【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.01】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NR0021
利用課題名 / Title
リチウムイオン電池の「反応型添加剤」の作用メカニズム解明
利用した実施機関 / Support Institute
奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
リチウムイオン電池、表面修飾、添加剤,二次電池/ Secondary battery,電子分光/ Electron spectroscopy,コンポジット材料/ Composite material
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
増田 康平
所属名 / Affiliation
東京農工大学工学府化学物理工学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
玉山 日向子
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
河合 壯,淺野間 文夫,石原 綾子,大野 智子,家 仁美,高下泰子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度と高い電圧を有しており、充放電サイクルによる性能劣化の少ない優れた蓄電デバイスであるが、これを車載用途などさらなる応用に展開していくためには、より高温での劣化防止や、さらなる低抵抗化などへの課題に対応していく必要がある。一方で、リチウムイオン電池は充放電試験後に解体すると、空気中の水分や酸素の影響を大きく受けて変性してしまうことが知られている。このため、各手法を電池性能の向上につなげるためには、電池内部で生じる現象を「そのままの状態」で分析することが必要となっている。 申請者は、リチウムイオン電池の塗工性を損なわず、電池性能の向上を図る手段として、新しい反応型添加剤の添加、化学的・物理的なグラファイト修飾等を検討しており、特に、リチウムイオン電池内でグラファイト表面の微量官能基を直接修飾する新しい添加剤「反応型添加剤」を提案している。これらをリチウムイオン電池に適用した際に、電極表面の不働態層(SEI)がどのような影響を受けるかを調べ、リチウムイオン電池性能との関係性を明らかにする。電池内の状態を変性させずに保持したまま詳細に分析することで、電池特性を向上させるための負極表面修飾手法の開発を目指す。
実験 / Experimental
リチウムイオン電池の性能を向上させるために、リチウムイオン電池に充填する電解液に添加剤を加え、電池内で生じる表面反応をチューニングする手法が提案されている。本課題においては、我々の開発している反応型添加剤が表面反応に与える影響を詳細に調べるため、充放電試験を行った後のリチウムイオン電池のXPSを測定していただいた。ただし、リチウムイオン電池の材料は、酸素や水分と反応してしまうため、通常のXPS測定では、材料が変性してしまう。これを徹底して防ぐため、まず本学では充放電測定を行った電池を低露点(–70 ℃以下)・低酸素濃度(10ppm以下)の不活性雰囲気グローブボックス内で開封・梱包し、NAISTに送付した。これを受け取ったNAIST側においても、不活性雰囲気グローブボックス内で開梱していただき、グローブボックス内の雰囲気を閉じ込めて測定に供することのできるトランスファーベッセルを用いて、酸素・水分曝露を徹底的に避けながらXPSの測定を行っていただいた。その他、リチウムイオン電池の容量増加や新しい材料の可能性を探るため、高容量シリコンをグラファイトに析出させた材料、グラファイト代替材料としての長尺カーボンナノチューブ、高容量アルミニウムに機能性ポリマーの表面修飾を行った新材料のXPSのデータも取得していただいた。
結果と考察 / Results and Discussion
反応型添加剤の導入による変化を検証したところ、電気化学的にもdQ/dV解析によって差があることが明らかになり、またXPSでの差も確認し、添加剤がリチウムイオン電池の負極表面のSEI層の形成に影響を与えていることを明らかにした。
電気化学的にSiを析出させたサンプルにおいては、XPSの結果から、含まれるSiとOの比は2:1であり、SiO2よりもSiリッチな層が形成されていることが明らかになった。電池容量として、初期放電容量が20%程度向上したことを確認し、グラファイト上に析出したSiが容量増加に寄与していることが考えられる。
長尺CNT膜はメンブレンフィルターを除いた後も、20 MPa程度の破断応力を示し、自立膜として得ることに成功した。一方で、XPSの結果から、電気化学的酸化の際に、長尺CNT上にCOOH基およびCOO基等の酸性官能基が付与されており、これが電池性能を損なう可能性があるため、還元作用を行う必要が示された。
さらに、アルミニウムの表面にCVDによりCを含むシリカ層が形成されていることがXPSの結果から明らかになり、グラフトポリマー修飾の足掛かりとなる層が形成された材料の作製に成功したことを確認した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業の支援により、 奈良先端科学技術大学院大学で実施された。大変丁寧にご対応いただいた、石原様、大野様、淺野間様、河合先生、連携マネージャーの清水先生、事務局の家様、高下様に感謝申 し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件