【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23AT0136
利用課題名 / Title
スピン軌道トルクを用いた磁化制御に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
産業技術総合研究所 / AIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
不揮発性メモリ,MRAM,スピン軌道トルク,磁気トンネル接合素子,スピントロニクスデバイス/ Spintronics device,スピン制御/ Spin control,電子線リソグラフィ/ EB lithography,スピントロニクス/ Spintronics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
日比野 有岐
所属名 / Affiliation
産業技術総合研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
佐藤 平道
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
スピン軌道トルクを用いた磁気ランダムアクセスメモリ(SOT-MRAM)の実用化を目指すためには、書き込み動作の駆動源となるスピンホール材料の開発が重要な要素となる[1-4]。本研究では大きく2つの研究項目を調査した。利用者は、所属センターにてアモルファス状態のW-Ta-B合金を用いることで高い熱処理耐性とメモリ書き込みの省電力動作に直結する巨大なスピンホール効果を両立したスピンホール材料の開発をした。本研究では、このW-Ta-B合金をスピンホール材料として搭載したSOT-MRAM素子の試作および書き込み・メモリ特性の評価を行った。
実験 / Experimental
電子線描画装置を用いて、SOT-MRAMのメモリセルに相当する50x200nmから100x300nm程度のサイズを有する磁気トンネル接合素子を作製した。試作では熱酸化膜付きSi基板(20mm□)上に成膜した以下2種類の磁気トンネル接合薄膜を用いた(括弧内はnm単位の膜厚):
1. W-Ta-B (8) / Co-Fe-B (1.8) / MgO / Co-Fe-B (2) / W (0.15) / Co-Fe (2) / Ru (0.85) / Co-Fe (2.4) / Ir-Mn (7) / Ru (3) / Ta (1) / Ru (1.5) / Pt (2)
2. W-Ta-B (8) / Co-Fe-B (1.8) / MgO / Co-Fe-B (2) / W (0.15) / Co-Fe (2) / Ru (0.85) / Co-Fe (2.4) / Ru (3) / Ta (1) / Ru (1.5) / Pt (2)
2サンプル構造の違いは磁気参照層構造を強くスピンする役割を担うIr-Mn合金層の有無および熱処理温度である(1は360℃、2は400℃)。試作したSOT-MRAM素子はスピンホール材料面内に電流パルスを印加することで書き込み動作を、磁気トンネル接合に電圧および微小電流を印加し、磁気抵抗を測定することでメモリ特性および書き込みの判定を行った (図1)。
結果と考察 / Results and Discussion
試作したSOT-MRAM素子の磁気抵抗曲線および電流書き込み曲線を図2に示す。両サンプル構造共に、磁気抵抗比100%を超える明瞭な磁化反転の挙動を示している。また、特筆すべきは書き込み電流密度が2~5x106 A/cm2程度とこれまでの別スピンホール材料での報告値[1,5,6]と比べ低いことである(表)。これは本スピンホール材料の巨大スピンホール効果によるものである。また、反転電流密度のパルス幅依存性から本試作素子の記録保持時間を決定する熱安定性指数を算出したところ、45以上を有していることが判明し磁気抵抗比の高さと合わせて高いメモリ性能を有することが判明した[7]。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1:SOT-MRAM素子の概念図および試作したSOT-MRAM素子の光学像
図2: 試作構造1(黒)および2(赤)における磁気抵抗曲線(aとb)と電流書込み曲線(cとd)。電流パルス幅は1msである。
表:各スピンホール材料における書き込み電流密度、磁気抵抗比、熱処理温度の比較および目標値。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
[1] C. F. Pai et.al, Appl. Phys. Lett. 101,
122404 (2012).
[2] H. Honjo et.al,
IEEE Int. Electron. Devices Meet. (2019), pp. 28.5.1-28.5.4
[3] K. Garello et.al, IEEE Int. Memory Workshop (IMW) (2019),
pp.101-1104.
[4] K. Kumar et.al,
Phys. Rev. Appl. 16, 064009 (2021).
[5] S. V. Aradhya et.al, Nano Lett. 16, 5987-5992 (2016).
[6] L. Liu et.al, Science 336, 555 (2012).
[7] Y. Hibino et.al, Adv. Elec. Mater. DOI: 10.1002/aelm.202300581
・謝辞
[1] JST-CREST 「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」(課題番号:JPMJCR18T3)
[2] JST-未来社会創造事業「スピントロニクス光電インターフェースの基盤技術の創成」(課題番号:JPMJMI20A1)
[3] JSPS-科研費 基盤研究B 「磁性材料・構造を利用したスピンオービトロニクスの新展開」(課題番号:23H01477)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yuki Hibino, Highly Energy‐Efficient Spin‐Orbit‐Torque Magnetoresistive Memory with Amorphous W─Ta─B Alloys, Advanced Electronic Materials, 10, (2023).
DOI: 10.1002/aelm.202300581
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Y. Hibino, T. Yamamoto, T. Gokita, T. Taniguchi, D. Chiba, and S. Yuasa, "Observation of Interlayer Chiral Coupling in Nano-scale Magnetic Tunnel Junctions" 応用物理学会秋季学術講演会、令和5年9月25日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件