利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23YG0059

利用課題名 / Title

高分子フィルムの接着性

利用した実施機関 / Support Institute

山形大学 / Yamagata Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

プラスチック類/ Plastics,アルミニウム基合金/ Aluminum-based alloys,触媒材料/ Catalyst materials,複合材料/ Compound materials,成形/ Molding,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology,高強度・生分解性プラスチック/ High-strength, biodegradable plastic,X線回折/ X-ray diffraction,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小林 修士

所属名 / Affiliation

山形大学大学院有機材料システム研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

YG-602:X線非破壊検査装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

私達の身の回りには、様々なマルチマテリアルが使用されている。その一つが多層フィルムである。多層フィルムは様々な機能を付与するためにいくつかの異種材料を何層にも積層したフィルムである。一般に多層フィルムの異種材料は接着剤により相互に接合している。しかし、強固な接合のため異種高分子への分離が難しくマテリアルリサイクルが困難であるという課題がある。従って、マルチマテリアルのリサイクル性を向上させるには接着性と簡易剥離性の二特性を持つ“はがせる接着技術”が必要である。この二特性を付与するために、UV 照射と加熱の 2 つの刺激で発泡する高分子試薬を接着剤に混ぜる。この刺激発泡型高分子はどちらかの刺激だけでは発泡しないことがわかっており 2 つの刺激下では顕著に分解が進み発泡することがわかっている。従って、この発泡剤から発生する気泡により多層フィルムの接着層を破壊し分離が容易になるのではないかと考えた。しかし、接着剤中での発泡性能や剥離強度への影響は明らかになっていない。本研究では、二重刺激発泡型高分子をフィルム用接着剤に添加し発泡性能と剥離強度への影響を解明することを目的としている。

実験 / Experimental

試料: 液硬化性のウレタン系接着剤を用いた。 発泡主剤と開始剤を質量比 100:1、接着主剤と硬化剤を質量比 10:1で酢酸エチルを溶媒としてよく混合した。この接着剤を PET フィルムに塗布し脱気プレス機にて圧着を行い、 2 種 3 層フィルムを作製した。発泡剤の添加量は接着剤に対し1,5,7,10wt%とした。引張試験 :作製した試料に UV 照射加熱処理(加熱温度 140℃、UV 波長 405nm、照度 105.5mW/cm²、UV 照射 5 分)を行い、未処理の試料とそれぞれ接着性の簡易評価を行った。なお、万能試験機 3342(INSTRON 社製)を用いて T 型剥離試験を 5 回ずつ測定し平均値を算出した。試験片寸法は 15×150mm とした。X線非破壊検査装置 (TXScanner, Micro-focus X-ray CT scanner, 装置ID:YG-602)による観察:接着界面にどのような気泡ができているかX線CT装置にて断面観察を行った。測定条件は管電圧60kV、管電流70μAで撮影時間は40~60minで実施した。各添加量の試料に UV 照射加熱処理を施して、 断面及びスライス断面を撮影し未処理の試料と比較した。また観察範囲は接着界面から接着層の深さ 6μmとした。

結果と考察 / Results and Discussion

各発泡剤の UV 照射及び加熱処理前後の剥離試験の結果を示す。どちらの発泡主剤も 0wt%の試料と比較して、発泡剤添加量が増加すると剥離強度がそれに伴い若干低下した。しかし、未処理の試料より UV 照射加熱処理を施した試料は著しく剥離強度が低下した。 この結果を接着界面構造により考察するために各試料の X 線CT 観察を行った。図 1、2 に PtBOCS 及び PtBOS の UV 照射加熱処理後の試料の接着界面に平行な接着層断面の CT 画像を示す。ここで、画像のコントラストは密度が高い箇所は明るく密度が低い箇所は暗くなる。発泡剤の添加量が 0wt%の接着界面と比較して発泡剤を添加した接着界面は気泡が発生していた。これは発泡剤の気泡である。発泡剤の添加量が増えると接着界面全体に気泡が広がっていくことがわかった。また、図 3 には X 線 CT 測定による接着界面に垂直なPtBOCS の断面画像を示す。発泡剤添加量が増えると気泡の大きさが大きくなっていることがわかった。発生した気泡が接着界面を押し広げ接着層の厚さが増加していることがわかった。以上により、発泡剤を UV 加熱処理前では発泡剤無添加のフィルム試料と剥離強度はあまり変わらないが、UV 加熱処理を施すことで大きく剥離強度を低下させることができた。これは発泡剤から発生した気泡が接着界面に届き接着面積を減少させ、また、接着層が破壊され剥離強度の低下に繋がったと推測される。しかし、発生する気泡には偏りがあり、均一な発泡には現状至っていない。均一な発泡制御により、より簡易剥離性が向上すると推測される。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 1. poly(p-tert-ブトキシスチレン)PtBOCS の UV 及び加熱処理後の接着界面に平行な接着剤層の断面画像



図2 poly(p-tert-ブトキシカルボニルスチレン)PtBOSのUV及び加熱処理後の接着界面に平行な接着剤層の断面画像



図 3 PtBOCS の UV、 加熱処理後の界面に垂直な断面画像


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 小林修士、宮田剣”刺激発泡型高分子を用いた接着界面の制御による多層フィルムのリサイクル技術の開発” 日本包装学会(オンライン)、令和5年7月21日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る