【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT0052
利用課題名 / Title
半導体デバイスにおけるキャリア電子分布の評価
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
EELS, モノクロメータ, キャリア電子、プラズモン,電子顕微鏡/Electron microscopy,電子分光,ナノエレクトロニクスデバイス/ Nanoelectronics device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
川崎 直彦
所属名 / Affiliation
東レリサーチセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
稲元 伸,大塚 祐二
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
治田 充貴
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
半導体デバイスの微細化により、ナノレベルでの局所的なキャリア濃度評価に対する要望が高まっており、それを実現できる実験手法が渇望されている。昨年度の課題支援番号:A-21-KT-0043では、電子エネルギー損失スペクトル(EELS: Electron Energy Loss Spectroscopy)のキャリアプラズモンピークを利用して、薄膜トランジスタ(TFT)の酸化物半導体層のキャリア電子濃度を評価することに成功した。本課題では、SiC-MOSFETの断面試料を用いて同様の測定を実施し、キャリア電子濃度評価だけでなく、キャリア電子の2次元分布を可視化することを試みた。
実験 / Experimental
4H-SiCを用いた金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の断面試料を、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)で作製し、STEM-EELS測定を実施した。半導体側の4H-SiCは高濃度n領域(n+)、p領域、低濃度n領域(n-)で構成され、最も高濃度のn領域でもキャリア濃度は1019 cm-3程度であり、キャリアプラズモンピークは赤外領域に位置すると予想される。通常のEELSではゼロロスピークに埋もれて検出できないような低エネルギー側のスペクトルが必要であるため、モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて加速電圧60 kVで測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
図1に断面ADF-STEM像を示す。ソース・ドレイン(SD)電極直下から基板側へ向かって、n型ドーパント濃度の高いn+領域、p型ドーパント領域、n型ドーパント濃度の低いn-領域が存在し、注入欠陥による回折コントラストとしてSTEM像において認識できる。図2に各領域から得たEELSスペクトルを示す。今回の測定条件においては、ゼロロスピークの半値幅で定義されるエネルギー分解能は60 meV程度であった。スペクトルにおいて、キャリアプラズモンと推測される明瞭なピークは認められない。しかし、図2右のように対数表示にすると、いずれの領域のスペクトルも80 meV付近で傾きが変わり、100 meV付近にショルダー構造が認められるが、n+領域において、ショルダー構造が最も小さい。4H SiCの格子振動モードに帰属される複数のピークが100 meV付近に位置することが知られており、n+領域では不純物の注入欠陥によって結晶性が低下しているために、格子振動のピーク強度も低下していることが示唆される。キャリア濃度を反映するLOPCモード(LOフォノン-プラズモン結合モード)は、格子振動のピークよりもやや高エネルギー側に位置することも知られており、100 meV付近のショルダー構造をさらに詳細に解析する必要がある。バックグラウンド除去やデコンボリューションなどのデータ処理、さらにエネルギー分解能を上げた条件での測定などによる検証が今後の課題である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Cross-sectional ADF-STEM image of the 4H-SiC MOSFET
Fig. 2 low-loss EELS spectra at each region in 4H-SiC.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
測定の際にご指導を頂いた、京都大学化学研究所先端ビームナノ科学研究センター 倉田博基教授、治田充貴准教授に感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件