【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.15】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1009
利用課題名 / Title
人工光合成をめざす半導体光触媒の水中ESR測定
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
人工光合成, 半導体光触媒, 反応中間体, 電子励起状態
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大西 洋
所属名 / Affiliation
神戸大学大学院理学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
付哲斌
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
水を電子源として用いる(=水を酸化して分子状酸素を生成する)ことができなければ人工光合成は実用的 な技術となりえない。水を還元して水素燃料を調達する、あるいはCO2を還元して炭素源として再利用する、いずれの場合も還元反応と当量の酸化反応が物質変換に必要であり、酸化反応に利用できる資源は水しかない。紫外光を使って純粋な水を4電子酸化する半導体光触媒を日本の研究者たちが次々に開発してきた。この成果をもとにして、太陽光励起を可能にする材料開発が現在世界中で進められている。しかし開発の指針となるべき金属酸化物半導体が水を酸化する界面反応の分子論的理解はいまだ十分でない。本研究ではESR分光を用いてチタン酸ストロンチウム光触媒を常温水中でオペランド計測し、水を酸化する反応の分子論的理解に資することを目的とした。
実験 / Experimental
アルミニウムカチオン(Al3+)をドーピングしたチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)光触媒と、ストロンチウムカチオン(Sr2+)をドーピングしたタンタル酸ナトリウム(NaTaO3)光触媒を神戸大学にて固相法を用いて合成した。これらの光触媒微粒子を窒素ガスでバブリングして溶存酸素を除き、さらにスピン捕捉剤(DMPO)を加えた水に懸濁して、分子科学研究所においてBruker EMX Plus分光器を用いて室温でXバンドのESRスペクトルを測定した。SrTiO3やNaTaO3は誘電率が大きい物質であるため、分光器キャビティ内でマイクロ波共振を起こすために、先端を円柱形でなく平型に加工して体積を減らしたESR試料管を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
SrTiO3光触媒をDMPO水溶液に懸濁して励起光(波長365 nmのLED光)を照射したところ、Al3+ドーピングの有無にかかわりなく、3490 Gを中心とする7本スプリット信号(スプリット間隔3.5 Gで強度比1:2:1:2:1:2:1)が現れた。この信号は、光触媒ESRの先行研究においてDMPOが多段階酸化された構造不明化合物(DMPO-X)として報告されている信号と同一であった。一方、NaTaO3光触媒に波長285 nmのLED光を照射すると、Sr2+ドーピングの有無にかかわりなく、3490 Gを中心とする4本スプリット信号(スプリット間隔15 Gで強度比1:2:2:1)が現れた。この信号はDMPOがOHラジカル一個をトラップしたDMPO-OHに帰属できる。SrTiO3とNaTaO3は共にペロブスカイト構造をとる光触媒材料であり、高い収率で水を全分解する機能を発揮する点でも類似しているにもかかわらず、SrTiO3懸濁液ではDMPO-Xが生じ、NaTaO3懸濁液ではDMPO-OHが現れた理由をこれから考察する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
科学研究費_基盤研究(A)人工光合成をめざす半導体光触媒:オペランド計測によるミリ秒反応化学の解明(22H00344)、ならびに国際共同研究加速基金_国際共同研究強化(B)人工光合成の学理:タンタル酸ナトリウム光触媒をプラットフォームとする多国間協働(18KK0161)の支援をうけて実施した。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 付哲斌, 平井琢也, 婦木正明, 小堀康博, 大西洋,“電子スピン共鳴法を用いたチタン酸ストロンチウム光触媒におけるキャリアの励起電子構造の解明”第16回分子科学討論会, 令和4年9月19日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件