利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23HK0062

利用課題名 / Title

金属系結晶性材料の力学特性と微細組織の関係                   

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

アルミニウム合金, 再結晶, 析出, EBSD,電子顕微鏡/ Electronic microscope,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

安藤 哲也

所属名 / Affiliation

室蘭工業大学 大学院工学研究科 しくみ解明系領域 先進マテリアル工学ユニット

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

池田 賢一

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-302:電界放出形走査電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本課題は、金属系結晶性材料の力学特性と内部組織の関係を明らかにしようとするものである。本年度は、Al-Mn合金の再結晶と析出に関する研究について報告する。 非熱処理型合金に分類されるAl-Mn合金は、飲料缶ボディ材や熱交換器材料等で用いられており、加工熱処理によって強度や加工性に優位な組織を形成させて実用化している。この加工熱処理工程の中でも焼きなましにより生じる組織形成を明らかにすることは重要である。特に本合金では、Mnの固溶限が低いことにより、焼きなまし中に析出物の形成と母相の回復・再結晶が同時に生じるため、組織形成の理解は複雑になる。本研究では、熱間圧延を施したAl-Mn合金の焼きなましに伴う組織形成について、析出と再結晶に着目して評価を行い、特に熱間圧延温度の影響について調査した。

実験 / Experimental

本研究では、1050アルミニウム合金相当の純アルミニウムに1 mass%のMnを添加した合金をDC鋳造により作製し出発材とした。鋳造材を熱間圧延終了温度が300℃、400℃および500℃となるように圧下率80%の熱間圧延を施した。以降、熱間圧延温度の違いにより、それぞれ、HR300、HR400およびHR500と示す。各熱間圧延材を大気中、400℃の条件で種々の時間の焼きなましを施した。各試料について、ビッカース硬さ試験ならびに導電率測定を実施した。ビッカース硬さ試験は、荷重0.5 kgf、押し込み時間15 sの条件で実施した。各熱間圧延後試料、焼きなまし試料の組織観察は、圧延方向および圧延面法線方向とともに垂直なTD方向垂直面(TD面と示す)に対して行った。FE-SEMを用いた反射電子像(BSE)観察ならびに、電子線後方散乱回折(EBSD)法による結晶方位解析を実施した。使用したFE-SEMは、JEOL JSM-6500FおよびJEOL JSM-7200Fである。また、EBSD解析には、TSLソリューションズ製OIM DCならびにOIM Analysisを用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

各熱間圧延後試料を400℃で焼きなましした後のビッカース硬さと導電率の変化を確認したところ、熱間圧延温度によって異なる挙動を示した。特にHR300とHR400では、緩慢再結晶挙動を示すことがわかった。熱間圧延後試料をFE-SEM/BSEで観察したところ、HR300では、析出物はほとんど観察されなかったが、HR400では亜粒界上に、HR500では亜粒界だけでなく粒内にも析出物の存在が確認された。その後の焼きなましによって、析出物の分布状態が変化したが、ビッカース硬さが低下すると同時に析出物の体積分率が増加する様子が確認できた。FE-SEM/EBSD解析の結果、熱間圧延組織から徐々に回復・再結晶組織に変化することが示された。長時間の焼きなましを施した試料の解析結果より、HR300では粗大な再結晶粒が観察されたが、HR400やHR500ではファイバー組織が残存していることが明らかになった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の一部は、公益財団法人軽金属奨学会の助成を受けて実施されました。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Takuya Hashimoto, Effect of Grain Boundary Characters on Precipitation Behavior and Local Deformation Behavior in Al–Mg–Si Alloy, MATERIALS TRANSACTIONS, 64, 1959-1968(2023).
    DOI: 10.2320/matertrans.MT-M2022217
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 青野竜也、荒木駿佑、安藤哲也、成田麻未、吉田英雄、池田賢一、田湯善章 溶体化処理後の冷却速度がAl-Zn-Mg合金の時効特性に及ぼす影響 軽金属学会第144回春期大会 香川大学 2023.5.14
  2. 大谷友飛、池田賢一、三浦誠司、冨田高嗣、岡田裕二、古川雄一 時効処理を行ったAl-Si-Cu系ダイカスト合金の力学特性に及ぼすチル層の影響 2023年度日本鉄鋼協会・日本金属学会両北海道支部合同サマーセッション 室蘭工業大学 2023.7.14
  3. 谷藤晶、池田賢一、三浦誠司、高田健 Al-Mg-Si系合金のクリープ変形挙動に及ぼす時効析出の影響 日本金属学会 2023年度高温材料の変形と破壊研究会 仙台市 2023.9.5
  4. 谷藤晶、池田賢一、三浦誠司、高田健 動的析出による熱処理型アルミニウム合金のクリープ変形挙動への影響 軽金属学会北海道支部 2023年支部講演大会 苫小牧工業高等専門学校 2023.10.28
  5. 荒木駿佑、青野竜也、安藤哲也、成田麻未、吉田英雄、池田賢一、田湯善章 Al-Zn-Mg合金の時効特性に及ぼす溶体化処理後の温度制御の影響 軽金属学会第145回秋期大会 東京都立大学 南大沢キャンパス 2023.11.11
  6. 大谷友飛、池田賢一、三浦誠司、冨田高嗣、岡田裕二、古川雄一 時効処理を施したADC12アルミニウム合金の力学特性に及ぼすチル層の影響 軽金属学会第145回秋期大会 東京都立大学 南大沢キャンパス 2023.11.11
  7. 青野竜也、荒木駿佑、安藤哲也、成田麻未、吉田英雄、池田賢一、田湯善章 Al-Zn-Mg合金の時効析出挙動に及ぼす溶体化処理条件の影響 軽金属学会第145回秋期大会 東京都立大学 南大沢キャンパス 2023.11.11
  8. 谷藤晶、池田賢一、三浦誠司、高田健 熱処理型アルミニウム合金の時効析出がクリープ変形挙動に及ぼす影響 軽金属学会第145回秋期大会 東京都立大学 南大沢キャンパス 2023.11.12
  9. <Invited> Ken-ichi Ikeda, Takuya Hashimoto, Seiji Miura Local deformation behavior near grain boundaries in age-hardenable aluminum alloy 7th International Indentation Workshop (IIW7) University of Hyderabad, India 2023.12.19
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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