利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22KT0033

利用課題名 / Title

I-CaHAPの微細構造観察

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学 / Kyoto Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ヨウ素アパタイト(I-CaHAP),STEM-EELS,結晶構造解析,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

牧 涼介

所属名 / Affiliation

岡山理科大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

倉田 博基,清村 勤

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究では、ヨウ素アパタイト(I-CaHAP)結晶中のヨウ素の結合様式(I- あるいはIO3-)を明らかにすることを目的とした。構成元素としてヨウ素を含むI-CaHAPセラミックス(Ca5(PO4)3IあるいはCa5(PO4)3IO3)を合成したが、詳細な結晶構造は明らかにされておらず、I-CaHAPの化学的安定性や各種物性について検討するうえでヨウ素がどのように配置(分布)しているかは非常に重要となる。計算科学的手法により、すでに結晶構造モデルの予測は行っているので、実験的にEELSスペクトルを得ることでデータの裏付けになるものと考える。観察および元素分析には、複雑な原子配列の直接可視化においても実績のあるモノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡を用いることで、ヨウ素の結合状態および分布について検討した。

実験 / Experimental

合成したI-CaHAP粉末試料をエタノールに分散し、上澄み液をマイクログリッド上に滴下し、1 時間乾燥させた後に電子顕微鏡で観察を行った。また、コンタミが見られる観察試料については事前にイオンクリーナーおよびビームシャワーを用いて試料上に付着した炭化水素系汚染物の除去を実施した。I-CaHAPの結晶構造については、すでに計算科学的手法により構造モデルの予測を進めており、先行研究において報告された結晶構造とは大きく異なる結果となっている(図1)。これらの結晶構造モデルから算出したEELSスペクトルと、実際に実験的に得られたデータを比較することで計算結果の妥当性が立証可能となる。そこで、微構造評価としてSTEM-EELSによる微細構造観察および原子の結合状態の分析を行った。また、EDSによる元素分析を実施した。I-CaHAP結晶への電子線によるダメージを抑えるため、低加速電圧(60 kV)で観察は行った。

結果と考察 / Results and Discussion

EELSスペクトル測定後のI-CaHAPのSTEM像を図2に示す。電子線を走査したことでI-CaHAP試料に穴が空いており、低加速電圧(60 kV)でもEELSスペクトルを取得する過程で結晶が壊れることがわかった。そこで分析点の間隔をあけて、再度分析を行った。得られたEELSスペクトルを図3に示す。EELSスペクトルは問題なく得られたが、610 keV付近に現れるはずのヨウ素のピーク(M4,5)は確認できなかった。そこで、I-CaHAPの構造内にヨウ素が存在するか確認するため、EDSを用いて元素分析を行った。EDSによる元素分析結果を図4に示す。Ca, PおよびOに加え、IのLα1およびLβ2ピークが観察され、I-CaHAP結晶中にヨウ素が存在することを確認できた。そのため、STEM-EELSによる微構造観察においてI-CaHAP構造中のヨウ素が脱離している可能性があり、電子線によるダメージを受け易いことからもEELSスペクトルの取得は困難であることがわかった。今後は、電子線回折パターンによる構造解析についても検討する予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (a)計算科学および(b)先行研究で予想されたI-CaHAPの結晶構造モデル



図2 EELSスペクトル測定後のI-CaHAPのSTEM像



図3 I-CaHAPおよびCsI(標準物質)のEELSスペクトル



図4 EDSによる元素分析結果


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は、JAEA英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業JY210128nnの助成を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 1. R. Maki, M. Harigai, S. Watanabe, M. Nakase, R. Hamada, H. Asano, T. Sakuragi, H. Kikunaga, T. Kobayashi, “Effective/rapid immobilization of radionuclides from Fukushima decommissioning by spark plasma sintering process,” International Topical Workshop on Fukushima Decommissioning Research, Ibaraki (2022).
  2. 2. 牧涼介, 中瀬正彦, 渡邊真太, 丸山恵史, 菊永英寿, 小林徹, 桜木智史, 浜田凉, 針貝美樹, 朝野英一、福島原子力発電所事故由来の難固定核種の新規ハイブリッド固化への挑戦と合理的な処分概念の構築・安全評価 (7) ハイブリッド固化体の閉じこめ性能に及ぼす合成プロセスの影響評価、 日本原子力学会2023年春の年会、東京 (2023). 
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る