【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1003
利用課題名 / Title
生体組織のソフトハンドリングを可能とするイオン液体添加PVDFアクチュエータ素子
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
MEMS,ソフトアクチュエータ,PVDF,低電圧,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,スパッタリング/Sputtering,MEMSデバイス/ MEMS device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
三田 吉郎
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
山口貴史,中島志温
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-703:8インチ汎用スパッタ装置
UT-711:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2019)
UT-853:簡易電子顕微鏡
UT-900:ステルスダイサー
UT-913:UVレーザープリント基板加工装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
5V以下の低電圧で、自己の寸法と同等の大きい自己形状変形を行うことが出来、ミリメートルサイズでマイクロニュートンの力を発生することができるアクチュエータ素子の研究を行っている。本報告にかかる研究では、イオンゲル液体ならびに高分子ポリマーを用いた新材料をアクチュエータ素子として加工できるプロセス開発に成功し、ベンチマーキングを行い世界最高級のFigure-of-Meritを得られた。
実験 / Experimental
図1に示すように、イオンゲル材料がポリマーならびに外部入力のための平面電極でサンドイッチされた構造をしている。武田先端知ビルスーパークリーンルームにおいて、イオンゲル含有のポリマー材料を調合した。材料は ポリマーとしてPVDF-TrFE(フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体。TrFE25mol%含有)ならびに、イミダゾリウム塩EMIMTFSIを用いた。調製した材料をペトリ皿にキャストして溶媒(アセトン)を蒸発させることで、薄膜シート状のゲルアクチュエータができあがる。動作のための電極製膜としては①銀ナノワイヤを表面に塗布、②スパッタリング装置を用いて金電極を直接薄膜上に製膜という、合計二種類の製膜手法を試みた。いずれの方法も片面にしか製膜できないので、銀ナノワイヤのものは一旦引きはがしてから裏面へ塗布、スパッタリングのものは片面に製膜された二枚の素子を向かい合わせにサンドイッチする方法で両面製膜をおこなった。アクチュエータの外形加工は、武田先端知ビル204号室VDECバックエンド加工室の共用装置「UV プリント基板加工装置 ProtoLaser U4」を用いた。試作デバイスの評価に各種計測装置を用いた。治具の作製には工学部13号館一般実験室の共用装置(CO2レーザーカッター、プリント基板加工装置)も併用した。
結果と考察 / Results and Discussion
図2に、イオンゲルアクチュエータ(図は銀ナノワイヤによる電極デバイス)に電圧を印加した時の形状変化を示す。幅2mm、長さ10mmのリボン状アクチュエータを作り、根元2mmをアクリル製治具で挟み込んでクランプし、根本から電圧を印加した。治具の先端に巻き付くように形状変化していることから、自己の寸法と同等の曲げ能力があることが示された。パフォーマンスに影響があるが、動くか動かないかという定性的判断ではどちらの製膜法でもアクチュエータが動作した。銀ナノワイヤ―電極では最低動作電圧1.5V、金スパッタ電極では最低電圧3Vで動作した。印加電圧あたりの曲率半径をFigure-of-Meritとして計算したところ、図3[1]のように、世界最低電圧(1.5)で、世界最高のFoM値が得られた。この内容をトップジャーナル(JMEMS)に投稿し、掲載された。 また、OHPフィルム(同じくCO2レーザーカッターでカットした)をアクチュエータで押し下げて変形を観測することで発生力を測定すると、60μNという値が得られた。μNという値は、MEMS分野で常用されるマイクロアクチュエータの発生力と比較しても十分大きい値であり、マイクロナノ領域で実際に力を印加して働きかけるために十分な力と、低電圧動作のため余計な電子回路を制御に必要としない(ロジック回路の出力でそのままアクチュエータをコントロールできる)ことから、本アクチュエータは将来の応用に非常に有望であるということが実験的に示された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 イオンゲルアクチュエータの動作原理
図2 イオンゲルアクチュエータの曲げ動作に成功した
図3 世界最低電圧で最高のFoMを達成した
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Takafumi Yamaguchi, Self-Deformable Flexible MEMS Tweezer Composed of Poly(Vinylidene Fluoride)/Ionic Liquid Gel for Electrical Measurements and Soft Gripping, Journal of Microelectromechanical Systems, 31, 802-812(2022).
DOI: 10.1109/JMEMS.2022.3187428
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 山口貴史、東京大学修士論文(2023.02)
- 中島志温、東京大学卒業論文(2023.02)
- 中島志温、山口貴史、安永竣、三田吉郎、「金駆動電極の紫外レーザ直接加工による 任意形状変形イオンゲルMEMSアクチュエータの実現」、第39回電気学会センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム(センサシンポジウム)、徳島、2022年11月14-17日(LateNews賞ファイナリスト)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件