利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS0012

利用課題名 / Title

量子生物物理化学のための新しいパルスESR実験

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

電子スピン共鳴,ESR


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

前田 公憲

所属名 / Affiliation

埼玉大学大学院理工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

中村 敏和

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-214:電子スピン共鳴(E680)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

我々は任意波形発生装置(AWG)を用いたラジカル対のスピン操作に基づく光誘起ラジカル対の化学反応制御やスピンロジックゲートの構築をめざしてている.すでに理論的な計算による予測はされており,K. Masuzawa, et al. J. Chem. Phys. 152, 014301 (2020)において報告した,本研究ではこれらを現実的特にタンパク質中で生成するラジカル対に適用するために,近年分子研に導入された最先端のパルス電子スピン共鳴装置を用いて化学反応制御の可能性を試す.ラジカル対のスピン操作は,従来 AWG の応用として用いられてきた不均一幅をチャープパルスでカバーしたり,多種のラジカル種を選択的に取り出したりする用途よりも緻密なものであり,スピン間の相関特に空間的に分離した2つのスピンのエンタングルメントをコヒーレントに操作し制御する面から,量子物理学的な要素が強い.同時に,これらをタンパク質中のラジカル対などに応用することにより,近年注目を集めつつある量子生物学との関連も深い研究である.

実験 / Experimental

過去に分子科学研究所の電子スピン共鳴装置 Bruker E680 を用いて AWG による波形を入力したところ, 概ね似たような任意波形を出力できていることが確認できた.しかし, AWG に入力した設計された波形(input)は実際にAWG から発振後にオシロスコープで検出した波形(output)に比べて歪んでいた. 実際の output 波形を用いてスピンダイナミクスを計算すると, 全く期待通りのスピンの運動が再現できなかった. このことは,入力波形と TM や RM チャンネルに現れる波形を見ることで補正が可能であろうと思われる.このことに加えて,共振器の周波数依存性も問題である.それらを確認するため DPPH を用いて FID 信号の周波数依存性や磁場依存性から共振器のバンド幅等について検討した.また,教育的な観点から AWG を用いたパルスがリファレンスアームの周波数を用いたクアドレーチャミキサーによってどのように観測されるのかを観測した.

結果と考察 / Results and Discussion

FID の磁場依存性から共鳴からのずれの効果を確認し,共振器のバンド幅が振動磁場のひずみの原因の一つであることをある程度定量的に確認した.一方で AWG 信号のリファレンス周波数とのずれの正負とクアドレーチャミキサーの虚部の挙動との関連を把握することが出来た.また入力信号を変化させることによってマイクロ波回路による波形のひずみを限定的に克服できる可能性をつかんだ,今後これらの結果を用いて今後の波形制御を目指す.これらの成果を踏まえて量子科学技術研究機構のほぼ同等の ESR 装置を用いて,TEMPO ラジカルとBDPA とが混ざり合った信号の選択的なエコー測定を目指した.現状としてはその片鱗を観測することが出来たが,より詳細な波形制御が必要であることを確認することになった.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

受賞2022年度 電子スピンサイエンス学会
1)優秀口頭発表賞 立野明宏(博士後期課程1年)
「局所制御理論によるラジカル種の制御の理論と実験」〇立野明宏、増沢健太、長嶋宏樹、菅原道彦、前田公憲2)優秀ポスター発表賞 木村飛翔(博士前期課程1年)
「希少生体分子のための高感度時間分解磁場効果測定」〇木村飛翔、前田公憲


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 1. Kiminori Maeda (Saitama University, Japan) "Sensitive Detection Methodology for Magnetoreception and Reaction Control by RF Field in Photochemical Reactions"
  2. 2. Kiminori Maeda Probing coherent spin dynamics in low field regime by transient absorption detected pulsed magnetic field effect.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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