利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.03】【最終更新日:2023.11.13】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NR0006

利用課題名 / Title

酸化反応を基軸とした有機合成反応および触媒開発

利用した実施機関 / Support Institute

奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

酸化反応,キナゾリン,アミン,触媒反応


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小川 昭弥

所属名 / Affiliation

大阪公立大学研究推進機構先端有機合成化学講座

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

野元 昭宏

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

森本 積,片尾昇平,西川嘉子,山垣美恵子,上久保順子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NR-504:LC/TOFMS高分解能飛行時間型質量分析装置
NR-501:マトリックス支援レーザーイオン化Spiral飛行時間型質量分析計
NR-302:微小単結晶X線構造解析装置
NR-502:二重収束型質量分析計


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

酸化反応は医薬品や高分子材料の合成など、多くの有機化合物の合成に利用され、工業化学プロセスの約30%を占めると言われており、必要不可欠な反応である。しかし、従来法では、重金属試薬や過酸化物などの毒性や爆発性を有する酸化剤を過剰に使用することが多く、副生する多量の廃棄物の無害化処理に膨大なコストが必要となるなどの問題があった。特に近年のグリーンケミストリーの観点から、副生物が水のみである酸素のような酸化剤、さらには、メタルフリー条件での反応などが注目されており、これらの反応が達成されれば理想的な酸化プロセスとなる。本研究では、エルロチニブやドキサゾシンなどの抗がん剤に見られる重要な骨格の一つであるキナゾリン骨格について、酸化適合性が可能か確認するとともに、ラジカル反応のリン化合物への適用性についても検討した。

実験 / Experimental

酸素バルーンを付けた20 mL二口ナスフラスコに、記載量の2-アミノベンジルアミン (1)、サリチル酸誘導体触媒、ベンジルアミン (2)、溶媒、BF3·Et2Oを順に加え、90 ℃のオイルバスで記載時間加熱攪拌した。反応終了後、アセトンを用いて生成物を回収し、溶媒を留去した後、真空乾燥させ、1HNMR測定 (CDCl3) を行い、NMR収率を算出した。その後、単離精製については、カラムクロマトグラフィーを実施した。充填剤に活性アルミナを用い、展開溶媒をiso-hexane : AcOMe = 3 : 1で精製をおこなった。生成物については、奈良先端大学の各種高分解能飛行時間型質量分析装置および微小単結晶X線構造解析装置を用いることで分子構造が明らかとなった。

結果と考察 / Results and Discussion

本反応について、まず、溶媒、温度、時間を検討したところ、溶媒はDMSO、温度は90 ℃、反応時間は48時間が良好な結果を与えた。そこで触媒量についてさらに実験を精密化した結果をTable 1にまとめる。触媒を加えずに反応を実施したところ、目的物 (3) の収率は 14% であった (entry 2)。これは、DMSOが酸化剤としてアミン酸化を促進していることが予想されるが、サリチル酸触媒添加時と比べて収率が大きく低下しており、触媒の有効性が示された。常圧大気下での実験では、目的物が57%で得られた (entry 3)。窒素雰囲気下で反応を実施したところ、目的物はほとんど得られなかったことから、本反応では酸素による酸化過程が重要な経路の一つであることが推察された (entry 4)。三フッ化ほう素ジエチルエーテル錯体を用いずに反応を実施すると収率が 44% に低下したことから、ルイス酸である三フッ化ほう素ジエチルエーテル錯体は本反応の進行を促進していることが示唆された (entry 5)。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Table 1


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の、森本積准教授、西川嘉子技術職員、片尾昇平技術職員、山垣美恵子技術補佐員の御協力により推進されました。深く御礼申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Yuki Yamamoto, Diphenyl Diselenide-Assisted Radical Addition Reaction of Diphenyl Disulfide to Unsaturated Bonds upon Photoirradiation, Molecules, 28, 2450(2023).
    DOI: 10.3390/molecules28062450
  2. Yuki Yamamoto, Metal-Free One-Pot Multi-Functionalization of Unsaturated Compounds with Interelement Compounds by Radical Process, Molecules, 28, 787(2023).
    DOI: 10.3390/molecules28020787
  3. Yuki Yamamoto, Innovative green oxidation of amines to imines under atmospheric oxygen, Organic & Biomolecular Chemistry, 20, 9503-9521(2022).
    DOI: 10.1039/D2OB01421A
  4. Yuki Yamamoto, Photoinduced Synthesis of Bisphosphinated Quinoxalines via Radical Cyclization ofo‐Diisocyanoarenes with Diphosphines, Chemistry – An Asian Journal, 18, (2023).
    DOI: 10.1002/asia.202201269
  5. Yuki Yamamoto, Metal-Free Synthesis of 2-Substituted Quinazolines via Green Oxidation of o-Aminobenzylamines: Practical Construction of N-Containing Heterocycles Based on a Salicylic Acid-Catalyzed Oxidation System, Frontiers in Chemistry, 9, (2022).
    DOI: 10.3389/fchem.2021.822841
  6. Yuka Kimura, Photodynamic therapy using mannose-conjugated chlorin e6 increases cell surface calreticulin in cancer cells and promotes macrophage phagocytosis, Medical Oncology, 39, (2022).
    DOI: 10.1007/s12032-022-01674-3
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 小川昭弥, “ヘテロ原子の特性を活かした反応開発” 有機合成化学協会関西支部 有機合成新春講演会, 令和5年1月25日
  2. 藤原孝翼,山本結生,田中遼,野元昭宏,小川昭弥, “リン資源の有効活用を指向した配位性リン分子の環境調和型合成法の開発” 日本エネルギー学会関西支部第67回 石油学会関西支部 第31回 合同研究発表会,令和4年12月2日
  3. 小川昭弥, “反応開発におけるヘテロ元素の特性” 近畿化学協会ヘテロ原子部会第3回懇話会,令和5 年3月13日
  4. Tomohiro WATADA, Akihiro NOMOTO, Masato MASUDA, Hiromi KATAOKA, Shigenobu YANO, Shintaro KODAMA, Akiya OGAWA,Anti-Cancer Assessment of Bacteriochlorin Derivatives and Introduction of Heavy Metal Atoms, 第31回金属の関与する生体関連反応シンポジウム,2022年6月18日 国内会議
  5. Ayako SHIMMASU, Akihiro NOMOTO, Masato MASUDA, Hiromi KATAOKA, Shigenobu YANO, Shintaro KODAMA, Akiya OGAWA,Syntheses of Sugar-Conjugated Chlorin Derivatives Introduced Heavy-Atom or Peptide,第31回金属の関与する生体関連反応シンポジウム, 2022年6月18日 国内会議
  6. Akihiro Nomoto, Ayako Shimmasu, Hiromi Kataoka, Shigenobu Yano, Akiya Ogawa,Synthesis of Sugar or Amino Acid Ester-Containing Compounds for Medical Materials,The 27th International SPACC Symposium, 2022年12月10日(Online),招待 国際会議
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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