利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23WS0051

利用課題名 / Title

分極率・分子間相互作用の制御による高屈折率ポリマーの開発

利用した実施機関 / Support Institute

早稲田大学 / Waseda Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

光導波路/ Optical waveguide,フォトニクスデバイス/ Nanophotonics device,エリプソメトリ/ Ellipsometry


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小柳津 研一

所属名 / Affiliation

早稲田大学 先進理工学部 応用化学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

渡辺 清瑚,常川 慶乃,安 澤鑫,針山 すみれ,矢野 智也

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

野﨑 義人

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

WS-026:高性能分光エリプソメータ


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

高屈折率ポリマーは、LEDなど発光デバイスの封止剤やCMOSマイクロレンズに用いられ、発光効率の向上や小型化に貢献する材料である。特に1.8超の屈折率を示す超高屈折率ポリマーは性能向上のためには特に効果的で、従来にSulfurーrich Polymerや重カルコゲン元素を多く含むポリマーが報告されてきた。しかしながら、これら構造は繰り返し単位の分極率が高すぎる故、着色を呈する点が課題とされてきた。申請者らはこの課題に対し、分子間水素結合を形成可能な官能基をポリ(フェニレンスルフィド)の側鎖に導入した誘導体が、自由体積の低減に基づいて超高屈折率・可視透明性を両立できることを明らかにした。本研究ではこの概念の拡張と更なる高屈折率・高アッベ数・高透明性を示すポリマー群の創出を目的とし、新規ポリマー群の合成と湿式プロセスによる薄膜の作製・屈折率評価を行った。

実験 / Experimental

新たな水素結合性高屈折率ポリマーの構造として、6種類のポリチオウレア(図)を分子設計し、重縮合・重付加法により合成した。得られたポリマーは高分子量体(~ 104) かつ非晶性であったことから、Siウエハ上に薄膜をスピンコート可能であった。得られた薄膜の屈折率を分光エリプソメトリーで測定し、分子構造と光学特性の相関を調査した。

結果と考察 / Results and Discussion

ポリチオウレアの屈折率は可視光域で1.7以上であり、アッベ数も約10-20と高い値を示した。スペーサーの構造ごとに詳しく屈折率を比較すると、フルオレンやビフェニルなどのかさ高いスペーサーを用いた場合には屈折率は1.75前後に留まった一方で、分極性の高いスルフィドやm/p-フェニレンを含むポリチオウレアは超高屈折率 (~ 1.8) を示した。別途測定したポリマーの粉末・フィルムの赤外吸収スペクトルにおいて、水素結合性のN-H伸縮振動のピークトップは特にmpPh-PTUの場合に低波数であったことと、ポリマーの密度測定ではmpPh-PTUで最高値 (1.50) を示したことを考慮すると、適度に高い分極率とコンパクト性、直線性を併せ持つ分子構造が、屈折率の向上に大きく貢献することを見出した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 本研究で合成・屈折率測定を行ったポリ(チオウレア)の構造式と略称.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

分光エリプソメトリー測定に際して、技術指導を賜りました野崎義人先生に感謝申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Seigo Watanabe, Diverse Side-Chain Transformation of High Refractive Index Methylthio-Substituted Poly(phenylene sulfide)s, Macromolecules, 57, 2897-2904(2024).
    DOI: doi.org/10.1021/acs.macromol.4c00054
  2. Seigo Watanabe, Polarizable H‐Bond Concept in Aromatic Poly(thiourea)s: Unprecedented High Refractive Index, Transmittance, and Degradability at Force to Enhance Lighting Efficiency, Advanced Functional Materials, , (2024).
    DOI: doi.org/10.1002/adfm.202404433
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 渡辺清瑚, 小柳津研一, “水素結合ネットワークと分極性官能基を併せ持つ超高屈折率ポリチオウレア”, 第72回高分子討論会, 香川, 口頭, 2023年9月28日
  2. 常川慶乃, 渡辺清瑚, 小柳津研一, “高透明・高屈折率を両立するポリ(キシリレンチオウレア)の合成とブレンドによる光学特性制御”, 第72回高分子討論会, 香川, ポスター, 2023年9月28日
  3. 安澤鑫, 常川慶乃, 渡辺清瑚, 小柳津研一, "部分的に縮環構造を導入したポリ(フェニレンスルフィド)誘導体の合成と光学特性", 第13回CSJ化学フェスタ, 東京, ポスター, 2023年10月17日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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