利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.01】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NR0006

利用課題名 / Title

次世代高速通信に向けた先端半導体パッケージ用高機能液状封止材料の開発

利用した実施機関 / Support Institute

奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

エポキシ樹脂,ポリイミド,密着性,VUV処理,X線光電子分光(XPS(硬X線を含 む))/ X-ray photoelectron spectroscopy,異種材料接着・接合技術,3D積層技術,電子分光/ Electron spectroscopy,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology,3D積層技術/ 3D lamination technology,コンポジット材料/ Composite material,高周波デバイス/ High frequency device,エレクトロデバイス/ Electronic device,先端半導体(超高集積回路)/ Advanced Semiconductor (Very Large Scale Integration)


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

齊藤 丈靖

所属名 / Affiliation

大阪公立大学大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻 化学工学分野 材料プロセス工学グループ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

白樫陽菜

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

石原綾子,浅野間文夫

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NR-401:多機能走査型X線光電子分光分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 近年、AIやIoTなどの進歩に伴い第6世代移動通信システム(6G)が注目されているが、6Gでは100~300 GHzを適用するため伝送損失が生じやすい問題がある1)。伝送損失は絶縁材料の誘電損失と配線の表面粗さが主要因であり、半導体パッケージの封止材料には低誘電特性が要求される。一般に、高分子材料に低誘電特性を付与すると、金属間や樹脂間での密着性が低下する問題があり、表面改質等を組み合わせることで密着性を確保する必要がある。樹脂の表面改質方法は、湿式処理と乾式処理に大別されるが、前者は環境や人体への影響が懸念される薬液を用いており、近年、低環境負荷で生産性も高い乾式処理が注目されている。 本研究では光量による制御が可能な真空紫外(Vacuum Ultra Violet:VUV)光(波長172nm)処理を標準エポキシ樹脂、低誘電性エポキシ系樹脂、低誘電性マレイミド系樹脂に対して適用し、各種の表面物性を評価した。

実験 / Experimental

 以下3種類の樹脂、1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(828US)を主剤とするフェノール系の2-アリルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物(MEH-8000H)【標準エポキシ樹脂】、2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(828US)を主剤とし4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を硬化剤とした酸無水物系エポキシ樹脂に、イミドモノマーを溶解して低誘電化した樹脂【低誘電性エポキシ系樹脂】、3)マレイミドを溶解して低誘電化した樹脂【低誘電性マレイミド系樹脂】を作成した。図1(a)~(d)に各樹脂成分の構造式を示す。 Min-Excimer(ウシオ電機, SUS713)を用いてVUV照射した。強度は6.98 mW/cm2、照射距離は1.45 mmである。照射前後での試料表面の濡れ性を接触角計、表面化学種を赤外分光全反射測定法(ATR-FTIR)とX線光電子分光法(XPS)でそれぞれ評価した3)

結果と考察 / Results and Discussion

3VUV照射時間と接触角の関係
  各樹脂の接触角の照射時間依存性を図2に示す。VUV未照射で低誘電性エポキシ74°、低誘電性マレイミド63°、標準エポキシ89°であったが、VUV15min照射で全ての樹脂で接触角が20°付近まで低下し、ほぼ飽和した。VUV処理では基材表面にOH基やCOOH基などの親水基が付与される報告通り2)、本研究で用いた樹脂上に親水性基が導入され、濡れ性が向上したと考えられる4)
VUV照射後の低誘電エポキシ樹脂およびマレイミド樹脂の表面官能基分析
 VUV未照射とVUV60min照射後の各樹脂のATR-FTIRスペクトルを図3に示す。標準エポキシでは、樹脂の構造に由来する3200~3700cm-1付近のO-H結合の吸収が見られた。低誘電性エポキシでは、硬化剤に用いた4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物の構造に由来する1500~1700cm-1付近のC=O結合の吸収が見られている。低誘電性マレイミドでは、マレイミドの構造に由来する、3000~3500 cm-1付近のN-H結合や1500~1700 cm-1付近のC=O結合の吸収が見られた。VUV照射前後で、標準エポキシではCOOH基に由来する1700 cm-1近傍、低誘電性エポキシと低誘電性マレイミドではOH基に由来する3400cm-1近傍でピークが増加した。各官能基の吸収近傍に引いたベースラインから、領域内のピークの最大値までを吸光度差とし、図4にその経時変化を示す。吸光度差の最大は、標準エポキシが照射60 minで0.056、低誘電性エポキシが照射60 minで0.017、低誘電性マレイミドが照射30 minで0.018であった。 VUVを30 min照射後の低誘電性マレイミド系樹脂のC1sスペクトルを図5に示す。C-C (284.5 eV)、C-O (286.2 eV)、O-C=O (288.4 eV)に由来する成分の寄与となっており、ピーク分離の例を図5に合わせて示す。各ピークの面積比を求めることで各結合の存在比がわかる。 各樹脂のVUV照射前後のC-O/C-C, O-C=O/C-Cの面積比率を表1に示す。C-O/C-C比では、未処理と比べ、VUV60 min照射後では標準エポキシで1.3倍、低誘電性エポキシで1.8倍、低誘電性マレイミドで3.2倍といずれも増加した。O-C=O/C-C比では、標準エポキシで7.6倍、低誘電性エポキシで5.2倍、低誘電性マレイミドで3.1倍と全て増加した。いずれの樹脂もVUV照射によりOH基、COOH基の存在比が増えており、含酸素官能基が導入できた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1.各樹脂成分の構造式



図2.各樹脂の接触角のVUV照射時間依存性



図3.各樹脂の照射前後のATR-RTIR



図4.ピーク吸光度差の刑事変化(最大値ーベースライン)



図5.低誘電性マレイミド系樹脂のC1sスペクトル(VUV30 min照射)



表1VUV照射前後のC1sピーク面積値


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

1) H. Tataria et al.Proc IEEE Inst Electr Electron Eng, 109, 1166-1199 (2021)
2) E. Arikan et al.Int. J. Adhes. Adhes., 95, 102409 (2019)
3) Y. Kim et al.Appl. Surf. Sci., 255, 3648-3654 (2009)
4) F. Truica-Marasescu, M.R. Wertheimer, Macromol. Chem. Phys., 206, 744 (2005)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 白樫陽菜,西浦拓海,齊藤丈靖,遠藤真一,石川有紀,岡本尚樹, "UV処理したエポキシ系樹脂の表面官能基評価と異種界面の密着性", マイクロエレクトロニクスシンポジウム2023(名古屋), 2023年9月8日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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