【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23AT5005
利用課題名 / Title
溶液中高速AFM像の質に探針が与える影響の評価―形状における差異の検証―
利用した実施機関 / Support Institute
産業技術総合研究所 / AIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
生体イメージング/ In vivo imaging,走査プローブ顕微鏡/ Scanning probe microscope,リソグラフィ/ Lithography,ナノワイヤー・ナノファイバー/ Nanowire/nanofiber
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
伊藤 大直
所属名 / Affiliation
株式会社生体分子計測研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
高速AFMは、従来型のAFMと同様に、振動させたカンチレバーの先端にある探針が試料表面を走査することにより像を取得する。カンチレバーと試料間に形成される空間にはバルク状態の水分子が存在しており、カンチレバーを振動させると水分子の粘性抵抗によってプローブや試料に対して好ましくない振動が発生する。これらの現象(スクイーズフィルム効果)は観察試料を低速で走査する従来型AFMであれば無視できる現象であったものの、観察試料を高速で走査する場合には、影響が顕在化すると考えられる。しかしながら、高速AFMは比較的新しい技術であり、スクイーズフィルム効果による像への影響はほとんど研究されてこなかった。探針形状が異なるカンチレバーを用いることで、スクイーズフィルム効果による高速AFM像への影響を調べることが可能になる。そこで本研究では、昨年度に引き続き、プラズマアッシングにより、探針形状を制御する方法の確立を目指す。昨年度までの実験で、プラズマアッシングによって、探針形状を先鋭化できることが確認された。しかしながら、半導体分野における一般的な条件でプラズマアッシングを行っても、分解効率が著しく悪い(0.17nm/min)ことも判明した。このことは、高速AFMのカンチレバーは微小な構造体であるため、プラズマとの衝突が起こりにくいことが原因である可能性が考えられる。従って、本研究では 分解効率の向上を図るため、①放電板に密着させた状態 及び ②ステージに電位を与えた状態 で プラズマアッシングを行う。
実験 / Experimental
RSPM(AT-504)の付帯設備であるSEMを利用し、EBD法を用いてカンチレバー先端に探針を形成した後に、酸素雰囲気下で40Wの出力によるプラズマアッシングを下記の条件の下に実施し、その後、SEMにより計測を行った。
①放電板に密着させた状態でのプラズマアッシング(Fig. 1)
チャンバーを分解してから再度組み立てる方法により、放電板とカンチレバーの距離を5mm以下に近づけて20分間プラズマ処理を行った。
②ステージに電位を与えた状態でのプラズマアッシング(Fig. 2)
ステージに乾電池を配線し、ステージ自体に22.5Vの電圧が加わるように改造し、プラズマ処理を行った。
次に、電位依存性を調べるために、乾電池の代わりに、定電圧電源をステージに配線して、ステージに電圧(-10V、 -15V、 -20V、 -30V)を加えて、 20分間プラズマ処理を行った(Table. 1)。
結果と考察 / Results and Discussion
①放電板に密着させた状態でのプラズマアッシング
分解速度は従来の0.17nm/minから1.5nm/minに向上したが、カンチレバーの反りや破損など、カンチレバー自体の損傷が多数確認された。
②ステージに電位を与えた状態でのプラズマアッシング
ステージに負電圧を印加することで、分解効率が0.17nm/minから2nm/minに向上した。分解効率の促進には-10V程度の印加で十分であった。ステージに負電圧を与え、出力を50W、処理時間5分の条件でプラズマ処理すると、カンチレバーを破損することなく、先端曲率半径5nmのプローブを製造できることが確認された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 放電板に近接させた状態でのプラズマアッシング 処理時間10分後および処理時間10分後のSEM画像。
Fig.2 ステージに電位を与えた状態でのプラズマアッシング 一部のカンチレバーに探針の反りが確認されたがカンチレバー自体の反りは確認されなかった。
Table.1 電位の強さと分解効率の関係 ステージの電位を変化させたときの(-10V, -15V, -20V, -30V)、処理時間(10分、20分)に対する探針直径の変化
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
井藤浩志博士(物質計測標準研究部門)による測定・探針作成に関する助言に感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件