利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.03】【最終更新日:2023.08.03】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NR0010

利用課題名 / Title

Mg二次電池用Biアノードの析出形態制御による充放電特性の改善

利用した実施機関 / Support Institute

奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

表面処理,平坦性,極微細配線,無電解めっき,強誘電体材料・デバイス/ Ferroelectric materials,X線光電子分光(XPS(硬X線を含む))/ X-ray photoelectron spectroscopy,,コンポジット材料


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

齊藤 丈靖

所属名 / Affiliation

大阪公立大学大学院工学研究科 物質化学生命系専攻 化学工学分野

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

淺野間文夫技術専門職員,片尾昇平技術専門職員,石原綾子技術職員,大野智子技術補佐員

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NR-401:多機能走査型X線光電子分光分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 強誘電体メモリーは高速動作が可能な不揮発性・省エネルギー素子として有望であるが、強誘電体キャパシタの電極材料に用いる貴金属類 (Pt, Ir等)が難加工性であり、微細加工が困難なため高集積化が進展しない。また、必然的に高価となる。一方、貴金属は半導体製造工程中の水素などの還元性雰囲気による強誘電性劣化 (水素劣化)や、繰り返し動作による強誘電性劣化 (疲労劣化)の一因となる。これらの問題点の解決方法として、製膜・加工が容易で、安価かつ低抵抗、水素に対して触媒作用を有さない酸化物導電体電極が有望である。本研究では、高価な金属を含有せず、また、低抵抗で触媒作用を有さないと期待されるMAX化合物を強誘電体キャパシタ用電極として適用するために、 (C, Si)/(TiN or VN)ターゲットを用い、基板温度が400℃、N2スパッタで作製したTiSiN, TiSiCN, VSiN, VSiCN膜を評価した。

実験 / Experimental

 ターゲット及び製膜条件を表1に示す。TiNもしくはVN上のSiを0~1200 mm2にした。Siが1200 mm2の際はCを0~1350 mm2にした。N2を用いてAl2O3(0001)上に400℃で製膜した。CにTi (900 mm2) もしくはV (800 mm2)を一定とし、Siを200~600 mm2に変化させて600℃で製膜した。また、Siが600 mm2の際は基板温度をRT~800℃にした。(Ti or V)Si/Cターゲットの模式図を図1に示す。Arを用いてAl2O3(0001)上に400℃~800℃で製膜した。膜厚、シート抵抗はそれぞれ触針式表面形状測定装置、2端子法と4端子法で測定した。また、X線回折(XRD)、X線光電子分光(XPS)を用いて、結晶相、結合状態と組成をそれぞれ評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

 図2にXPSによる (Ti or V)SiN膜と(Ti or V)SiCN膜の組成を示す。本研究で目的としたMAX化合物の組成比はTi : Si : (C and/or N) = 4 : 1 : 3 = 50% : 12.5% : 37.5% (M4AX3に対応)であるが、若干高抵抗な組成であるTi : Si : (C and/or N) = 3 : 1 : 2 = 50% : 17% : 33% (M3AX2に対応)という2つの量論組成に対応する線を図中に合わせて示す。図2(a)のTiSiN膜とTiSiCN膜において、TiNターゲット上のSi面積を600 mm2から1200 mm2に増加することで、膜中のSi分率は7.1%から17.3%に増加した。また、TiNターゲット上のC面積を450 mm2から1350 mm2に増加することで、膜中のC分率は17.9%から36.7%に増加した。また、C面積の増加に伴い、膜中のSi分率は19.2%から23.4%に増加した。図2(b)のVSiN膜とVSiCN膜において、VNターゲット上のSi面積を600 mm2から1200 mm2に増加することで、膜中のSi分率は5.2%から12.9%に増加した。また、TiNターゲット上のC面積を450 mm2から1350 mm2に増加することで、膜中のC分率は17.2%から34.3%に増加した。図3にXPSによる表1の条件で作製した(Ti or V)SiC膜の組成を示す。C上のSi面積の増加に伴い、膜中のSi分率がTiSiC膜では9.0%から30.5%、VSiC膜では11.0%から25.7%に増加した。また、基板温度をRTから400℃以上にすると、Ti分率は31.9%から29.2%以下になり、また、V分率は36.5%から29.8%以下になった。製膜過程でTi, Vが揮発したため、膜中分率が減少したと考えられる。また、基板温度を400℃から800℃に上げるとTi分率が29.2%から22.5%になった。(Ti or V)SiC膜の基板温度とシート抵抗の関係から、基板温度を400℃から800℃に上昇させると、Ti系では97Ωから22Ωになり、V系では80Ωから43Ωになった。また、抵抗値の最小値はTi系の22Ωであり、V系の43Ωよりも21Ω小さかった。このことから、(Ti or V)SiC系ではTi系が低抵抗化に適していると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


表1 ターゲット組成及び製膜条件



図1 ターゲットの模式図 (a) TiSiC (b) VSiC



図2  (Ti or V)SiN, (Ti or V)SiCN膜の組成



図3  (Ti or V)SiC膜の組成 (a) TiSiC膜 (b) 


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業の支援により、奈良先端科学技術大学院大学で実施された。ご対応いただいた、技術職員の淺野間氏・片尾氏に感謝する。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 1.‘反応性スパッタリングによるMAX化合物薄膜形成とM元素の効果’,若松和伸,上田和貴,岡本尚樹,齊藤丈靖,第32回マイクロエレクトロニクスシンポジウム(MES2022)(2022年9月)
  2. 2.‘反応性スパッタリングによるTi系MAX合金薄膜の物性に及ぼすA元素の効果’,上エレク田和貴,若松和伸,岡本尚樹,齊藤丈靖,第32回マイクロトロニクスシンポジウム(MES2022)(2022年9月)
  3. 3.‘乾式および湿式プロセスによる最先端半導体デバイス用極微細配線形成プロセスの現状’ ,齊藤丈靖,電気化学会第90 回大会,(2023年3月)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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