利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT0079

利用課題名 / Title

ミニマルアルミスパッタ装置で形成したAl膜の評価

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ミニマルファブ,エレクトロデバイス/ Electronic device,スパッタリング/ Sputtering


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

野田 周一

所属名 / Affiliation

産業技術総合研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

郭 哲維

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-070:X線回折装置(XRD)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 クリーンルームを不要とする局所クリーン化技術を持ち、ハーフインチウエハを標準規格として、1チップから製造可能な究極の少量多品種デバイス生産に対応するミニマルファブ[1]では、TiNメタルゲートSOI CMOS LSIデバイスの実用化検討の最終段階に入りつつある[2,3]。今回、プロセス性能向上を目的として標準プロセスで利用しているミニマルAlスパッタ装置の膜質の評価を行ったのでその結果を報告する。

実験 / Experimental

 ミニマルAlスパッタ装置は、HiPIMS(High Power Impact Magnetron Sputtering)であり、パルス状の高電圧DC放電を利用しており、非常に強い(密度の高い)スパッタ被膜が形成されるのが特徴であるが、半導体デバイスプロセスでは適用例はない。これは、高電圧DC電源が大型化してしまうのが主な理由であるが、ミニマル装置は小さいため、電源容量を小さくするのが可能であるためこれが実現した。今回の放電条件は、パルス幅10 μs、5 kHz、Arガス圧力5 Paである。ミニマルファブ標準プロセスにおけるAl配線は、Al-1%Si合金ターゲットを用いている。成膜したAl-Si膜は、メタルスパッタとしては高圧の5 Paでの放電であるにもかかわらず、緻密で光反射率の高い良好な膜が得られているが、これはHiPMSを用いた効果であると考えている。しかし、結晶粒サイズが大きすぎ、粒界に間隙が観察されることが、その後のプロセスでの懸念材料(レジスト残渣、吸湿性など)となっていた。
 粒径の過度な成長は、現状装置での基板冷却機構が不完全なため、スパッタ時の基板温度上昇が原因と考えその影響を調べた。現状で基板温度を直接計測することが困難であったため、スパッタ時のパワーと基板温度の間に相関があると考え、スパッタ放電時のパワーと時間を変化させて、ほぼ同等(300 nm)のAi-Si膜を形成した後、高解像SEMおよびXRDで結晶構造の比較を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

 図1は、HiPIMS放電で、パワーを変化させたときのターゲット(カソード)表面にかかる電流、電圧特性を示す。放電パワーを変化させたとき、電圧の変化は小さく、主に電流の変化が大きいことが分かった。現在の標準条件(146 W)と、これに対して、ほぼ半分の69 Wと35 Wの3条件で約300 nmの膜を形成できる時間スパッタを行いサンプルを作製した。
 図2は、3種類のサンプルの高解像SEMによる表面、および断面観察結果を示す。Al表面は、やや大き目な結晶粒に成長しており、結晶粒界に間隙が生じている様子が観察されるが、3種のサンプルでの差異はよくわからなかった。
 図3は、3種類のサンプルのXRD測定結果を示す。(a)は、入射角0.5°のGI(Grazing incident)-XRDの結果を、(b)はシンメトリーの2θ/ωスキャンの結果を示す。(a)の結果より、パワー(基板温度)の違いによる結晶相の違いは認められなかった。(b)の結果より、3種のサンプルには、結晶粒サイズに(特に(111)強度)に違いが見られた。この時、単純にパワーに伴い結晶粒が成長しているのではなく、温度と加熱(放電)時間の相互の効果で、結晶粒成長が生じているような結果となった。
 今回、基板温度による結晶粒成長の明確な結果が導き出されなかったが、実際の基板温度計測により、その関係性、プロセス改善方針が得られることと考えられ、今後も評価を継続する。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 Alスパッタ時の放電特性



図2 各スパッタ条件における結晶粒状態のSEMによる比較



図3 各スパッタ条件における結晶粒状態のXRDによる比較


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] 原 史朗、クンプアン ソマワン, 応用物理, 83, 380 (2014).
[2] https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20190510 /pr20190510.html.
[3] 野田周一, 他, 第80回応用物理学会秋季学術講演会, 19p-E304-12 (2019). 


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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