利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.09】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22KT0035

利用課題名 / Title

Cryo-TEMによるカチオン化リポソームの構造評価

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

カチオン化リポソーム,cryo-TEM,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

吉村 倫一

所属名 / Affiliation

奈良女子大学/研究院自然科学系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

小川哲也

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-401:極低温透過電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

生体膜の主要成分であるリン脂質からつくられるリポソーム(ベシクル)は,内部に薬物やタンパク質を封入できることから,内包物のキャリアとして有用で,薬物送達システムDDSや化粧品などの分野で用いられている。リポソームの安定性や性能の向上を目指して,さまざまな高分子化リポソームが開発されているが,界面活性剤などの両親媒性物質を複合化させたリポソームの研究は少ない。表面が負に帯電したリポソームにカチオン性の両親媒性物質を加えて調製したカチオン化ベシクルは,負に帯電した皮膚や毛髪に吸着し,高効率で内包物を浸透させることができるため,近年注目されている。本研究では,環状リゾホスファチジン酸ナトリウムと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマーから成るカチオン化リポソームの安定性および機能性の向上を目指して,ジェミニ型カチオン界面活性剤(2C12-3)を添加した新規カチオン化リポソームを調製し,構造を低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)を中心に,動的光散乱(DLS),X線小角散乱(SAXS),中性子小角散乱(SANS),ゼータ電位などの測定により調べ,ジェミニ型界面活性剤の有無,濃度,分子構造などの影響について検討した。

実験 / Experimental

環状リゾホスファチジン酸ナトリウムと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマーの混合物にジェミニ型カチオン界面活性剤2C12-3を添加して調製したカチオン化リポソームの観察は、日本電子株式会社製のJEM–2100F(G5)による低温透過型電子顕微鏡(cryo–TEM)を用いて行った。水溶液試料は,マイクログリッドに溶液を滴下し,余分な液を濾紙で吸い取った後,急速凍結装置(REIHERT KF80、Leika)を用いて,液体プロパン(–180℃)中で急冷することで,液体の水をアモルファス氷として固定した。このマイクログリッドを低温に保つと同時に大気に晒して霜が付着しないように,液体窒素中で試料ホルダーに装着後,クライオトランスファー機構を通して鏡筒内に導入し,観察を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

ジェミニ型カチオン界面活性剤2C12-3(0.10 wt%)を添加して調製したカチオン化リポソームのサイズは,DLSより220 nmであり,界面活性剤無添加のカチオン化リポソーム(340 nm)と比べて小さくなった。これより,ジェミニ型界面活性剤の添加は,リポソームの二分子膜を密に充填できることが考えられる。界面活性剤無添加のカチオン化リポソームのSAXSプロファイルには,面間隔の比が1:2のピークが観測され,cryo-TEM画像よりマルチラメラベシクル(MLV)の形成が認められた(Fig. 1 (a))。一方,2C12-3を添加したカチオン化リポソームのSAXSプロファイルには,MLVに特有のピークは見られず,cryo-TEM画像より,ベシクルの膜の層数は少なく,ほとんどが単層ベシクルであることがわかった(Fig. 1 (b))。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Cryo-TEM images for (a) cationized vesicle and (b) cationized vesicle containing 0.10 wt% 2C12-3.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 矢田詩歩,下村澄愛,沼崎英一,平田直之,加藤暢浩,川口春馬,吉村倫一,日本化学会第103回春季年会(東京理科大学・野田キャンパス)2023年3月22日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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