り扱いには注意が必要であることが分かった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Table. 1 アモルファスSi-Ge-Sn系薄膜の膜厚・密度・組成・体積比熱・熱伝導率の評価結果
Fig.1 アモルファスSi-Ge-Sn系薄膜の断面SEM像(例として#7, #10, #12). #10の薄膜表面と内部には径数十 nm 程度の粒が見られる.
Fig. 2 アモルファスSi-Ge-Sn系薄膜(#10, #12)のGIXRD測定結果. #10にはβ-Snのピークが見られる.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 鎮目邦彦, 佐々木道子, 後藤真宏, 塩見淳一郎, "Si-Ge-Sn-O 四元系アモルファス薄膜における低熱伝導率の発現" 第84回応用物理学会秋季学術講演会(熊本), 令和5年9月22日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件