【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23YG0058
利用課題名 / Title
高分子フィルムの低分子拡散透過性
利用した実施機関 / Support Institute
山形大学 / Yamagata Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ポリアミド,ポリプロピレン,フィルム,ビタミン,透過,成形/ Molding,高強度・生分解性プラスチック/ High-strength, biodegradable plastic,成形/ Molding
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
荒木 美紅
所属名 / Affiliation
山形大学工学部高分子・有機材料工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
現在、高分子フィルムは食品包装や液晶ディスプレイなど幅広い分野で利用されている。高分子フィルムは、耐熱性や柔軟性、耐衝撃性など多様な機能性を有している。その機能性のひとつに透過性がある。透過性とは、高分子フィルムの微細孔を気体や水蒸気といった低分子が透過する性質のことであり、この性質は、食品や医薬品の包装などに応用されている。しかし、現在、高分子フィルムの透過性のメカニズムや透過性を自在に制御する方法は明らかになっていない。また、気体透過性や水蒸気透過性については研究が進んでいるが、ビタミンのような比較的サイズの大きい低分子の透過性の研究はほとんど行われていない。透過性の制御方法が解明されることで、デバイスや食品包装だけでなく、人工生体材料などより多くのものへの応用や、既存のものの機能性をより高めることが期待できると考えた。本研究では、各種ビタミンおよび高分子フィルムの種類による透過性の違いと、その透過性に影響を与える因子を調べることを目的とする。
実験 / Experimental
試薬:ビタミンC(L(+)-アスコルビン酸、富士フィルム和光純薬)、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩、富士フィルム和光純薬)、ビタミンB1(チアミン塩酸塩、富士フィルム和光純薬)
フィルム:二軸延伸ナイロン6(PA6)フィルム(厚さ15μm)、未延伸ナイロン66(PA66)フィルム(厚さ25μm)、未延伸ナイロン12(PA12)フィルム(厚さ50μm)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)フィルム(厚さ15μm)、未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ25μm)
透過試験:塩化ビニル管とEPDMパッキンを用いて低分子の透過を測定するための装置を作製した。片側に5wt%濃度の各種ビタミン水溶液(体積:150ml)を入れ、もう片方に純水(体積:150ml)を入れ、両液体の境界に高分子フィルムを挟めた。
透過測定:透過後の純水側の液体について、紫外可視近赤外分光光度計V-750(日本分光社製)を用いて波長分布吸光度スペクトルを測定した。各種ビタミンのピーク波長は200nm~400nmにある。ランベルト・ベールの法則より、吸光物質の濃度は吸光度に比例するため、透過量は検出された吸光度と比例するものとして考えた。
結晶化度測定:各 PA フィルムについて、全自動多目的X線回折装置 (SmartLab, X-ray diffractometer)による広角 X 線回折測定を行い、結晶化度を求めた。実験装置は、全自動多目的X線回折装置(装置ID:YG-601)を用い、管電流50mA、管電圧 40mV、露光時間は 15~30 分とした。得られた散乱像を元にピーク値を算出し、それぞれ結晶化度を求めた。
結果と考察 / Results and Discussion
図 1 に 5wt%濃度の各種ビタミン水溶液における PA6 フィ ルムの透過試験(168 時間)後の波長分布吸光度スペクトル を示した。ピーク時の吸光度の値を比べると、ビタミン C、 ビタミン B6、ビタミン B1 の順に大きくなった。つまり、PA6 においてはビタミン C が最も透過したと考えられる。理由と しては、ビタミンの親水基の数と分子量が挙げられる。5wt%濃度のビタミンC水溶液における各種フィルムの透過試験を行った結果、ピーク時の吸光度の値は、PA6、PA66、PA12の順に大きく、OPET、CPPはピークが検出できず透過しなかった。親水性の高いPAフィルムの透過性が高くなったことから、透過性にはフィルムの親水性が影響していると言える。各PA フィルムのX線回折測定による結晶化度を比較すると、 PA66 の結晶化度が最も高く、PA12 が最も低くなった。先行研究より、気体透過性においてはフィルムの結晶化度が大きく影響し、結晶化度が高いほど透過性が低く、結晶化度が低いほど透過性は高くなると考えられているが、今回の結果では、透過性と結晶化度に相関はあまり見られなかった。このことから水溶液下でのビタミンの透過性においてはフィルムの結晶化度よりも親水性の方が支配的に影響すると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 各種ビタミン水溶液と PA6 との 透過試験後の波長分布吸光度スペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 山形大学工学部高分子有機材料工学科 卒業研究発表会 R6.2.14.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件