利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NM0046

利用課題名 / Title

固体NMRから観察するシリケート鉱物の構造と特性

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

複合材料/ Compound materials,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,資源循環技術/ Resource circulation technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

大窪 貴洋

所属名 / Affiliation

千葉大学 大学院工学研究院

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大木忍,出口健三

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-102:500MHz固体高分解能NMRシステム
NM-103:800MHzナローボア固体高分解能NMRシステム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

地球温暖化の抑制のため、脱二酸化炭素社会をめざし大気中のCO2濃度を減少させることが注目されている。その中で二酸化炭素を固定化することが明らかになっているコンクリートは現代の建築物に広く使用されており、コンクリート中に固定化されている二酸化炭素量を定量することは二酸化炭素量減少のために非常に大切である。コンクリート中で固定化するメカニズムとしてセメントペースト中に含まれるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)と呼ばれるSiO4四面体がチェーンのように連なるSi chainとCaOがシート状の構造をとるCa layerからなる層状化合物が炭酸化によってCaCO3とamorphous Siに変化することで起こる炭酸カルシウム生成が大きな要因の一つである。しかし現在C-S-Hの炭酸化メカニズムは不明なことが多い。
理由として2つ大きくあり、1つはC-S-Hが様々なパラメーターによって形状を大きく変えることで炭酸化の挙動が大きく変化すること。もう1つがセメント中に含まれる多様な鉱物が大きく影響するためである。そのため本研究では含水率をパラメーターとし、単層C-S-Hの炭酸化によって得られる炭酸カルシウムの生成メカニズムと含水率の関係を解明することを目的とした。

実験 / Experimental

純粋な系での炭酸化試験のために単層C-S-Hの合成をまず行った。炭酸カルシウムを900℃で12h脱炭酸し、得られた酸化カルシウムとシリカゲルをN2雰囲気下のグローブボックス内でCa/Si=0.8,1.0,1.2,1.4となるように秤量し超純水を固液比60g/gとなるように加えて28日間攪拌した。その後溶液を濾過して固相をデシケーターに移して真空乾燥を行った。乾燥した試料はArガス雰囲気下のグローブボックス内で保管した。
合成C-S-Hの炭酸化は飽和塩溶液を用いて相対湿度(Rh)を調湿したボトル内に24時間試料を静置して事前調湿を行った後、CO2ガス(>99.9%)を24時間流すことで行った。飽和塩は3種類High(K¬2SO4),Middle(KI),Low(K¬2CO3)を用いて行った。

結果と考察 / Results and Discussion

炭酸化試験後のC-S-Hサンプルの29Si MAS NMRスペクトルは、デコンボリューションされたピークと共に図に示す。炭酸化されたサンプルでは、初期状態からの劇的なスペクトル変化が見られた。29Si MAS NMRスペクトルは、Q2p、Q2b、およびQ1の種を仮定するために、-70から-90 ppmで観測された。これらは鎖構造に帰属される。 Q2p、Q2bおよびQ1のパラメーターの制約は、29Si MAS NMRスペクトルの解析と等しい。-90から-120ppmの範囲で観測されたピークは、重合したQ3およびQ4のSi種に対応した。29Si MAS NMR実験で検出されたSiブリッジング構造は、ATR-FTIR結果と一致したが、Si種のより定量的な評価が29SiMASNMRスペクトルから可能である。デコンボリューションから導出されたQn種の分布は、元のC-S-Hと鎖長(CL)の結果とともに、決定した。炭酸化によって、炭酸カルシウムを除くとCLが増加し、鎖状構造が残存していることを示した。
同じCa/Si比のC-S-Hで比較すると、Q2およびQ1からQ3およびQ4への変換度は、RHが高くなるにつれてより顕著となった。C-S-H中に含まれる水の量が多い場合、溶解した炭酸イオンとカルシウムイオンは、より大きな孔に自由に移動して反応することができる。同時に、水分含有量が高い場合の鎖の動的特性は、低い水条件よりも柔軟性が高くなる。これらの予想される要因が炭酸塩の形成を促進したと考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


異なるRH条件下で炭酸化したさまざまなCa/Si比を持つCSHの29Si NMRスペクトル。左パネルから、中間、高いRHの結果が順に表示。各パネルでの未処理および炭酸化試料の29Si MAS NMRスペクトルは、比較のために示している。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る