【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23YG0040
利用課題名 / Title
シクロデキストリン系ブレンドの構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
山形大学 / Yamagata Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
生分解,ポリ乳酸,シクロデキストリン,成形/ Molding,コンポジット材料/ Composite material,高強度・生分解性プラスチック/ High-strength, biodegradable plastic,バイオアダプティブ材料/ Bioadaptive materials,生分解性材料/ Biodegradable material,コンポジット材料/ Composite material,高強度・生分解性プラスチック/ High-strength, biodegradable plastic
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
宮崎 航
所属名 / Affiliation
山形大学大学院有機材料システム研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
現在、SDGs(Sustainable Development Goals)が提唱され、持続可能な社会のための研究が広く求められている。そこで生分解性を有し、植物から生成される合成樹脂であるポリ乳酸(以下PLLA)に注目した。PLLAは環境に優しいという反面、石油由来の合成樹脂に比べ機械的な強度が弱い。しかし、YamanobeらはPLLA樹脂にシクロデキストリン(以下CD)を10%以上混合させることで可塑剤として利用できることを示した[1]。そこで本研究において、CDの分散状態を制御することで、より少量のCDであっても可塑剤として効率よく効果を発揮できると考えた。そこで分散状態を制御するため、アセチル化βCDダイマー(Ac-β-CD-Dimer、以下CD-Dimer)をPLLAに溶融混練させて、より局所的にCDを分散させたサンプルを作製した。このサンプルについて、物性評価と構造解析を相補的に用いて、相互作用や物性を解明することを目指した。ここでは、PLLA/CD-Dimerブレンドの粘弾性について評価を行った。
実験 / Experimental
サンプルはNature 3D社から市販されているPLLAを用いた。なお、グレードは、MFR:8(g/10min),荷重たわみ温度が85℃(0.45MPa,110℃×20min Annealing)である。溶融混練には井元製作所製の混練機(IMC0-00型 L/D型=25)を用いた。予備乾燥として真空オーブンに80℃で1日おいた。スクリュー回転条件は60回転/min(1Hz)とした。温度条件は投入口を160℃、中間部分と先端部分は230℃とした。また、予備実験から本実験で用いるCD-Dimerは230℃において熱分解はしないことを確認した。試料はTable 1に示す通り、PLLAとCD-Dimerを0wt%~3.0wt%の重量比で作製した。さらに、これらのサンプルに小型熱プレス機を用いて厚み約0.1mm厚に加工し、縦40mm×横5mmの短冊状に成形し、測定・評価に用いた。粘弾性をツインドライブ型レオメータ (装置ID:YG-001)にて測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
CD-Dimerの可塑剤としての効果を明らかにするため、PLLAのガラス転移温度(Tg)付近の延伸挙動の変化を評価した。温度依存性粘弾性の結果から貯蔵弾性率E’の結果よりCD-Dimerの分率が多くなるに従って、貯蔵弾性率が低下していることが確認された(Fig.1)。PLLA単体と比べ、CD-Dimerが3.0wt%ブレンドされた場合、E’は12%低下しており、CDによる弾性成分の低下が起こっていることが分かった。CD-Dimerを用いることでYamanobeらの結果より十分少ないCDの分率においても可塑化が起こることが示された。また、Tgの延伸においてCD-Dimerがブレンドされていると破断歪みが向上している傾向にある。このことからPLLAの非晶相に存在するCD-DimerがPLLA鎖と強く相互作用することにより、PLLA鎖間の相互作用を弱めることを示した。これらのことから、CD-Dimerはごく少量でもPLLA樹脂の可塑剤としての効果を発揮したと考察した。次に、200℃において、PLLA/CD-Dimerブレンドの周波数依存性を測定した(Fig2)。CD-Dimer添加系では低周波数領域において貯蔵弾性率に平坦領域が見えており、CD-Dimerが長時間緩和成分として働いていることを示唆している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 CD-Dimerブレンドサンプルの動的粘弾性E‘ / Paの温度依存性
Fig.2 PLLAとCD-Dimerのブレンド比を変えた200℃下での周波数依存粘弾性測定結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
(1) T. Yamanobe et al., J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem., 93, 117–126 (2019).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 宮崎航、山形大学修士論文公聴会
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件