【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.01】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NR0002
利用課題名 / Title
太陽電池用の有機半導体材料の創製
利用した実施機関 / Support Institute
奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
有機半導体、ペロブスカイト太陽電池、高分子正孔輸送材料、塗布成膜,太陽電池/ Solar cell,質量分析/ Mass spectrometry,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,質量分析/ Mass spectrometry,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,電子分光/ Electron spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
奥本 健二
所属名 / Affiliation
株式会社奥本研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
小池 徳貴,淺野間 文夫,西川 嘉子,藤原 正裕,山垣 美恵子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NR-102:400MHz 固体・溶液NMR
NR-501:マトリックス支援レーザーイオン化Spiral飛行時間型質量分析計
NR-703:微細形状測定装置
NR-701:示差走査熱量計・示差熱熱重量同時測定装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ペロブスカイト太陽電池は、軽量・フレキシブル化が可能であり、加えて塗布製造による低コスト化が見込めることから研究開発が進められている。ペロブスカイト太陽電池は少量が生産されて実用検証が進んでいるが、その普及のためには、材料の低コスト化と太陽電池性能の向上が課題である。 その課題の解決に対して、ペロブスカイト発電層の材料開発のみならず、発電層に組み合わせる正孔輸送材料や電子輸送材料の開発が鍵を握っている。 当社は、これまでの開発でペロブスカイト太陽電池用の高分子正孔輸送材料poly(triarylamine) (図1記載、以下PTAAと略す)の低コスト合成法の開発と製品化に成功している。 本研究開発では、塗布工程による薄膜の積層を可能とするため、熱硬化性のビニル基をPTAAに導入した新規な高分子材料V-PTAA(図1記載)を設計・合成し、その化学的な同定、電子物性、熱物性の評価を行うとともに、熱硬化性の評価を行った。
実験 / Experimental
1.V-PTAAモノマーの化学同定は、400MHz 1H-NMRと質量分析によって行った(ARIM設備)。
2.合成した高分子材料は、400MHz 1H-NMRによって化学同定を行った(ARIM設備)。
3.合成した材料の分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって評価した(当社設備)。
4.合成した材料のHOMO、LUMO準位を吸収スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリーによって決定した(当社設備)。
5.合成した材料の熱量分析を示差走査熱量測定によって、熱硬化温度とガラス転移温度の観測を行った(ARIM設備)。
6.得られた材料をトルエンに溶解させてスピンコート製膜したのちに、微細形状測定装置によって膜厚を測定した(ARIM設備)。
7.成膜した膜を加熱して硬化させ、その後にスピンしながらトルエンでリンスして膜が維持できるか確認した(当社設備)。
結果と考察 / Results and Discussion
1.モノマーは、400MHz 1H-NMRと質量分析によって同定された。
2.合成した材料を1H-NMRにて評価を行った結果、目的とする化学構造と矛盾がない化学シフトと積分数のNMRシグナルが観測され(図2)、目的物が合成されたことを支持する結果を得た。ビニル基に由来する特徴的な3種のピークも確認でき、ビニル基の存在が支持された。
3.合成した材料の分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって評価し、数平均分子量14,600、重量平均分子量 22,600、分子量分散 1.55と評価された。
4.合成した材料のHOMO、LUMO準位を吸収スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリーによって評価し(図3、図4)、HOMO 5.19eV, LUMO 2.26eVと決定された。同じ評価方法でPTAAを評価するとHOMO 5.31eV, LUMO 2.23eVであり、PTAAよりも電子ドナー性が若干高い材料であることが分かった。
5.合成した材料の熱量分析を示差走査熱量測定によって評価したが、熱硬化温度やガラス転移温度は明確に観測されなかった。
6.得られた材料をトルエンに溶解させてスピンコート製膜したのちに、微細形状測定装置によって膜厚を測定したところ、100nm程度の均質な膜が形成できていることが分かった。
7.成膜した膜を加熱したところ、150℃以上で熱硬化が進んで不溶化し、熱硬化後にトルエンでリンスしても膜が維持されることが分かった。
以上から、本開発において合成したV-PTAAは、狙い通りの化学構造を有する高分子材料であり、従来の太陽電池用の正孔輸送材料PTAAと同程度のHOMO準位を有し、均質な膜が形成できるとともに、熱硬化性を有することが分かった。
なお、V-PTAAのペロブスカイト太陽電池正孔輸送層への適用は現在検討中である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 PTAAとV-PTAAの化学構造
図2 V-PTAAの1H-NMRの結果
図3 V-PTAAとPTAAのTHF希薄溶液における紫外-可視吸収スペクトル
図4 V-PTAAとPTAAのサイクリックボルタモグラム(溶媒: ジクロロメタン、化合物濃度: 6mg / 5ml、支持電解質: TBAP 0.1 M、参照電極: Ag/AgNO3 0.01M CH3CN溶液、掃引速度: 100mV/sec)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・1H-NMR測定では、淺野間様にご協力をいただきまして、感謝申し上げます。
・質量分析では、西川様と山垣様にご協力をいただきまして、感謝申し上げます。
・示差走査熱量測定では、藤原様にご協力いただきまして、感謝申し上げます。
・微細形状測定装置による膜厚測定では、小池様にご協力をいただきまして、感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件