利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23BA0024

利用課題名 / Title

金属ハライドペロブスカイト半導体の物性評価

利用した実施機関 / Support Institute

筑波大学 / Tsukuba Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

太陽電池/ Solar cell


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

松石 清人

所属名 / Affiliation

筑波大学数理物質系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

Shamim Ahmmed,坂本 真央紀,Md. Abdul Karim,圓道 多起,新鞍 健也

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

岡野 彩子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

BA-026:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)
BA-015:X線光電子分光装置
BA-020:顕微ラマン


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 非鉛系ペロブスカイト太陽電池材料の光・電子物性と構造物性の相関には不明な点が多く、変換効率向上と結晶安定化のためには基礎物性の解明が不可欠である。本研究では、顕微ラマン分光装置を使用して高圧力印加によるダブルペロブスカイト半導体の構造相転移及び局所構造の変化を調べた。また、Sn系ペロブスカイト太陽電池材料ではX線光電子分光装置を用いてSn2+からSn4+への酸化(価数の変化)やI2からI-への回復状態を調べた。さらに、Pb系ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層にCe添加SnO2を用い、SnO2中のCeイオンの結合状態やO空孔についてX線光電子分光装置を用いて調べた。

実験 / Experimental

1. 顕微ラマン分光実験(JASCO NRS-5100)
 Cs2AgBiX6(X=Br, Cl)単結晶に対して、ヘリウムを圧力媒体として大気圧から17 GPaまで加圧しながら測定を行い、その後再び大気圧まで減圧しながら測定を行った。
2. X線光電子分光実験(JOEL JPS-9010TR、ULVAC-PHI PHI VersaProbe 4)
 4-fluorophenylhydrazine hydrochloride (4F-PHCl)を添加したSn系ペロブスカイト半導体膜のSnとIの価数状態等を調べた。また、電子輸送層にCe添加SnO2を用いたPb系ペロブスカイト太陽電池においてCeの価数や結合状態、Ce添加によるO空孔の変化を調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

 加圧過程のCs2AgBiCl6単結晶のラマン散乱スペクトルの圧力変化(0.5~17 GPa)を図1に⽰す。3つのラマンピークをP1(T2g:4個のClのはさみ(変角)振動)、P2(Eg:4個のClの反対称伸縮振動)、P3(A1g:4個のClの対称伸縮振動)と表記した。4.4 GPaまでは観測された3つのピークP1, P2, P3は単調に高波数側へシフトしていき、4.7~5.1 GPa でP1とP2が分裂した。さらに、5.3 GPa以上でP3も分裂した。4.7 GPaでの分裂は空間群Fm-3m(Ⅰ相)からI4/m(Ⅱ相)への構造相転移、5.3 GPaでの分裂はI4/m(Ⅱ相)からFm-3(Ⅲ相)への構造相転移に起因することが高圧粉末X 線回折測定実験から明らかとなった。また、Ⅱ相で観測されたラマンピークの分裂を説明するためにはc 軸方向にAgCl6八面体が少なくとも3倍周期で回転しているI4/m(Z=6)を考える必要があることがわかった。Cs2AgBiBrCl6単結晶でも相転移を起こす圧力は異なるものの同様の構造相転移が起こっていることがわかった。
 Sn系ペロブスカイト半導体FASnI3(FA: NH2CHNH2)の前駆体溶液に多機能添加剤4-fluorophenylhydrazine hydrochloride (4F-PHCl) を導入してSn系ペロブスカイト太陽電池を作製した。その結果、4F-PHClのヒドラジン官能基(-NH-NH2)によって前駆体溶液中のSn4+およびI2がSn2+およびI-に回復し、結果としてFASnI3ペロブスカイト膜のカチオン性欠陥を不動態化することを明らかにした。また、4F-PHClを添加したペロブスカイト膜は、疎水性のフッ素化ベンゼン環の存在により、水分への安定性を向上させ、10%の4F-PHCl添加によって電力変換効率は6.2%から10.9%へ向上し、窒素グローブボックス内で80日間は初期の電力変換効率が92%以上で維持されることを確認した。
 電子輸送層にCe添加SnO2を用いたPb系ペロブスカイト太陽電池においてはCe添加によってO空孔が減少することがわかった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 Cs₂AgBiCl₆の高圧下Ramanスペクトル(加圧過程)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Md. Abdul Karim, Inhibition of Sn2+ Oxidation in FASnI3 Perovskite Precursor Solution and Enhanced Stability of Perovskite Solar Cells by Reductive Additive, ACS Applied Materials & Interfaces, 15, 45823-45833(2023).
    DOI: 10.1021/acsami.3c07903
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 坂本真央紀, 松石清人, 中野智志, 藤久裕司, “鉛フリーダブルペロブスカイト半導体Cs2AgBiX6 (X=Br,Cl)の圧力誘起構造相転移”, 第64回高圧討論会(柏市), 令和5年11月3日.
  2. Shamim Ahmmed, Yulu He, Kiyoto Matsuishi, Md. Emrul Kayesh, Ashraful Islam, “Rare earth cation doped SnO2 ETL for the reduction of energy level mismatch of the highly efficient perovskite solar cells”, Asia-Pacific International Conference on Perovskite, Organic Photovoltaics and Optoelectronics (IPEROP24), January 22, 2024, Tokyo.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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