【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM0020
利用課題名 / Title
超伝導量子計算素子の作製プロセス
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
超伝導量子ビット,超伝導共振器,光露光(マスクレス、直接描画),プラズマエッチング,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,光リソグラフィ/ Photolithgraphy,超伝導/ Superconductivity
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐藤 哲朗
所属名 / Affiliation
日本電気株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
野口将高
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
簑原郁乃,吉田美沙
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-614:CCP-RIE装置 [RIE-200NL]
NM-617:ICP-RIE装置 [RV-APS-SE]
NM-660:マスクレス露光装置 [MLA150]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
我々はムーショット型研究開発事業における超伝導量子回路の集積化の一環として、超伝導量子ビットコヒーレンスの改善を目的とした新材料による共振器作製プロセスを検討している。従来、共振器内の超伝導材料として適用してきたニオブ(Nb)は大気中の酸素との結合により最表層に酸化層を形成してしまう。この酸化層による損失が大きいため安定して高いQ値を得ることが困難な状況にある。今回、Nbに代わる新材料として損失の大きい表面酸化層が成長しにくい窒化チタン(TiN)を用いた窒化物共振器作製プロセスを検討して、大きな損失源となる表面酸化層の影響を受けにくいデバイスを作製することにより、大気中で安定して高いQ値を示す共振器の実現を目指す。本報告はまずマスクレス露光装置を用いたTiN薄膜のリソグラフィ条件出し、および反応性イオンエッチング装置(RIE)を用いたTiNドライエッチング条件出しを報告する。
第二の課題として、超伝導量子ビットのコヒーレンス改善を目的とした界面損失量の評価を目指している。本実験では超伝導共振器内における損失源として挙げられる4つの要素、すなわち超伝導金属とSi界面:Metal-Si(MS)、超伝導金属と空気界面:Metal-Air(MA)、Siと空気界面:Substrate-Air(SA)、バルク基板:Si-substrate(SI)のそれぞれの損失量を評価するための試料を作製する。誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Inductivery
Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)装置を用いて共振器設計やエッチング時間を変えて基板のSiを等方的に深堀エッチングすることでSi断面形状の異なる共振器を複数作製し、各界面のparticipation ratioや希釈冷凍機温度で測定した共振器の内部Q値を解析することで界面ごとの損失量抽出を目指す。
実験 / Experimental
【マスクレス露光装置】
NIMS微細加工プロセスデータベース(以下、MiNaPro)を参考にしてTable.1に示す露光条件にて条件出しを行った。なお、処理するウェハサイズは3インチで、TiN(100 nm)/Si基板の構成となっている。Siウェハ上へのTiN薄膜成長は他機関で実施した。
【CCP-RIEドライエッチング装置】
同型ドライエッチング装置のNbドライエッチング用レシピ Table.2 を利用してエッチング時間を1~3分に設定し、TiNのエッチングレート出しと断面SEM観察を実施した。断面SEM観察よりパターン形状に問題なしと判断し、処理時間2分時のレートを適用して実デバイス試作を実施した。なお、処理するサンプル構成はResist(1300 nm)/TiN(90-110 nm)/Si-subの構成となっている。
【ICP-RIE装置(RV-APS-SE)】
Siウェハ上へのNb薄膜成膜、共振器パターンのリソグラフィ、およびNb薄膜のRIEエッチングは他研究機関で実施した。その後、
昨年度までに条件出しした既存条件を基にして等方性エッチングによるSi深堀エッチングを継続した。既存条件ではSi被エッチング面の表面粗さのエッチング時間依存性が認められ、これが正確な界面損失量評価の妨げとなっていることが危惧された。今年度はこの抑制を目指してSi被エッチング面の平滑性改善を主たる目的として、Table.3に示すエッチングレシピにてエッチング条件最適化を図った。
結果と考察 / Results and Discussion
【TiNリソグラフィおよびRIEエッチング】
MiNaProより参考データとなる標準条件を参照してマスクレス露光装置【MLA150】にてDose量60-65 mJ/cm2の範囲で露光した結果、Dose:65 mJ/cm2、Defoc:0の時に所望の形状を有するレジストパターンを得ることができた(Fig.1,2)。なお、共振器の設計はLine/Space=6 um/2 umである。しかしながら、レジストパターン側壁にて定在波効果と思われる周期的な波打ち形状が確認されており(Fig.3)、必要に応じてARC(Anti
Reflection Coating)やPEB(Post
Exposure Bake)による対策を講じていく予定ではあるが、現段階においてデバイス形状に何ら問題がないため経過観察としている。この露光条件を適用して実デバイス作製プロセスを遂行する。Fig.4にエッチング時間別の断面SEM像を、Fig.5, Table.4にエッチングレートを示す。断面SEM観察よりエッチングレートは処理時間の増加に伴って速くなり、3分以降に飽和していく傾向を示した。この傾向はエッチング初期の段階でTiN最表層に存在している若干の反応層による律速か単なるチャンバ特性かは現時点では定かではない。より短時間処理をする場合には留意が必要と考える。パターン形状はTiNパターン上部から側壁にかけて特に問題はなく、処理時間2分時のレートを適用して実デバイス作製プロセスを遂行中である。
【Nb共振器におけるSi深堀エッチング】
既存条件に対してO2添加量を徐々に増加させながら条件最適化を図った結果、既存レシピにO2を添加することで平滑性が改善されることが分かった。これはエッチングの阻害要因となるエッチング生成物の形成をO2により抑制していると推察する。最も平滑性に優れていたのはO2を10 sccm添加した時で(Fig.6)、15 sccm以上でエッチングレートの低減(Fig.7)と平滑性の若干の劣化を確認した。この事象はエッチング雰囲気がO2により希釈されていることを示唆していると捉え、現時点では10 sccmを超えるO2添加は控えることとしている。また、平滑性のパターン開口幅依存性も確認され、パターン開口幅が狭くなるほど平滑性が劣化した。より狭小なパターン開口幅についてはさらにエッチングレシピを調整する必要がある。今後は更なるエッチングレシピの最適化と被エッチング面の表面粗さをナノスケールで定量的に分析する手法を検討していく予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 共振器レジストパターンのSEM像
Fig.2 共振器レジストパターンの断面SEM像
Fig.3 共振器レジストパターンの断面SEM像。側壁の波打ち形状が確認できる
Fig.4 TiN ドライエッチング後の断面SEM像
Fig.5 TiNのRIEエッチング速度
Fig.6 Si深堀エッチング後の断面SEM像
Fig.7 Si深堀エッチング速度の酸素ガス流量依存性
Table.1 マスクレス露光装置の露光条件
Table.2 RIEドライエッチング条件
Table.3 ICP-RIEエッチング条件
Table.4 TiN RIE平均エッチング深さおよび平均エッチング速度
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
6/14 業務実施者(大住)> ①【横断技術領域】のキーワードの「光リソグラフィ」と「膜加工・エッチング」にチェックを入れていただけないでしょうか?②【重要技術領域】のキーワードの「超伝導」にチェックを入れていただけないでしょうか?はJSTムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2067)の支援を受けたものです。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件