【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM0017
利用課題名 / Title
高性能二次元電気泳動法による次世代プロテオミクスの実用化
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
質量分析/ Mass spectrometry
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
林 宣宏
所属名 / Affiliation
東京工業大学生命理工学院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
服部晋也
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
“高性能二次元電気泳動法を用いた次世代プロテオミクス法の開発”の一環として、申請者が独自に開発した二次元電気泳動法で得られたゲル上のスポットを形成するタンパク質の、高精度、かつ、ハイスループットの同定法を開発する。本年度は、月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析、寄生虫の血液凝固回避メカニズムの解明、および、DNAの放射線障害回復メカニズムの解明を実施した。
実験 / Experimental
NIMSバイオ分析ユニットのLC-MS/MS (Q-Exactive)を使用して、申請者が調製する、切り出した二次元電気泳動のスポットのゲル内プロテアーゼ消化産物を用いたタンパク質の同定を行う。本年度は、以下の三つの研究を行った。
月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析:5名の女性アスリートが、卵胞期と黄体期の両方において、60分間の自転車運動と90分間の休息を行った。運動前、運動中、運動後に血清を採取し、2Dゲル電気泳動法により血清プロテオームを解析した。
寄生虫の血液凝固回避メカニズムの解明:広東住血線虫に寄生されているラットとされていないラット、また寄生からの時間が 4 週間・7 週間・24 週間となる、6 グループの 20 サンプルを使用した(共同研究先で作製)。ラット血漿中の含有量が少ないタンパク質を分析するため、Mouse-3 Affinity column (Agilent)を使い含有量が多いタンパク質 (IgG, Transferrin, Albumin)を除去し、2Dゲル電気泳動法によりプロテオームを解析した。
DNAの放射線障害回復メカニズムの解明:ヒトリンパ球TK6 細胞の野⽣型、および、DNA-PKcsノックアウト型に、10Gy、および、20Gy の吸収線量の放射線を1時間、あるいは、2時間照射したものから、タンパク質を溶出したのち夾雑物を除いて、2Dゲル電気泳動法によりプロテオームを解析した。
結果と考察 / Results and Discussion
月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析:被験者の血清プロファイルから合計511のスポットが検出され、黄体期のハプトグロビンと自転車トレーニング中の補体成分3dに有意な減少が観察された。一般化推定方程式分析による教師なし学習では、食欲抑制物質である血清ペプチドYY(PYY)が、運動によって誘発される血清タンパク質の変動に有意に影響することが示された(p<0.05)。回帰分析では、PYYと血清IgMの間に正の相関(R = 0.87)が示され、女性アスリートの腸内環境と免疫反応が食欲調節に寄与している可能性が示唆された。
寄生虫の血液凝固回避メカニズムの解明:含有量が多いタンパク質を除去することで2DE 画像で検出されるスポットの総数は 628 スポットから 756 スポットに増加し、66 kDa付近の Albumin スポットの%vol(スポット強度を全体のスポット強度の積算値で割ったもの)が51.6% から30.0% に減少した。得られた計 20 枚のゲル画像を Melanie ゲル解析ソフトで解析した。それぞれのスポットの%Vol を求め、線形解析において感染と感染時間によってLFDR が 0.2 未満の有意に変化するスポットを探した。その結果、感染と非感染(4 週間)では32 スポット、7 週間とでは 3 スポット、24 週間では 50 スポットが変化していた。これらの中で、特に LFDR が低く有意に変化しているスポット、%Vol が減少しているスポット、位置が特異なスポットを選び(合計16 スポット)、そこに含まれるタンパク質をLC-MS/MS で同定した。
DNAの放射線障害回復メカニズムの解明:得られた30枚のゲル画像をt 検定と回帰分析を⽤いて統計解析を⾏ない、16 個の優位に変化したスポットをL C―M S/MS にて同定した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、日本体育大学(月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析)、四日市看護医療大学(寄生虫の血液凝固回避メカニズムの解明)、東京工業大学松本研究室(DNAの放射線障害回復メカニズムの解明)との共同研究である。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Kazuhiro Tanabe, Proteomics of appetite-regulating system influenced by menstrual cycle and intensive exercise in female athletes: a pilot study, Scientific Reports, 14, (2024).
DOI: 10.1038/s41598-024-54572-1
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件