利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.07】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1081

利用課題名 / Title

細菌のべん毛巻き付き運動解析のためのマイクロ流体デバイス

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

電子線リソグラフィ/ EB lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,ダイシング/ Dicing,流路デバイス/ Fluidec Device,MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,細胞・組織再生誘導材料/ Materials for inducing cell and tissue regeneration,細胞培養デバイス/ Cell Culture Device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

菅 哲朗

所属名 / Affiliation

電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

島田 佳季

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-500:高速大面積電子線描画装置
UT-604:高速シリコン深掘りエッチング装置
UT-900:ステルスダイサー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

細菌が,尾部のべん毛をスクリュー状に回転させて推進力を得ていることは,広く知られた知見である.近年,べん毛を利用した推進方法として,自身のべん毛を体に巻き付けてドリル状の形態をとって移動する新しい運動様式が発見された.これは,昆虫の共生細菌の一部に見られ,宿主であるホソヘリカメムシの消化管にある直径1 μmの狭窄部分を通過するためと考えられており,発見者らによりFlagellar wrapping(ドリル運動)と呼称されている.消化管の狭窄部を通過できるのはドリル運動可能な細菌に限られており,狭窄部が共生細菌を抽出する機械的なフィルタとして振る舞うと推測されている.一方で,細菌が周辺環境に応じて適応的に運動を切り替えている可能性もあり,その詳細は未解明である.解明のためには,狭窄部を通過する際の共生細菌の振る舞いを観察・解析することが不可欠である.従来,昆虫を解剖して得た消化管を利用していたが,昆虫ごとの個体差によって解析結果がばらつく問題があり,客観的定量的な解析が難しかった.定量性を高めるには,寸法のばらつきが無い人工的な環境での観察が必要である.人工環境を用いた例として,ガラスプレートに共生細菌を含む培養液を挟んで運動を観察する方法や,エラストマー材料 (Polydimethylsiloxane , PDMS) を用いた数100 μmの流路で細菌の運動を観察する方法がある.しかし,これらの観察方法では,運動環境が消化管内狭窄部と比較して格段に広く,目標とする細菌の運動を解析することはできない. そこで本研究では,PDMSを用いたソフトリソグラフィにより,昆虫の消化管の狭窄部と同スケールの流路を用いた解析方法を提案する.

実験 / Experimental

図1にバクテリア運動解析用の流路構造模式図を示す。微小流路においては,流路寸法の微細化に伴い,一般的に慣性力に対して粘性力が非常に大きくなる,すなわち非常にレイノルズ数が低い状態となる.したがって,細菌の運動に対する抵抗は,粘性抵抗が支配的となる.この場合,ドリル運動の様態が,細菌と流路側壁に存在する,レイノルズ数の低いねばついた流体をドリルで掻き出す効果が期待されるので,他の推進方法と比較して推進に有効である可能性がある.そこで,ドリル運動を行う細菌と行わない細菌を同一の流路に流し,推進速度を比較する.これにより,運動様態と流路の狭さとの関係を検証する. 

結果と考察 / Results and Discussion

マイクロ流路デバイス内に細菌を閉じ込めることで,べん毛で様々な推進運動を行う細菌の様子を観察することに成功した.また,マイクロ流路内における推進速度の比較を行うと,ドリル運動を行う細菌は行わない細菌よりも推進速度が非常に速い傾向にあった.このことから,微小空間においてはドリル運動が有効に働くことが示唆される.昆虫の消化管の狭窄部を模したマイクロ流路デバイスを提案し,実デバイスによる検証を行った.ドリル運動を行う細菌と行わない細菌の推進速度を比較して,狭い空間におけるドリル運動の推進速度を評価した.ドリル運動は狭窄部のような狭い流路に対して効果的であることがわかった.今後,実際の昆虫の体内のpHやO2濃度勾配等,よりIn Vivoに近い環境の再現や,別種の細菌の運動解析や比較を行う.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 バクテリア運動解析用の流路構造模式図


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Yoshiki Shimada, Aoba Yoshioka, Daisuke Nakane, Tetsuo Kan:MICROFLUIDIC CHANNELS FOR ANALYSIS OF FLAGELLAR WRAPPING MOTION OF BACTERIA, The 27th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (µTAS 2023), Katowice, Poland, October 15-19, 2023.
  2. 吉岡 青葉, 菅 哲朗, 菊池 義智, 中根 大介:共生細菌はドリル運動で狭小通路を突破する, 第61回日本生物物理学会年会, 1GG1415, November 14-16, 2023.
  3. 島田 佳季*, 吉岡 青葉, 中根 大介, 菅 哲朗; 細菌のべん毛巻き付き運動解析のためのマイクロ流体デバイス, 第14回マイクロ・ナノ工学シンポジウム, 7P2-PN-32, November 6-9, 2023.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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