【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1015
利用課題名 / Title
遷移金属で置換したゼオライト粒子の磁気特性の解明
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
ゼオライト, 遷移金属, イオン交換, 磁場配向
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松田 元秀
所属名 / Affiliation
熊本大学大学院先端科学研究部
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
志田賢二,宗亮介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
藤原基靖,宮島瑞樹,伊木志成子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-221:熱分析(示差走査型カロリメーター/溶液)
MS-216:電子スピン共鳴(E500)
MS-213:X線光電子分光
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本採択課題は高度なガス分離膜や高感度化学センサーへの応用を目的としたゼオライト配向膜の作製に関する研究である。我々の研究室では、結晶の磁気異方性という物理的性質を利用したゼオライトの磁場配向プロセスを開発している。通常、ゼオライトの磁性は極めて低い。これまでに希土類イオンをイオン交換により導入したL型ゼオライトについて磁気特性を調査したところ、磁気的相転移が観察されず、常磁性であることが明らかとなった。またその希土類を導入したゼオライトの懸濁液を磁場中でスリップキャストすることによって配向性を持つゼオライト膜を得ることに成功している(参考文献1)。本申請課題では、L型ゼオライトに対して導入元素として、より低コストで一般的に磁気特性の高いコバルトやマンガンといった遷移金属イオンに着目し、L型ゼオライトへの導入を試み磁気特性および磁場配向挙動を調査した。
実験 / Experimental
(自機関で実施の実験)遷移金属イオン交換L型ゼオライトは遷移金属イオン含有水溶液にL型ゼオライトを加え、室温で24時間撹拌することで作製した。遷移金属イオン交換L型ゼオライトの作製およびイオンクロマトグラフ、X線回折は当研究室にて実施した。得られた遷移金属置換L型ゼオライト粉末を用いて懸濁液を調製し、72時間静置することで凝集粒子を取り除いた。上澄み液を採取した後に、磁場中スリップキャストにより成形体を作製した。磁場印加は鉛直および水平方向で実施された。得られた試料の配向性はXRDを用いて評価した。 (支援機関で実施の実験) 作製した遷移金属イオン交換L型ゼオライトの磁気特性は、分子科学研究所機器センター超電導量子干渉計(SQUID:Quantum Design MPMS-XL7)を用いて評価した。またL型ゼオライト中の遷移金属の価数についてESRおよびXPSにて調査をおこなった。
結果と考察 / Results and Discussion
作製した遷移金属置換L型ゼオライトに対するイオンクロマトグラフより、イオン交換率は約20%であった。また粉末X線回折よりイオン交換後もL型ゼオライトの骨格構造を維持されていることを確認した。図1にSQUID分析より得られた遷移金属イオン(MnおよびCo)を導入したL型ゼオライト(Mn-L、Co-L)および無導入のL型ゼオライト(K-L)のM-H曲線を示す。この結果より無導入のL型ゼオライトは磁性を示さないが、Mn-LおよびCo-Lでは磁化している事が確認された。磁化の温度依存性で磁気的な相転移を示す変化が観察されなかったことから、常磁性体であることがわかった。磁化が確認されたMn-LおよびCo-Lの懸濁液を調製し、ネオジム磁石を用いた磁場中スリップキャストにより成形体を作製した。Mn-L試料は磁場を印加しても配向挙動を示さなかったが、磁場を印加しながら作製したCo-L試料ではX線回折の結果、00l回折ピークの強度が増加し、c軸配向性が観測された。この結果から、L型ゼオライトに対するMnとCoの導入で磁場配向挙動が大きく異なることがわかった。 今後は導入する遷移金属の種類やイオン交換率を検討し、その磁化率と磁場配向性の関係を明らかにしたいと考えている。ESRおよびXPSにてL型ゼオライト中の遷移金属イオンの価数の調査を行ったが含有する他元素との相互作用によりピーク分離や解析が困難でありこれまでのところ明確な結論を得られておらず、引き続き検討をおこなっている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 M-H curves of K-L and Tr-L with (〇)Mn and (▲)Co as magnetic transition-metal ions.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
(1) T. Tabata et al.,Dalton Transactions 51, (2022)9601-9605.
・謝辞
本申請課題における分析機器の利用に際しては、分子科学研究所機器センター 湊 丈俊主任研究員、藤原 基靖主任技術員、宮島 瑞樹技術員、伊木 志成子特任専門員のご支援を賜りました。深く感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1) 宗 亮佑,永井 杏奈,志田 賢二,鈴木 達,松田 元秀“低磁場配向性を示す遷移金属導入L型ゼオライト”第61回セラミックス基礎科学討論会,令和5年1月7日
- 2) 永井 杏奈,宗 亮佑,志田 賢二,鈴木 達,松田 元秀“3d遷移金属イオン導入L型ゼオライトの磁場配向性”日本セラミックス協会2023年年会,令和5年3月9日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件