【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM0097
利用課題名 / Title
固体表面に形成した微細気泡の液中測定
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
表面界面, 走査型プローブ顕微鏡, ナノバブル,バイオアダプティブ材料/ Bioadaptive materials
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山崎 憲慈
所属名 / Affiliation
北海道大学 大学院工学研究院応用物理学部門
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
服部晋也
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では、メタンハイドレート溶解水およびメタンハイドレート解離水に接触させた高配向性熱分解グラファイト(HOPG)表面をタッピングモードAFMとフォースタッピングモードAFMで観察し、HOPG表面に現れる構造物の性質を調べた。その結果、HOPG表面上に多数の構造物を確認することができた。さらに、setpointを変更して測定することによって、構造物には固体状のものと流体状のものが存在することが分かった。setpointを大きくした際、先行研究で表面ナノバブルだと報告されたものと比較すると特徴が一致した。したがって、本実験で観察された構造物の中で、先行研究で報告されている溶媒置換法で作製された表面ナノバブルと似た特徴を持つ構造物は表面ナノバブルである結論づけた。本実験により、bulk ウルトラファインバブル(UFB)から表面ナノバブルが形成されることが確かめられた。
実験 / Experimental
本研究では、HOPG(MikroMasch社)を基板として用いた。HOPG基板の背面に両面テープを貼り付けてスライドガラスに固定した。スライドガラスは事前にアセトンとエタノールで脂汚れを除去した。また、実験直前にテープによってHOPG表面を劈開させることで清浄な表面を露出させた。スライドガラスにHOPG基板を貼り付けた後、注射器およびパスツールピペットを用いてHOPG基板に液体を滴下した。本研究では、HOPG表面に液体を滴下してからAFMで観察されるまでの時間を接触時間と定義し、表面ナノバブルなどの吸着物の形成に時間依存性があるかどうかを調べた。上記の手順で作成したサンプルを液中原子間力顕微鏡(ブルカージャパン株式会社/NanoWizard 4 XP)で観察した。カンチレバーは、オリンパス製の液中用窒化シリコンカンチレバー(BL-AC40TS-C2)を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig. 1に代表的な(a)形状像(setpoint: 0.2 nN)示す。図の中央に、HOPG上に観測された半球状の物体が観測された。この半球状の物体は、相境界円直径が約70 nmで頂点の高さが約12nmであった。この試料上で複数個の半球状の構造物を観測することができ、直径は数十~数百nm、頂点の高さは10~数十nmの分布があった。観察時のsetpointを大きくしていくとFig. 1 (b)に示すように構造物の高さと幅はともに縮小した。setpointが1.5nNに到達するまでは構造物の高さと幅は徐々に小さくなり、setpointが2.0nNになると構造物は形状像で確認できなくなり、HOPG表面のみが現れた。setpointを2.5nNまで増加させた後、0.1nNに小さくすると0.2 nNで観察された形状に似た構造物が確認されたため、setpointを大きくしていくと探針が構造物を押しつぶした状態で形状像を得ているが、押しつぶされた構造物は弾性的に元のサイズ・形状に戻る性質があることがわかった。これは今回想定される観察対象では流体を観察した場合の特徴であることがいえる。また、adhesion像はsetpointによる変化は少なく、0.2nNで取得した形状像に映っている構造物に対応するように基板と異なる吸着力を示すコントラストが示された。これは、setpointを大きくした際に得られた形状像で構造物が確認できない理由が、構造物が視野から外れているのではなくて構造物が押しつぶされているためであることを裏付けている。先行研究によれば構造物の形状がsetpointに依存して変わっていくということは構造物流体であるということを示している。本研究でHOPG表面に表れることが想定される流体はコンタミネーション由来のナノ液滴かバルクナノバブルから生成した表面ナノバブルであるが、Anらによると、setpointを大きくしていくとナノバブルは底面の半径と高さが小さくなり、 5.0 nNで完全に消滅した。一方、ナノ液滴もsetpointの増加とともに底面の半径と高さが小さくなったが、完全に消滅することはなく平坦な分子層の上に球状のキャップが乗ったソンブレロのようになった [1]。このことを踏まえると、本実験で完全に消滅したように見えた構造物はナノ液滴ではなく表面ナノバブルだと考えられ、バルクのナノバブルから溶媒置換法で生成したものと似たような性質の表面ナノバブルが生成されたことが示唆される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig, 1 (a) ハイドレート解離水中で観察したHOPG表面の形状像
Fig. 1 (b) (a)の構造物を異なるsetpointで連続取得した形状像、Adhesion像、立体像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1]H. An, B. H. Tan , C. D. Ohl, “Distinguishing nanobubbles from nanodroplets with AFM: the influence of vertical and lateral imaging forces,” Langmuir 32.48 (2016): 12710-12715.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件