利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT5014

利用課題名 / Title

固体NMRを利用した非環式レチノイドの生体膜貯蔵機構の解析

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

スピン制御/ Spin control,DDSマテリアル/ DDS material,生体イメージング/ In vivo imaging,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

古山 浩子

所属名 / Affiliation

岐阜大学工学部化学・生命工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

服部峰之,大沼恵美子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-505:固体NMR装置 (SSNMR)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ビタミンAの代謝産物であるall-trans-レチノイン酸(ATRA)およびその誘導体(以下,レチノイドと総称)は,近年,核内受容体の活性化を通して抗アルツハイマー病作用が示され,中枢神経系(CNS)疾患治療薬の候補として注目を集めている。利用者らはこれまでに,CNS治療薬の開発過程では,in vivoで丸ごと脳内動態が解析できる非侵襲的な陽電子断層画像撮像法(PET)の活用が有効であると考え,ATRAの11C標識プローブを合成したが, ATRAの活用は,長い合成行程,光や標識化反応条件下での不安定さ,分離精製の煩雑さ,容易な構造異性化に伴う動態解析の複雑さなど,問題点が多い。そこでATRAのβ-イオノン環が開環した安定構造を有する非環式レチノイド(ACR, 1)に着目し,そのPETプローブ([3-11C]1)の開発を試みた。その結果,独自の高速カップリング反応により11C標識プローブの合成に成功し,静注によるラットとサル脳のPET撮像から高い脳移行性が認められ,サルPET画像からは大脳皮質への集積が示唆された。また,[3-11C]ACRの高い脳内移行性の発見を契機に,これまで未知であったCNS作用に関しても,幹細胞から神経細胞への分化・誘導や脳出血モデルによる改善,保護および抑制効果を見出し, ACRの脳移行性の重要性が裏付けられた。 生理活性化合物の生体膜中への陥入,あるいは膜の外側への吸着などの相互作用に関する構造情報は,活性発現機構を考える上で重要な手がかりになる。PETによる解析では,放射性核種で標識した化合物の生体での位置情報を与えるだけで,NMRスペクトル解析のように化学構造の情報が反映されない。このため,生体膜の膜中への陥入あるいは膜外に吸着した化合物は,溶液中とは異なり異方性をもった運動を行うことから,13Cなどの安定同位体による標識プローブを用いた細胞膜モデル系を構築して,固体NMRによる原子間距離の測定により,生体膜に対する化合物の配向に関する解析が可能となる。具体的には,固体NMRの測定法を用いた原子間距離測定法の一つである回転エコー二重共嗚(Rotational Echo Double Resonance, REDOR) 法を用いて,膜陥入化合物の13C標識位置と生体膜成分であるリン脂質分子のコリンγ位水素との精密原子間距離測定を行う。REDORは,ローター回転数の周期に同期させてπパルスを照射し,マジック角回転 (Magic Angle Spinning, MAS) によって消去されている弱い異種核磁気双極子—双極子相互作用を選択的に復活させる方法である。この相互作用は,固体NMRで問題になる線輻の広がりの原因であるが,「双極子相互作用による歳差周波数ωDが距離rに反比例する」という距離情報を含んでいるため,高分解能を保ちながら原子間距離を測定することが可能となる。利用者らはACRの脳機能発現機構の分子レベルでの解明に向けて,ACRの脳移行に関わる分子構造の解析とともに13C, 2Hダブル標識プローブを合成し,固体NMRの測定による脂質二重層中における分子配置の解析を目的とした。

実験 / Experimental

安定同位元素13C、2Hで標識したPC分子プローブを合成し、生体膜モデルであるバイセル膜との複合膜を調整した。Bruker AvanceIII HD 600の2.5mmプローブを用いて、1H、2H、13C、31Pの固体高分解能スペクトルの取得を試みた。

結果と考察 / Results and Discussion

31Pでは、わずかな化学シフト値変化および1Hシグナルの広幅化が観測され、標識PC分子プローブのバイセル膜への取り込みが示唆された。回転エコー二重共鳴(Rotational Echo Double Resonance, REDOR)測定については、参照試料について、REDORシーケンスとCPVCシーケンスの動作確認を行った。1H-13C間距離の測定による三次的な構造解析の基盤整備を行った。非標識ホシファチジルコリンを主成分とするバイセル膜に13C,2H標識ホスファチジルコリンを溶解した系において,磁気的に特異的なホスファチジルコリンγ位プロトン(1H)と,対象化合物である13C,2H標識ホスファチジルコリンの13Cを観測核種として測定を検討する。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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