利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1194

利用課題名 / Title

塗布型有機半導体を用いた高安定・高急峻スイッチング有機トランジスタの開発

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

エレクトロデバイス/ Electronic device,ダイシング/ Dicing


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

井上 悟

所属名 / Affiliation

東京大学工学系研究科物理工学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

村田 啓人,二階堂 圭,宮田 稜

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-906:ブレードダイサー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

塗布型有機薄膜トランジスタ(TFT)材料の高度化には、良質な絶縁層/半導体層界面形成に有効な層状結晶性とその制御が重要である。本年度は新たに開発した層状有機半導体pTol-BTBT-Cnの高均質単結晶薄膜作製・電気特性評価を行い、層状積層様式の違いにもとづく単結晶有機TFTデバイスのアルキル偶奇効果を明らかにした。

実験 / Experimental

ブレードダイサーを使用して熱酸化膜付きシリコン基板を15 mm 角の形状に切削し、パリレンコーティングすることで、良質な絶縁膜表面を持つ有機TFTの基材を作製した。この基板上にブレードコート法によるpTol-BTBT-Cn溶液の塗布製膜を行うことで単結晶薄膜を作製するとともに、上部に真空蒸着で金薄膜を製膜してボトムゲート・トップコンタクト型の単結晶有機TFTを作製した。得られたTFTの電気特性におけるアルキル鎖長依存性を系統的に評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

pTol-BTBT-Cn (n = 9−14, Figure (A))の結晶構造は、長鎖化(n =9以上)によって分子長軸が揃った分子層が形成されるようになり、分子層間の接続が互い違い(head-to-head)になるb-LHB 構造と、層間接続がすべてhead-to-tailとなる極性型層状積層(pol-LHB)構造が、アルキル炭素数の偶奇により交互に現れることが明らかとなっている(Figure (B)(C))。これら一連の有機半導体はいずれもブレードコート法によりきわめて高均質な単結晶薄膜(Figure (D))が作製可能であり、これを用いた単結晶有機TFT (Figure (E))は、最大移動度10 cm2/Vsを超えるきわめて優れたキャリア輸送特性を示すことが分かった。さらに、TFTデバイスのスイッチング性能の指標となるsubthreshold swing (SS)値には顕著な偶奇性が見られ (Figure (F))、特に pol-LHB 構造では SS 値が 100 mV/dec 近傍となるきわめて高急峻なスイッチング性能を示すことがわかった。以上の結果から、今回新たに開発したpTol-BTBT-Cnの与える極性型層状構造が、有機TFTの高急峻化にきわめて有効であることが確認された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Figure (A) pTol-BTBT-Cnの化学構造式。(B)(C) pTol-BTBT-Cnの単結晶構造。(D) 作製したpTol-BTBT-Cn単結晶薄膜の偏光顕微鏡像。(E) 単一結晶ドメイン上に作製したトップコンタクト型TFTの模式図。(F) 作製した単結晶TFTの飽和領域(VD=−30V)における伝達特性。 (G) SS値のアルキル鎖長依存性。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

謝辞:本研究はJST CREST「革新材料領域」JPMJCR18J2の支援を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Satoru Inoue, Control of Polar/Antipolar Layered Organic Semiconductors by the Odd‐Even Effect of Alkyl Chain, Advanced Science, 11, (2024).
    DOI: 10.1002/advs.202308270
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 井上 悟, 東野 寿樹, 二階堂 圭,宮田 稜,松岡 悟志,田中 睦生,都築 誠二, 堀内 佐智雄,近藤 隆祐,佐賀山 遼子,熊井 玲児, 関根 大輝,小柳 恭徳,松原 正和,長谷川 達生, “層状有機半導体・pTol-BTBT-Cn系のCn偶奇効果とTFT特性との相関” 第84回応用物理学会秋季学術講演会, 令和5年9月19日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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