利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22KT0050

利用課題名 / Title

チタン酸塩鉱物等の微細構造観察

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

チタン酸塩鉱物, セラミック固化体, HAADF-STEM, 結晶構造解析,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中瀬 正彦

所属名 / Affiliation

東京工業大学 科学技術創成研究院

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

倉田 博基,清村 勤

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

蛍石型構造を有するチタン酸塩鉱物の一種であるムラタイト基セラミック固化体を対象材料として、HAADF-STEM像および元素マッピングにより結晶構造中の金属イオン(特にZrなどのイオン半径の大きい原子)分布の観察を試みる。以前の装置利用の際に、主にZrにより形成された100Å周期の超構造が観察されており、今回の実験で超構造の形成メカニズムおよび詳細な原子配列などを明らかにすることができれば希土類元素やアクチノイド(An)を豊富に含有可能なセラミック固化体の合成が期待できる。観察および元素分析には、複雑な原子配列の直接可視化においても実績のあるモノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡を用いることで、カチオンの配列および元素分布について検討した。

実験 / Experimental

市販の粉末試料を所定の量となるように秤量し、混合・焼成した。混合は、通常の乳鉢混合あるいはZrO2ボールを用いた遊星ボールミルにより行い、混合粉末を一軸加圧成型した後、1300-1350℃で焼成することでチタン酸塩鉱物の一種であるムラタイト基セラミック固化体を合成した。合成したムラタイト基セラミック固化体を粉砕し、粉末試料をエタノールに分散した後に上澄み液をマイクログリッド上に滴下し、1 時間乾燥させた後に電子顕微鏡で観察した。また、コンタミが見られる観察試料については事前にイオンクリーナーおよびビームシャワーを用いて試料上に付着した炭化水素系汚染物の除去を実施した。加速電圧は200 keVとし、HAADF-STEM像の観察およびEDSによる元素分析を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

乳鉢混合および遊星ボールミルにより作製したムラタイト基セラミック固化体のHAADF-STEM像を1に示す。乳鉢混合により作製した試料とは異なり、遊星ボールミルにより作製した試料では長周期性を持つ帯状の超構造が観察された。乳鉢混合により作製した試料中にはM3およびM8結晶相が存在したが、どちらの結晶相にも超構造は観察できなかった。先行研究から、帯状の部分はZrが多く存在することがわかっており、この超構造の形成は遊星ボールミルに用いたZrO2ボールからのコンタミによる過剰なZrに起因している可能性が考えられる。
帯状部分の原子配列について詳細に検討した結果(2)、カチオンの配列はM3相の結晶構造と同じであることがわかった。この超構造はM3とは異なる結晶構造により形成されているのではなく、特定の原子座標の占有率(特にZrが占有しやすい8配位の座標)が長周期で変化していることが明らかとなった。
上記とは異なるM3結晶粒子を方向から観察した結果、超構造は観察されなかった(3)。先ほどとは異なる晶帯軸だったために超構造の観察が困難になった可能性は考えられるが、一方で、試料中の過剰なZr量が不十分であったことで超構造を形成していない結晶粒が存在している可能性が考えられる。そうであればZrなどのイオン半径の大きい原子をより多く添加することで超構造を内在するM3結晶粒の割合を増やすことができ、これは単位体積当たりの希土類元素やアクチノイド(An)量のさらなる増加が期待できる結果といえる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (a)乳鉢混合により作製したムラタイト基セラミック固化体のHAADF-STEM像



図1 (b)遊星ボールミルにより作製したムラタイト基セラミック固化体のHAADF-STEM像



図2 超構造(白い帯状部分)のHAADF-STEM像。図中の結晶構造モデルはM3相のカチオン配列を示す。



図3 遊星ボールミルにより作製したムラタイト基セラミック固化体のHAADF-STEM像(晶帯軸:110)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本 研 究 は 、 JAEA 英 知 を 結 集 し た 原 子 力 科 学 技 術 ・ 人 材 育 成 事 業JY210128nnの助成を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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