【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.21】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT1012
利用課題名 / Title
赤外線励起による溶剤の分子内振動の緩和と溶剤乾燥に効果的な赤外線吸収波長帯の解明
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
波長制御エミッタ,メタマテリアル/ Metamaterial,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,電子線リソグラフィ/ EB lithography
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
戸谷 剛
所属名 / Affiliation
北海道大学大学院工学研究院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
小田島 聡,棚田 慶崇
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
藤原 誠,澤村 智紀
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
水の効果的な乾燥を目的に,水が吸収する赤外線を照射して分子内振動を連続的に励起し,分子内振動が分子間振動へ変換(緩和)される挙動を,波長制御エミッタとFT-IRを用いて測定した。波長制御エミッタには,水の変角振動(波長:6.06 μm,波数:1650 cm-1 )付近の赤外線を放射する金属ー絶縁体ー金属(MIM)構造を持つメタマテリアルを採用した。測定面の温度を同じにして測定したところ,ヒーターを用いた熱伝導による加熱よりも,MIM構造を用いた波長制御エミッタによる加熱の方が,水の蒸発につながる水分子の分子間振動が強く励起されることが測定された。
実験 / Experimental
MIM構造の作製手順と利用した機関をFig. 1に示す。北海道大学のコンパクトスパッタでCrとAuをスパッタし,原子層堆積装置(ALD)でAl2O3 を成膜した後,東京大学で電子線描画を行い,北海道大学で現像を行った後,ヘリコンスパッタを用いて,CrとAuをスパッタし,リフトオフすることでMIM構造を作製している。Fig. 2に加熱実験の概念図を示す。MIM構造を用いた波長制御エミッタ(MIMエミッタ)による赤外線加熱では水膜の上方から,ヒーターを用いた熱伝導による加熱では水膜の下方から,測定面の温度が同じになるように加熱した。緩和挙動は,測定面にATR結晶側から入射するFT-IRの赤外線をプローブ光として観測を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
作製したMIM構造の垂直放射率をFig. 3に示す。作製したMIM構造の垂直放射率が,No.1〜4 のサンプルとも,目標とした波長域(6.06 μm付近)で大きくなっていることが分かる。測定面温度が26.0℃のときの純水をリファレンスとして,ヒーターを用いて熱伝導によって水を加熱したとき(測定面温度:50.2 ℃)とMIMエミッタによって水を赤外線加熱したとき(測定面温度:50.2 ℃)の水の相対反射率をFig. 4に示す。Fig. 4からMIMエミッタによる赤外線加熱の方が,水の分子間振動である束縛回転振動の波長域で相対反射率が高くなっていることが分かる。この結果から,測定面温度を同じにした場合,MIMエミッタによる赤外線加熱の方が,ヒーターによる熱伝導による加熱よりも,水の蒸発につながる水分子の分子間振動を強く励起できたといえる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Fabrication process of MIM emitter.
Fig. 2 Schematic of heating test apparatus.
Fig. 3 Normal emissivity of MIM emitter.
Fig. 4 Relative reflectance of water in cases of heating by a heater and the MIM emitter.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
MIMエミッタの作製には,東京大学以外に北海道大学のARIM登録装置を利用しています。東京大学の超高速大面積電子線描画装置を使用するにあたり,東京大学の藤原 誠 様,澤村 智紀 様に大変お世話になりました。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Yoshitaka Tanada, Satoru Odashima, Tsuyoshi Totani, Kazumichi Kobayashi and Yoshio Kondo, "Fabrication of an IR-emitter to excite intramolecular vibrations of water", 36th International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC 2023,Sapporo), November 17, 2023
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件