【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23HK0005
利用課題名 / Title
金属材料の照射損傷組織の発達過程のモデリング
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
耐環境・放射線合金, 照射損傷,電子顕微鏡/ Electronic microscope,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐藤 裕樹
所属名 / Affiliation
広島工業大学 工学部 知能機械工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
阿部陽介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
大久保賢二,谷岡隆志,柴山環樹,坂口紀史,中川祐貴,大多亮,横平綾子,岩崎純子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射下その場観察により,鉄と銅に形成される格子間原子集合体の一次元(1D)運動過程を調査するとともに,1D運動が集合体の形成と成長に与える影響を明らかにすることを目的としている.今年度は銅の格子間原子集合体の一次元(1D)に対する溶質原子の影響を調査した.
実験 / Experimental
公称純度6Nの銅に溶質スズ原子(原子サイズ因子 +83.40%) を100, 300, 1000, 3000 appm添加した4種類の合金をアーク溶解により作製した.これら合金から次の2つの方法で照射用試料を作製した.1) インゴットから切り出した小片を圧延して厚さ約0.1 mmのシートとし,そこから3 mmφディスクを打ち抜き,ひずみ取り焼鈍(950℃,1時間)を行った『標準(STD)試料』.2) インゴットから切り出した数ミリ角の小片に焼鈍(950℃,1時間)を行なったのち,放電加工と電解研磨により厚さ約0.1 mmのシートを作製し,そこから打ち抜いた3 mmφの『バルク熱処理(BA)試料』.それぞれ電解研磨を行なって透過電子顕微鏡用薄膜試料とした.超高圧電子顕微鏡(北海道大学JEM-ARM1300)を用いて加速電圧1250kVで電子照射を行い,導入される格子間原子集合体の形成,成長と一次元(1D)運動をその場観察し,観察窓を通して外部カメラで動画として記録した.照射温度は室温(300 K),照射強度は0.007 dpa/sとした.撮影した動画から,1D運動距離や1D運動頻度(集合体1個あたり単位時間あたりの1D運動の平均回数)などを測定した.なおSTD試料の実験は過去に実施済みで,今年度はBA試料の実験を追加し両者を比較した.
結果と考察 / Results and Discussion
すべての試料において電子照射開始直後に格子間原子集合体が形成された.それらは電子照射下で通常静止していたが,瞬発的にその位置が移動する『一次元 (1D) 運動』が不規則に生ずるのが観察された. BA試料では,スズを100appm添加した試料ですでに,リファレンス試料に比べて1D運動距離の分布が短くなっていた.添加濃度を増やすと,分布がさらに短い側にシフトした.一方,STD試料では300 appmまでは溶質スズ原子の効果はみられず,1000 appm以上で1D運動距離の分布が短くなる効果がみとめられた. これまでの実験から,純銅に標準熱処理(厚さ約0.1 mmの試料の熱処理)を行うと格子間集合体の形成促進と成長抑制,さらに1D運動の抑制が生じることがわかっている。一方でバルク熱処理(数ミリ角のブロック試料の熱処理)では著しい影響はみられない.標準熱処理では何らかの不純物原子が導入され、それらが上記の影響を与えたと解釈している. 今回,銅−スズ合金のBA試料で実験を行いSTD試料と比較し,銅−スズ合金でも標準熱処理により1D運動が抑制されることが確認された.またBA試料を用いることでその影響を受けずに溶質スズ原子の効果を抽出することができた.純銅に観察される間歇的な1D運動は、入手した材料に最初から含まれる残留不純物や熱処理によって導入される素性不明の不純物によるものと解釈してきたが、今回は100appmという低濃度の溶質スズ原子でも1D運動の抑制が起こることが確認された.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
超高圧電子顕微鏡を用いて電子照射した銅-スズ合金に観察された格子間原子集合体の1D運動距離の分布をスズ濃度と試料作製方法(BA:バルク熱処理,STD:標準熱処理)で比較したもの.照射温度は室温(300 K),照射強度は0.007 dpa/s.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 岡原 駿平, 田尾 哲哉, 田川 悠星, "銅の格子間原子集合体の一次元運動に対する溶質原子添加の効果", 広島工業大学卒業論文, 2024年2月8日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件