利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT5046

利用課題名 / Title

グラフェン量子ドットの蛍光収率向上とLEDへの応用

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

グラフェン量子ドット, 蛍光寿命, 量子収率,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy,フォトニクス/ Photonics


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

桑原 彰太

所属名 / Affiliation

東邦大学理学部化学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

細貝 拓也

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-503:可視-近赤外過渡吸収分光装置 (VITA)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 本研究で用いるグラフェン量子ドット(GQD)は、グラフェンを直径10 nm程度の面積に切り出した構造をしており、表面上にはカルボキシ基を中心とした官能基が付加している。GQDはサイズと付加している官能基に依存した蛍光特性を有しており、バイオイメージングや太陽電池、LEDなどその特異な光学特性を利用した応用研究も積極的に進められている。一般的な合成方法により得られるGQDは水溶性であるが、カルボキシ基をエステル基に変換することにより有機溶媒へ溶解させることが可能となる。有機溶媒に溶解させたGQDは、プリンティング技術と融合させることで有機ELなど光学デバイスへの応用が期待できるが、蛍光量子収率が低いことが課題であった。
 我々の研究グループでは、ベンジルアルコールを用いたエステル基への変換により、高い蛍光量子収率(蛍光波長:450 nm)を持つ有機溶媒へ溶解するGQD(GQD-Bn)を合成することに成功した。さらに固体化したGQD-Bnから白色発光が観測でき、白色光源などへの応用が期待される。本研究では、GQD-Bnの構造と発光効率との関係を明らかにするため、クロマトグラフィーによりサイズ分離したGQD-Bnを用意し、各GQD-Bnの蛍光量子収率の測定後、蛍光寿命測定により発光ダイナミクスについて調べた。

実験 / Experimental

 既報のとおりGQD-Bnを合成した(参考文献1)。トルエン溶媒に抽出したGQD-Bnを用いて、バイオビーズ S-X1を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより分離精製し、16個のフラクションを得た。各フラクションのトルエン溶液について、吸収スペクトル測定結果、三次元蛍光スペクトル測定、及び絶対量子収率測定を行った。また、得られた各フラクションのトルエン溶液を用いて、蛍光寿命測定を行った。蛍光寿命は時間相関単一光子計測法に基づくナノ秒可視-近赤外蛍光寿命測定装置を用いて計測した。半導体レーザーを励起光源とし、測定試料からの発光光子数(発光強度)を励起パルス光照射後の時間の関数として測定することで、時間分解発光曲線を取得した。実験では励起光に342 nmの波長(パルス幅1 nm)を用いた。検出波長は各フラクションの最大蛍光波長に合わせて、400 nmから440 nmの波長範囲で調整した。

結果と考察 / Results and Discussion

 各フラクションに含まれるGQD-Bnのトルエン溶液の三次元蛍光スペクトル測定結果から、後から溶出したGQD-Bnのトルエン溶液では最大蛍光波長が短波長側にシフトし、各溶液に含まれるGQD-Bnのサイズの減少に伴い蛍光特性が変化したと考えられる。量子収率が最大と最少となったフラクションのトルエン溶液について、時間相関単一光子計測法に基づくナノ秒可視-近赤外蛍光寿命測定した結果をFig.1に示す。蛍光寿命測定結果より、各フラクションに含まれるGQD-Bnの発光には2 nsと6 – 8 nsの寿命を持つ2成分が含まれており、遅い蛍光寿命の成分が含まれる割合が多いGQD-Bn溶液の量子収率は高くなる傾向にあることが明らかとなった。今後、透過型電子顕微鏡による各フラクションに含まれるGQD-Bnの構造観察や近赤外吸収スペクトルなどの測定による表面官能基の同定などにより、各GQD-Bnの構造と蛍光特性に与える影響について、より詳細に研究を進める予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1 カラムクロマトグラフィによる分離前後のGQD-Bnの蛍光寿命測定結果。分離前、分離後の高い量子収率を示したフラクション、低い量子収率を示したフラクションのGQD-Bnの蛍光寿命。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献
[1] S. Tachi, H. Morita, M. Takahashi, Y. Okabayashi, T. Hosokai, T. Sugai and S. Kuwahara, Sci. Rep., 9, 14115 (2019).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 「サイズ排除クロマトグラフィーによるベンジルエステル化グラフェン量子ドットの量子収率向上及び白色LEDへの応用」石井夏野, 野村拓未,桒原彰太, 第84回応用物理学会, 2023.9
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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