利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.01】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NR0001

利用課題名 / Title

新規有機合成法の開発

利用した実施機関 / Support Institute

奈良先端科学技術大学院大学 / NAIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

質量分析, 元素分析、酵素類似体、アリールプロパルギルフマル酸アミド、メタルフリー反応,質量分析/ Mass spectrometry,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance,質量分析/ Mass spectrometry,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

山崎 祥子

所属名 / Affiliation

奈良教育大学 理科教育講座

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

森本積,西川嘉子,山垣恵美子,浅野間文夫

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NR-502:二重収束型質量分析計
NR-704:全自動元素分析装置
NR-504:LC/TOFMS高分解能飛行時間型質量分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 最近の我々の研究で、アリールプロパルギルフマル酸アミドをDMSO中で160 °Cで加熱するとアロイル基trans置換ピロリジン誘導体が主生成物として得られることを報告した1)。系内の水が関与した環化反応が起こったと考えられる。アリールプロパルギルエテントリカルボン酸アミド誘導体の反応ではDMSO中で80 °Cでアロイル基cis置換ピロリジン誘導体が得られた。これらの反応は、溶媒中で加熱するだけの、メタルフリーの効率的な反応条件である。
 本研究では、酸素類似体の反応を試みた。アリールプロパルギルエテントリカルボン酸エステル誘導体の反応を試みたところ、DMSO中で80-110 ℃ でアロイル基3,4-cis置換テトラヒドロフラン誘導体が30-54%の収率で得られたエステルとアミド誘導体の反応性の違いについて考察した。
 さらにアルキン環化-水和反応による6員環合成も試みた。ベンジリデンマロン酸エステル誘導体では、DMSO中160 ℃まで加熱したが、効率よく環化-水和による6員環は得られなかった。一方、より反応性が高いと考えられるベンジリデンメルドラム酸誘導体では、ベンズアルデヒド誘導体のメルドラム酸との縮合反応条件下で縮合反応、ヘテロDiels-Alder, 脱アセトン、水付加、脱炭酸が連続的に進行した含酸素6員環を含む三環性化合物が主生成物として得られた。

実験 / Experimental

 未知化合物である生成物の構造決定のために1H, 13C-NMR, 赤外吸収, 質量分析スペクトルおよび元素分析を行った。質量分析スペクトルは、JEOL JMS-700, AccuTOF LC-plus 4G装置を、元素分析はPerkinElmer-2400ⅡCHNS/Oを用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

 含酸素5員環や6員環骨格は、機能性物質や生理活性物質に多く存在するため、その効率的な新規合成法の開発は重要である。最近、アリールプロパルギルフマル酸アミドをDMSO中で160 ℃で加熱するとアロイル基trans置換ピロリジン誘導体が主生成物として得られることを報告した(Fig. 1) 1)。系内の水が関与した環化反応が起こったと考えられる。アリールプロパルギルエテントリカルボン酸アミド誘導体の反応ではDMSO中で80 °Cでアロイル基cis置換ピロリジン誘導体が得られた。これらの反応は、溶媒中で加熱するだけの、メタルフリーの効率的な反応条件である。
 本研究では、酸素類似体の反応を試みた。アリールプロパルギルフマル酸エステルのDMSO中の加熱反応では160 ℃まで加熱したが、原料回収または分解物のみが得られた(Fig.2)。アリールプロパルギルエテントリカルボン酸エステル誘導体の反応を試みたところ、DMSO中で80-110 ℃でアロイル基3,4-cis置換テトラヒドロフラン誘導体が30-54%の収率で得られた(Fig.3)。エステルとアミド誘導体の反応性の違いについて、DFT計算を行ったところ、環化の活性化エネルギーは、含窒素と含酸素環であまり変わらない。一方、トリエステル基質のコンフォメーションについて、環化前駆体s-trans体が直線型s-cis体に比べ6.80 kcal/mol不安定である。前駆体のコンフォマーの酸素と窒素誘導体の安定性の違いに起因している可能性がある(Fig.4)。
 さらにアルキン環化-水和反応による6員環合成も試みた。ベンジリデンマロン酸エステル誘導体では、DMSO中160 ℃まで加熱したが、効率よく環化-水和による6員環は得られなかった(Fig.5)。一方、より反応性が高いと考えられるベンジリデンメルドラム酸誘導体では、ベンズアルデヒド誘導体のメルドラム酸との縮合反応条件下で縮合反応、ヘテロDiels-Alder、脱アセトン、水付加、脱炭酸が連続的に進行した含酸素6員環を含む三環性化合物が主生成物として得られた(Fig.6)。Fig.1-6参照

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1



Fig.2



Fig.3



Fig.4



Fig.5



Fig.6


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献: (1) Wang, Z.; Yamazaki, S.; Morimoto, T.; Takashima, H.; Nakaoku, A.; Shimizu, M.; Ogawa, A. Org. Biomol. Chem., 2023, 21, 2172.
謝辞: 共同研究者の森本積先生、質量分析をして頂きました西川嘉子様、山垣美恵子様、元素分析をして頂きました淺野間文夫様,片尾昇平様に感謝致します。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Naokazu Yoshikawa, 1,10‐Phenanthroline‐Based Octahedra Induced by Protonation of a Nitrogen Atom: Structures and Emission Properties, ChemistrySelect, 8, (2023).
    DOI: doi.org/10.1002/slct.202303561
  2. Shinichi Yamabe, A DFT Study on the Tautomerization of β‐Alanine, ChemistrySelect, 9, (2024).
    DOI: doi.org/10.1002/slct.202304052
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. S. Yamazaki,* Z. Wang, T. Morimoto, A. Ogawa, "Intramolecular cyclization reactions of arylpropargyl amides of electron-deficient α,β-alkenyl carboxylates and related compounds" ACS Fall Meeting 2023, Division: [ORGN] Division of Organic Chemistry Session Type: Oral-In-person DIVISION: Division of Organic Chemistry, SESSION: New Reactions & Methodology, PAPER ID: 3904573, August 16, 2023.
  2. S. Yamazaki,* Z. Wang, T. Morimoto, A. Ogawa, "Intramolecular Cyclization Reactions of Arylpropargyl Amides of Electron-deficient α,β-Alkenyl Carboxylates and Related Compounds" The 15th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (IKCOC-15), Nov. 22, 2023. Poster Presentation No: PB(D)16.
  3. 杉浦弘隆, 王智超, 山崎祥子, 小川昭弥, 森本積, "電子欠乏性α,β-アルケニルカルボン酸アリールプロパルギルエステルのアルキン環化‐水和反応によるテトラヒドロフラン環合成" 日本化学会第104春季年会,2024年3月19日, E1143-2am-06.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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