利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1084

利用課題名 / Title

マイクロ流体デバイスの作製

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

MEMS/NEMSデバイス、フォトニクスデバイス,リソグラフィ/ Lithography,光リソグラフィ/ Photolithgraphy,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,ダイシング/ Dicing,ボンディング/ Bonding,流路デバイス/ Fluidec Device,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

合田 圭介

所属名 / Affiliation

東京大学大学院理学系研究科化学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

島本 直伸,太田悦子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-800:クリーンドラフト潤沢超純水付
UT-505:レーザー直接描画装置 DWL66+2018
UT-604:高速シリコン深掘りエッチング装置
UT-900:ステルスダイサー
UT-906:ブレードダイサー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ラマン活性ナノ粒子(Raman-active nanoparticle: Rdot)は多色バイオイメージングやフローサイトメトリーなどへの応用が期待されてきたが、Rdotからのラマン散乱信号が微弱であることが課題であった。そこで、Cyanostar分子を活用してラマン活性ナノ粒子(Raman-active nanoparticle: Rdot)を合成した。合成したRdotのラマン散乱信号強度が従来のRdotより向上したことを実証するため、フォトリソグラフィ・DRIE・パッケージングにより、マイクロ流路構造を持つチップを作製した。作製したチップに流し込みながら各Rdotからのラマン散乱信号を流路中で測定することで、新たに合成したRdotのラマン散乱信号が従来法で合成されたRdotよりも増強されたことを実証した。

実験 / Experimental

まず、武田クリーンルーム(CR)でSiウェハとホウケイ酸ガラスウェハを陽極接合した基板のSi側にレーザー直接描画装置で流路構造を描画した。描画の際はCR利用者Wikiに従いSPMで洗浄、HMDSを3,000 rpm, 30秒でスピンコートし110 ℃で1分ベークしたのち、AZP4620レジストを3,000 rpm, 60秒でコートし、110 ℃・2分ベーク、レーザー直接描画装置で20 mmヘッドで300 mWのパワーにて描画した。続いて高速シリコン深掘りエッチング装置により描画されたパターンから実際の流路構造を作製した。エッチングの際はCR利用者Wiki内記載のSPT-HRレシピにてエッチングした。さらに、基板をダイシングし、ホウケイ酸ガラスを陽極接合してパッケージングすることでチップとした。CR外でこのチップにサンプル導入・排出チューブや固定用治具などを組み合わせることでマイクロ流体デバイスとし、このデバイスに合成したRdotを流しながらラマン散乱信号を測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

Figure 1に作製したマイクロ流体デバイスを示す。上述の加工に際して利用したレシピはCR利用者Wikiに記載のレシピを利用しているが、このレシピにより最小幅50 μm程度の構造が問題なく描画できた。また、描画したパターンのエッチングの際もCR利用者Wikiに記載のレシピを利用したが、深さ200または300 μmの貫通構造が深掘りエッチングにより問題なく作製できた。こうしたマイクロ流路によりRdot1個からのラマン散乱信号をフロー中で連続・高速で取得することができた。Figure 2に測定したRdotの合成手法とそのラマン散乱スペクトルを示す。Figure 2に示したように、Cyanostar分子を加えてRdotを合成し、Rdot1個当たりのラマン散乱信号強度を定量的に評価することで、強度が増大したことを実証できた。このようにして改良したRdotは、ラマン散乱信号に基づいたフローサイトメトリーにおけるスループットや測定により得られる情報量の向上に寄与するものである。また、作製したマイクロ流体デバイスはRdotの観察だけでなく、ラマン散乱信号を利用したフローセルソーターとして用いることもできる。こうしたことから、将来的にはこのマイクロ流体デバイスを活用することでよりハイスループットかつ情報量に富んだフローサイトメトリーが可能になる、またこうしたフローサイトメトリーにより目的とする細胞を選択的にリアルタイムで選抜するなど、Rdotのさらなる生物学的応用が期待される。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Figure 1. 作製したマイクロ流体デバイス。(a)サンプル導入・排出チューブや固定用治具などと組み合わせた状態のチップ。(b)チップ上に作製した流路の構造。画像中明るいグレーの部分が流路としてエッチングされている。画像左側から流れてきたサンプルのラマン散乱信号を白矢印の位置で測定する。本チップを用いて行われてはいないが、上下の流路からの水流により分取対象のサンプルを右側の細い3本の流路の上または下側に流すことで、細胞などの分取も可能である。



Figure 2. Cyanostar分子を活用したRdot合成の概要。(a)今回ラマン散乱信号強度増強を実証したRdotの合成手法。予めCyanostar分子を取り込んだナノ粒子に色素分子を取り込ませることで合成する。(b)Cyanostar分子の当量ごとのラマン散乱信号強度の比較。色素1分子に対しCyanostarを3分子加えることでラマン散乱信号が約4倍増強されることを実証した。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[用語説明]
・ラマン活性ナノ粒子(Raman-active nanoparticle: Rdot)
所望のラマン散乱スペクトルを持つ分子を取り込んだナノ粒子。典型的なRdotは直径数十nm程度のポリスチレン粒子である。ポリスチレン粒子は表面を様々に修飾することができ、プローブとして例えば抗体修飾等と組み合わせれば、細胞の特定の部位のみにナノ粒子を結合させることでラマン散乱スペクトルによる細胞の観察が可能となる。従来細胞の観察には蛍光プローブが用いられてきたが、ラマン散乱信号を利用したプローブを使うことでより多色での観察が可能となる。一方でラマン散乱信号は蛍光に比べて微弱であり、ハイスループットな測定には信号強度の増強が課題とされてきた。
[外部競争的研究資金]
MEXT Quantum Leap Flagship Program (JPMXS0120330644)
UTokyo IPC
Mitsubishi UFJ Technology Development Foundation
JSPS Core-to-Core Program


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Ryo Nishiyama, Boosting the Brightness of Raman Tags Using Cyanostar Macrocycles, Analytical Chemistry, 95, 12835-12841(2023).
    DOI: 10.1021/acs.analchem.3c01958
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. R. Nishiyama, K. Furuya, P. McCann, L. Kacenauskaite, B. W. Laursen, A. H. Flood, K. Hiramatsu, and K. Goda, Chemical Imaging Gordon Research Conference, Easton, USA, Aug. 2023, “Development of Macrocycle-Mediated Resonance-Enhanced Raman Tags”
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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