利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS0001

利用課題名 / Title

パルスESR法を用いた高LET放射線照射で生成するアラニンラジカルの局所的ラジカル分布の評価

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

アラニンラジカル、軟X線照射,重イオン照射、スピン・スピン緩和時間


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中川 清子

所属名 / Affiliation

東京都立産業技術研究センター計測分析技術グループ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

中村 敏和

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-214:電子スピン共鳴(E680)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

アラニンに放射線照射すると、安定ラジカルが生成することが知られており、ガンマ線や高エネルギーX線などの透過性の高い放射線の線量評価に利用されている。一方、軟X線やイオンビームは、物質への透過力が弱く、狭い領域にエネルギーを付与する(高LET)ため、ラジカル種も局所的に高密度で生成すると考えられる。パルスESR測定では、ラジカル間の距離分布を反映したスピン・スピン緩和時間(T2)が評価でき、高LET照射により高密度でラジカルが生成した系では、透過力の高いガンマ線照射等でのラジカル分布に比べて、スピン・スピン緩和時間が短くなると考えられる。そこで、パルスESR測定でスピン・スピン緩和時間を調べることにより、放射線のエネルギー付与の違いによるラジカル分布の変化を評価した。

実験 / Experimental

重水素化アラニンに、高エネルギー加速器研究機構で軟X線照射(フォトンエネルギー:3~7 keV)および量子医科学研究所・HIMACで重イオンビーム照射(Ne, Ar, Fe)を行った。ガンマ線照射は、都産技研所有のセシウムガンマ線照射装置(フォトンエネルギー:660 keV)を使用した。照射線量は、アラニン吸収線量150 Gy相当とした。照射した試料は、4 mmφのESR試料管に脱気封印し、分子研に持ち込んだ。パルスESR測定は、メチル基の回転の影響を抑えるため、60 Kでスピン・スピン緩和時間を測定・解析した。

結果と考察 / Results and Discussion

2パルス法でスピンエコーを観測し、磁場掃引しながらエコー強度を観測するとエコー検出ESRスペクトルが測定できる。ガンマ線照射および7 keVのX線照射した試料のエコー検出ESRスペクトルを図1に示す。エコーが最大になる矢印の磁場において、スピンエコーの緩和を測定した。ガンマ線照射した試料のエコー減衰曲線を図2に示す。900 nsec間隔のビートは、重水素核との相互作用による変調効果である。図2の破線で得られた減衰の時定数が、スピン・スピン緩和時間(T2)の1/2に相当する。T2の逆数は、フォトンエネルギーの減少に伴って増加し、ラジカル濃度が増加していると考えられる。また、イオンビーム照射との比較から、7 keVのX線照射では、LET: 150 eV/nmのNeイオンビーム相当のラジカル分布であるのに対し、4 keVのX線照射では、LET: 300~500 eV/nmのFeイオンビーム相当のラジカル分布であることがわかった。今後は、ESRイメージング測定によりラジカル分布を可視化し(2023年度ARIM申請済)、パルスESRおよびCW-ESRの結果と比較検討して、論文にまとめる予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 エコー検出ESRスペクトル



図2 エコー減衰曲線


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

測定は、浅田瑞枝博士にご支援いただきました。また、中村敏和教授にご助言いただきました。 ありがとうございました。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 中川清子,“アラニン-d4へのイオンビーム照射で生成するラジカルのスピン-スピン緩和時間とエネルギー付与の関係”第61回電子スピンサイエンス学会年会,令和4年12月2日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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