利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1022

利用課題名 / Title

エレクトロスプレーイオン源の作製

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

リソグラフィ/ Lithography, 膜加工・エッチング/ Film processing and Etching、宇宙機、推進器、エレクトロスプレースラスタ,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,ダイシング/ Dicing,光リソグラフィ/ Photolithgraphy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

鷹尾 祥典

所属名 / Affiliation

横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

松川晃己,青木里奈,中島惟子,保野文音

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

藤原誠,水島彩子,渡邉史朗

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-505:レーザー直接描画装置 DWL66+2018
UT-604:高速シリコン深掘りエッチング装置
UT-900:ステルスダイサー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

微細かつ高精度な推力制御が求められるミッションに用いる宇宙機の推進機として、エレクトロスプレースラスタが注目されている。この推進機は表面に多数のエミッタを有するエミッタチップと対向するエクストラクタ電極から構成される。両電極間に数 kVの電圧を印加することでエミッタ先端に電界集中を発生させ、エミッタ先端部のイオン液体からイオンを抽出し、静電的に加速し排気することで推力を得る。精密な推力制御を行うためには、一様な形状を持つエミッタアレイから、安定した電流の引き出しが求められる。本研究ではエミッタ先端へのイオン液体輸送改善のための溝の付いた構造のエミッタを、グレースケールリソグラフィを利用することによりエミッタ先端部以外で電界集中が発生しないような形状としてシリコンウエハ上に均一に作製することを目的とした。

実験 / Experimental

レーザー直接描画装置(DWL66+)により4インチシリコンウエハ表面に塗布したフォトレジストのグレースケールリソグラフィを行う。現像後、このレジストをエッチングマスクとして高速シリコン深堀りエッチング装置(MUC-21 ASE-Pegasus)を利用しBoschプロセスによる異方性エッチングを行う。溝付き構造のエミッタとするため、Fig. 1(a)が示すようにエッチングマスクは星形の錐とする。レジストを削りながらシリコンをエッチングすることで、マスク形状をシリコンに転写する。レジストが消失するまでエッチングを行う。エミッタ作製後、ステルスダイサー(DFL 7340)を利用し、ウエハからエミッタチップへの切り出しを行う。

結果と考察 / Results and Discussion

Fig. 1(a) にエッチングマスクの形状、Fig. 1(b) にグレースケールリソグラフィを利用して作製したエミッタのSEM画像、Fig. 1(c) に等方性エッチングと異方性エッチングを組み合わせて作製した従来のエミッタのSEM画像を示す.エッチング開始直後はレジストのエッチングが進まないためマスク形状を完全にシリコンに転写することはできなかったが、マスク形状をFig. 1(a) のようなドーム型にすることで、エミッタ側面の突起からエミッタ先端への稜線がなだらかとなり、エミ ッタ側面の突起への電界集中の軽減が期待できるようなエミッタ形状となった。なお、エミッタ周囲の 4 つの穴はエミッタチップの外部からイオン液体を供給するための供給穴である.イオン液体供給穴は、エミッタを作製した後、裏面から異方性エッチングを行うことで作製した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1. (a) Schematic of the etching mask. SEM images of (b) the emitter using grayscale lithography and (c) our conventional emitter.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究成果の一部はJSPS科研費JP21H01530、キヤノン財団、JST創発的研究支援事業JPMJFR2129、JAXA戦略的開発研究費(工学)による助成を受けたものです。SEM観察は横浜国立大学機器分析評価センターにて実施されました。東京大学ARIM微細加工部門武田先端知スーパークリーンルームの藤原誠様、水島彩子様、技術スタッフの皆様に感謝致します。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Koki Matsukawa, Emission measurements and in-situ observation of ionic liquid electrospray thrusters with longitudinally grooved emitters, Journal of Electric Propulsion, 2, (2023).
    DOI: https://doi.org/10.1007/s44205-023-00057-8
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Koki Matsukawa, Yoshinori Takao, "Improvement of Grooved Needle Emitter Performance for Ionic Liquid Electrospray Thrusters" The 34th International Symposium on Space Technology and Science, 令和5年6月9日
  2. Momoko Naemura and Yoshinori Takao, "Time-of-Flight Measurements of Ion Beam Compositions in Electrospray Thrusters," 34th International Symposium on Space Technology and Science, Jun. 5-9, 2023, Kurume City Plaza, 2023-b-42.
  3. Yoshinori Takao, "Ionic Liquid Electrospray Ion Sources for Space Propulsion," The 243rd ECS Meeting, May 28-Jun. 2, 2023, Boston, MA, USA, Z02-2719.
  4. 松川晃己, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタにおける溝付きエミッタ形状の改善およびイオンビーム特性評価」, 令和5年度 宇宙輸送シンポジウム, 2024年1月18-19日, 宇宙科学研究所, STEP-2023-049.
  5. 中島惟子, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタのための逆電位アナライザ計測系の構築」, 令和5年度 宇宙輸送シンポジウム, 2024年1月18-19日, 宇宙科学研究所, STEP-2023-050.
  6. 青木里奈, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタを対象とした直接推力測定系の構築」, 第67回宇宙科学技術連合講演会, 2023年10月17-20日, 富山国際会議場・ANAクラウンホテル富山, P007.
  7. 中島惟子, 鷹尾祥典, 「逆電位アナライザを用いたエレクトロスプレースラスタのイオンビーム特性評価」, 第67回宇宙科学技術連合講演会, 2023年10月17-20日, 富山国際会議場・ANAクラウンホテル富山, P008.
  8. 苗村桃子, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタを対象とした飛行時間型質量分析の計測系依存性」, 第67回宇宙科学技術連合講演会, 2023年10月17-20日, 富山国際会議場・ANAクラウンホテル富山, P009.
  9. 苗村桃子, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタを対象とした飛行時間型質量分析系の精度評価」, 日本航空宇宙学会 第54期定時社員総会および年会講演会, 2023年4月13-14日, 日本科学未来館, 2D02(JSASS-2023-1080).
  10. 青木里奈, 鷹尾祥典, 「エレクトロスプレースラスタの直接推力測定」, 日本航空宇宙学会 第54期定時社員総会および年会講演会, 2023年4月13-14日, 日本科学未来館, 2D03(JSASS-2023-1081).
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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