【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23YG0051
利用課題名 / Title
フタロシアニンの添加がポリスチレン/多層カーボンナノチューブ複合体に与える影響
利用した実施機関 / Support Institute
山形大学 / Yamagata Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
高分子複合体, カーボンナノチューブ, 導電性,成形/ Molding,コンポジット材料/ Composite material,コンポジット材料/ Composite material
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
杉浦 有威
所属名 / Affiliation
山形大学大学院有機材料システム研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
コンポジットの導電性や強度を最大限発揮するために、添加したフィラーの分散性が重要な要因となる。Hoseini1)らは、ポリスチレン(PS)/多層カーボンナノチューブ(CNT)複合材料において一定の程よい分散であるとき、ナノコンポジットの導電性を高めるのに非常に有効であることを報告した。当研究室では、カーボンブラック(CB)ナノコンポジットに銅フタロシアニン(Cu-Pc)を添加することで導電性が1~8桁向上することを報告している。モルフォロジー観察や動的粘弾性測定からPcがCB凝集構造の形成を促進し導電パスが増加したことを示唆している。アスペクト比が大きい程少ない添加量で優れた導電性が期待されるため、本研究ではPSにアスペクト比が極めて大きいCNTを添加した。 材料にPcを添加することがCNTの分散性にどのような影響を与えるか、導電性とレオロジーの観点及びハンセン溶解度パラメーター(HSP)から検討した。
実験 / Experimental
試料PS(重量平均分子量312,000)とCNT (平均長:1.5 μm, 平均直径:9.5 nm, NC7000, Nanocyl SA社製)とCu-Pc(平均直径80 nm),無金属フタロシアニン(nM-Pc)を用いた。試料作製 -1 CNT及びPcマスターバッチ(MB)作製PS 10 gに対しCNT 2.5 vol %を添加したMBを作製した。PSはジクロロメタンに入れ30 minマグネットスタラーによる撹拌を行い、CNTはクロロホルム中で超音波ホモジナイザーを用い30 min混合した。これらを混合し、超音波ホモジナイザーで30 min撹拌させたものをバットに開けて乾燥させた。PS 10g に対しPc 3.2 vol %添加しMBを作製した。PS-Pc MBは連続式二軸混練機(Xplore MC15s, Xplore Instruments社製)を用いて60 rpm, 200 ℃で10 min混練した。-2溶媒キャスト法CNT添加量が0.05~0.5 vol%では上述のCNT MBを用いた。導電性評価低抵抗測定器(MCP-T610, 三菱ケミカルアナリテック)を用いて抵抗率を4探針法で測定し導電率を算出した。線形レオロジー測定はツインドライブ型レオメータ(装置ID:YG-001)を用いた。測定条件は 200 ℃,ひずみ 1 %, 測定範囲は ω = 100 ~ 0.01 rad/s とした。
結果と考察 / Results and Discussion
導電率測定を行うとPcの添加によりPS/CNT複合体の導電率が1桁ほどの上昇を示した。Pcにおける金属含有の有(銅フタロシアニン)無(無金属フタロシアニン)の違いによる差はなかった。また、図に示すように貯蔵弾性率測定では低周波数側においてPcの添加によりPS/CNTの貯蔵弾性率G'が3桁ほど上昇した。こちらも導電性と同様にPcの違いによる差はなかった。これらのことからPcの添加によりPS/CNT内の構造変化が起こったと考えられた。これのTEM観察を行ったところ、PS/CNT複合体ではCNT凝集体がまばらであったのに対し、Pc添加系では凝集体が連なったような構造をとっていることが確認できた。この構造変化を親和性の観点から考えたところ、ポリマー=添加剤の親和性よりも添加剤同士の親和性の方が遙かに優れていた。この結果より、Pc添加により複合体の親和性関係が変わることで構造変化並びにそれが複合体の導電性、貯蔵弾性率に影響を及ぼしたと考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図 PS/CNT , PS/CNT/Cu-Pc , PS/CNT/nM-Pcの動的粘弾性測定
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
1) Amir Hosein Ahmadian Hoseini, Mohammad Arjmand, Uttandaraman Sundararaj., Materials & Design, 125, 126–134 (2017)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 杉浦有威, Sathish K. Sukumaran , 杉本昌隆、銅フタロシアニンの添加がポリスチレン/多層カーボンナノチューブ複合材料に与える影響、プラスチック成形加工第34回年次大会、会期:2023年6月21日~6月22日 会場:タワーホール船越
- 杉浦有威, Sathish K. Sukumaran , 杉本昌隆、銅フタロシアニンの添加がポリスチレン/多層カーボンナノチューブナノ複合材料の導電率と粘弾性に与える影響、成形加工シンポジア第31回秋季大会 会期:2023年11月28日~11月29日 会場:山形テルサ
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件