【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT0039
利用課題名 / Title
ディスプレイデバイスにおける局所光学特定評価
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
EELS, モノクロメータ, 光学特性、カラーフィルタ,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam,電子分光
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
川崎 直彦
所属名 / Affiliation
東レリサーチセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
稲元 伸,大塚 祐二
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
治田 充貴
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年のオプトエレクトロニクスの進展によって発光・撮像素子の小型化、微細化が進み、画素サイズが数mm程度の素子が登場しており、発光、受光部および周辺領域の光学特性評価においても画素サイズ以下での高空間分解能測定が求められている。また、素子において着目箇所が表面から深い場合もあり、断面試料を用いてナノメートルオーダーの空間分解能で光学特性を評価する需要は多い。本課題では、実デバイスの断面試料を作製し、モノクロメータ付STEM-EELSを用いて近赤外~可視領域の光学特性を評価することを試みた。
実験 / Experimental
市販品有機ELディスプレイパネルを解体して、各画素での発光部よりも出射側の箇所を抽出し、図1(a)に示すような断面試料を収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて作製した。カラーフィルタは一般的にレジストと顔料から構成され、有機物を含むため、電子ビーム照射による損傷が懸念される。そのため、電子ビームを走査しながら短時間で測定した多点スペクトルを足し合わせることで、損傷の抑制とS/N比の向上を試みた。具体的には、500 nm2の領域を4 nmの間隔で、各ポイントにおいて18 msecの測定時間でスペクトルを得た。また、可視領域の光学特性を調べるには1 ~ 5 eV 付近のエネルギー領域においてゼロロスピークに干渉しない信号検出が必要であり、モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて加速電圧200 kVで測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(b)に赤色、青色画素のカラーフィルタから得たlow-loss EELSスペクトルを示す。赤色画素では2.4 eV付近、青色画素では1.9, 3.6 eVにピークが認められ、各画素のカラーフィルタの機能と矛盾しない吸収特性を確認できた。さらにEDX測定を実施すると、青色画素ではCl, Cu、赤色画素ではFeが検出された。これらの組成情報も考慮した上で、過去の研究で報告されているEELSスペクトルを参照すると、青色画素における1.9, 3.6 eVのピークはCu(Cl)フタロシアニンのQ帯、B帯[1]であると考えられる。また、赤色画素で2 eV付近から強度が立ち上がり、2.4 eV付近で極大値を持つピークはa-Fe2O3とよく一致した[2]。顔料、レジストに有機物を含む箇所であるが、FIB作製試料を用いても顕著な損傷なく光学特性を評価でき、実デバイスの測定に断面STEM-EELSが有効であると示すことができた。
[1] A. Ruocco, et. al, Phys. Rev. B 67,
155408 (2003).
[2] H. Qiu, et. al, J. Phys. Chem. C 123,
8221 (2019).
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1(a) Schematic diagram and cross-sectional ADF-STEM image of an OLED. (b) low-loss EELS spectra at color filter regions in R and B pixel.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
測定の際にご指導を頂いた、京都大学化学研究所先端ビームナノ科学研究センター 倉田博基教授、治田充貴准教授に感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 川崎 直彦, 稲元 伸, 大塚 祐二, 治田 充貴, 倉田 博基, 日本顕微鏡学会 第79回学術講演会, 令和5年6月26-28日 (ポスター発表申込済み)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件