利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.02.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT0327

利用課題名 / Title

超伝導マイクロ波共振器を高性能化する超伝導体材料の探索

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

量子効果デバイス/ Quantum effect device,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,光学顕微鏡/ Optical microscope,量子コンピューター/ Quantum computer,超伝導/ Superconductivity


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

藤田 裕一

所属名 / Affiliation

産業技術総合研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大塚 照久

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-085:物理特性測定装置(PPMS)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

  近年,次世代大規模計算機のハードウェア技術の有望な候補である,超伝導体をベースとした量子ビットの研究開発が国内外で活発に行われている.超伝導量子ビットの高性能化・高集積化に向けて,ジョセフソン接合や超伝導マイクロ波共振器の材料となる超伝導体薄膜を高品位に形成することが重要である[1, 2].超伝導体薄膜の高品位形成プロセスの実現に向けて,作製した薄膜の電気伝導特性を検証することが必須となる.今回,均一な薄膜構造の形成に有利な純金属(Nb, V, Ta)をベースとした,高配向性を有する超伝導体金属材料薄膜の電気伝導特性を,国立研究開発法人産業技術総合研究所のナノプロセシング施設の装置を利用して検証したので報告する.

実験 / Experimental

  Si(001)基板の表面の自然酸化膜層をバッファードフッ酸を用いて除去した後,スパッタリング法により,Si(001)基板/Nb(t nm)バッファ/V(200 nm) (t = 5, 20)構造を形成した.その構造上に5 nmのTaキャップ層を形成した.X線回折法により,t = 5 nm,20 nmのいずれの試料においても,Nb, V, およびTa層が高配向性を有していることを確認している.各試料の薄膜構造の電気伝導特性を,国立研究開発法人産業技術総合研究所のナノプロセシング施設の装置を用いて検証した.スクライバーを用いて,各試料をおよそ10 mm × 5 mmの大きさに切断した後,物理特性測定システム(PPMS)専用の試料ホルダーに取り付け,ワイヤーボンダーを用いて試料への配線を行った.配線完了後,ホルダーをPPMSに投入し,直流4端子測定により薄膜構造の電気抵抗の温度依存性を測定した.

結果と考察 / Results and Discussion

  図1(a)に,t = 5 nm,20 nmの試料の電気抵抗(R)の温度(T)に対する変化を示す.いずれに試料においても,超伝導転移を生じていることが確認された.図1(b)に,図1(a)のデータから得られるRの各Tにおける変化量(dR/dT)の温度に対する変化を示す.dR/dTは明確なピークを有しており,ピークにおけるTを超伝導転移温度Tcと定義すると,t = 5 nm,20 nmの試料のTcはそれぞれ5.22 K, 6.34 Kとなった.Nb, V, およびTaのバルク試料のTcはそれぞれ~9.3 K, ~5.3 K, および~4.48 Kであり,またエピタキシャルV薄膜のTcの値として~5.4 Kが報告されていることから[3],薄膜構造全体のRに関して,t = 5 nmの試料ではV層のRの寄与が支配的となり,t = 20 nmの試料についてはNb層のRの寄与により,Vのバルクやエピタキシャル薄膜よりTcが大きくなることが示唆された.したがって,Nbバッファ/V/Taキャップ構造において,構成材料の超伝導特性を反映した電気伝導特性が得られた.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. Nb(t nm)/V(200 nm)/Ta(5 nm)構造(t = 5, 20)の(a) R vs T, および(b) dR/dT vs T.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

Reference
[1] A. Megrant et al., Appl. Phys. Lett. 100, 113510 (2012).
[2] C. J. K. Richardson et al., Supercond. Sci. Technol. 29, 064003 (2016).
[3] M. Gutsche et al., Thin Solid Films 248, 18 (1994).
Acknowledgements
本研究(の一部)は,文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(課題番号:JPMXP1223AT0327)の支援を受けた.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る