利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NU0227

利用課題名 / Title

固体飛跡検出における低速イオン検出性能の評価と低速イオンにおけるエネルギー損失メカニズム研究

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

イオン注入, 高解像放射線計測デバイス


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

Naka Tatsuhiro

所属名 / Affiliation

東邦大学理学部物理学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

陳夏姫,井戸悠生

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-105:中電流イオン注入装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究は、宇宙における暗黒物質の方向感度探索実験のために開発された超高空間分解能固体飛跡検出器である超微粒子原子核乾板(Nano Imaging Tracker : NIT)の高度化研究を主目的にしている。暗黒物質の信号は低速イオンとみなすことができ、NIT含めた固体検出器中でのイオン注入装置によって発生させることができる低速イオンは、まさに疑似的な暗黒物質シグナルを再現することができ、既知の方向・エネルギーを持つことから本研究における検出器の性能評価にとって最適な装置である。特に、高度化したNITデバイスならびに光学読み取りシステムにおける検出性能ならびにそのメカニズムに関する研究を行うための評価基準として、イオン注入装置によって生成されたイオンの検出事象を活用する。

実験 / Experimental

本年度においては、光学顕微鏡システムの高速化に向けた光学系ならびに画像処理の高度化を進めることを重点的に行った。特に、本光学顕微鏡システムを用いて、イオン注入装置によって生成されたイオン飛跡の検出性能を定量的に評価した。特に、NITデバイスの飛跡検出閾値に近い30keVまでの炭素イオン事象の飛跡認識感度(方向測定精度)をできるだけ広い有効視野において保証するために、デコンボリューション法による像のゆがみの補正を実装することで、より広い視野面積対して角度測定精度を評価し、暗黒物質の方向検出に対する実用性の検討を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

光学顕微鏡システムは、従来機から光学系全体の再検討を行うことで、撮像可能面積を約4倍に拡大した。その上で、撮像視野内における光学系の収差による像のゆがみを補正するための手法開発を行い、デコンボリューション法による像ゆがみ補正を実装させた。ここで、像のゆがみ評価は、光学分解能よりも十分小さい60nmの銀ナノ粒子によるゆがみ変化を楕円率パラメータによって数値化を行っている。まず、図1に補正前と後における撮像視野内でのゆがみ分布を示した。上記補正を行うことで、ほぼ全視野にわたって十分な補正ができることを確認した。その上で、イオン注入装置によってNITデバイス内に記録された飛跡に対する角度精度を評価した。その結果を図2に示した。図2はC60および30keVのイオン入射角度に対して、本システムによって測定された角度を楕円率に対して示したもので、試料を回転させることで入射方向を光学軸に対して0, 45, 90, 135度に変化させた際の依存性を赤、青、緑、黒のそれぞれで評価している。ここから、C 60keVにおいては楕円率パラメータに対して補正前の1.5から1.3へ閾値の向上が確認され、角度測定精度が十分であることが評価された。また、C 30keVのイオンに対しては、楕円率パラメータに対して補正前の2.0から1.5へ閾値の向上が確認された。ただし、C30keVに対しては、精度のばらつきやその再現性や一様性について継続した改善と評価を進めている。本研究は、大目的である暗黒物質検出実験においては、10 GeV/c2の質量帯の暗黒物質に対する探索感度を有することを実証するものであり、世界で最も暗黒物質に対する高い方向感度を示すものである。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. デコンボリューション法による光学顕微鏡収差補正前後における銀ナノ粒子像を用いた歪み分布 (a) 補正前 (b) 補正後



図2. C 60および30keVにおける光学歪み補正前後における楕円率パラメータに対する角度精度。赤、青、緑、黒は、それぞれイオン入射方向が0, 45, 90, 135度に対応。(a) C 60 keV補正前、(b) C 60 keV 補正後、(c)C 30 keV 補正前、(d) C 30 keV 補正後


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Tatsuhiro NAKA、UGAP2024 workshop “Direction Sensitive Dark Matter Search with Nuclear Emulsion“、2024. 3.4-6 (presentation 3/5)、Tohoku University (invited)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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