【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.21】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT1008
利用課題名 / Title
メタレンズの多機能化に向けた研究開発
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
メタレンズ,電子線リソグラフィ/ EB lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,電子顕微鏡/ Electronic microscope,フォトニクスデバイス/ Nanophotonics device,光デバイス/ Optical Device,メタマテリアル/ Metamaterial
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
岩見 健太郎
所属名 / Affiliation
東京農工大学工学部機械システム工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
山田遼太,羽田充利,長谷川篤史
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-503:超高速大面積電子線描画装置
UT-603:汎用高品位ICPエッチング装置
UT-855:高精細電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究開発では,多機能なメタレンズの実現を目的として,遠景・近景同時撮影可能なメタレンズ(以後遠近メタレンズおよび偏光分離機能を持つAlvarez型の可変焦点メタレンズ(以後偏光分離Alvarezメタレンズ)の開発を行った.遠近メタレンズは可視光(波長633 nm)におけるイメージング用のレンズとしての使用を想定したものであり,窒化シリコンの微細加工により製作した.また偏光分離Alvarezメタレンズは,光通信技術への応用を想定して波長1550nm で動作するようアモルファスシリコンを用いて製作を行った.
実験 / Experimental
遠近メタレンズと偏光分離Alvarezメタレンズは,東京大学に設置されている超高速大面積電子線描画装置(F7000S),汎用高品位ICPエッチング装置(NE-550)を使用して製作し,高精細電子顕微鏡(Regulus 8230)で製作評価を行った.製作した遠景近景メタレンズについては東京農工大学に設置されているCMOSカメラで撮像性能の評価を行った.また偏光分離Alvarezメタレンズについても,東京農工大学にて赤外光用のカメラと偏光子を用いて光学的な測定を行い,偏光分離機能と可変焦点機能の双方を確認した.
結果と考察 / Results and Discussion
製作した遠景近景メタレンズについて,被写体を近景距離と遠景距離に配置して実験を行い,両メタレンズの像でそれぞれ, 被写体が鮮明に結像していることを確認した.Fig. 1 にメタレンズのSEM写真を示す.柱幅約200 nm~400 nm高さ1625 nmの柱状の構造体が直径約1 mmの円内に複数配列されている.SEM写真を用いて柱幅測定を行ったところ,設計値に対して柱幅が約80 nm大きく製作されていたたことが分かったため,今後は加工条件の最適化を行い製作精度の向上を目指す.偏光分離Alvarezメタレンズについては,可変焦点機能と偏光分離機能の2つの機能を光学測定で確かめた.前者についてはAlvarezレンズを構成する2つの光学素子の相対変位を変えながら焦点距離を測定し,Fig. 2に示すように理論値に近い可変焦点機能を確認した.また後者については,偏光子を用いて入射光の偏光状態を変化させながらメタレンズの2つの焦点輝度を測定した結果,Fig. 3に示すように2つの焦点が偏光依存性を持つことが分かった.これより,入射光を偏光状態によって分離し,異なる焦点に集光させつつその焦点距離を制御可能なメタレンズの開発に成功した.一方で,偏光分離の程度を表す偏光消光比やレンズの回折性能など効率面から考察すると,製作したメタレンズは理論値に対して十分な性能を示していなかった.今後は測定光学系の位置合わせやナノ構造の製作精度を上げることで,集光効率や偏光消光比の改善が見込まれる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 製作したメタレンズのSEM画像
Fig.2 可変焦点機能の測定結果Alvarezレンズを構成する2枚の光学素子の相対変位によって,焦点距離が変化することが分かる.
Fig.3 偏光分離機能の測定結果入射光の偏光状態に依存して2つの焦点の輝度が変化していることから,偏光を分離して集光していることが分かる.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
超高速大面積電子線描画装置,ドライエッチング装置,電子顕微鏡の利用にあたって細やかにサポートしてくださったARIMスタッフの方々に深く感謝申し上げます.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Mitsutoshi Hada, Polarization-separating Alvarez metalens, Optics Express, 32, 6672(2024).
DOI: 10.1364/oe.516853
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R. Yamada, Gaussian to tophat beam shaping metasurface for visible light, 2023 Seventeenth International Congress on Artificial Materials for Novel Wave Phenomena (Metamaterials), , X-439-X-441(2023).
DOI: 10.1109/Metamaterials58257.2023.10289595
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- ◦Ryota Yamada, Satoshi Ikezawa, and Kentaro Iwami*, ”Gaussian-to-tophat beam-shaping metasurface for visible light using silicon nitride”, 17th International Congress on Artificial Materials for Novel Wave Phenomena(Metamaterials 2023), 12/Sep/2023, Crete, Greece
- ◦長谷川 篤史, 山田 遼太, 小澤 圭介, 阿部 有貴, 田岡 峰樹, 山岸 健, 岩見 健太郎, ”遠景・近景同時撮影可撮能な広角メタレンズの開発" , 第 71 回応用物理学会春季学術 講演会 JSAP EXPO Spring 2024, 2024 年 3 月 22 日-2023 年 3 月 25 日
- ◦羽田 充利, 青木 活真, 阿出川 彪, 池沢 聡, 岩見 健太郎, "偏光分離機能を有する可変焦点メタレンズの開発", Optics & Photonics Japan 2023(北海道大学), 2023年11月28日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件