【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT0020
利用課題名 / Title
TFT構造における半導体層の局所物性評価
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
EELS, モノクロメータ, IGZO, TFT,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam,電子分光,ナノエレクトロニクスデバイス/ Nanoelectronics device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
川崎 直彦
所属名 / Affiliation
東レリサーチセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
大塚 祐二
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
治田 充貴
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-403:モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
InGaZnO(IGZO)は、高い電子移動度が注目され、トランジスタのチャネルとしての応用が期待される材料である。構造や組成、欠陥等に依存してキャリア濃度や電子構造が変化すると考えられているが、デバイス特性へ与える影響を調べるには、実デバイスにおいて局所的な構造を評価する必要がある。昨年度の課題支援番号:A-21-KT-0043では、高空間・エネルギー分解能分解能STEM-EELSスペクトルにおけるキャリアプラズモンピークを利用して、薄膜トランジスタ(TFT)中のIGZO薄層の局所的なキャリア濃度に関する知見を得ることに成功した。さらに本課題では、同様にSTEM-EELSを用いて、バンドギャップ近傍(2-4 eV)のスペクトル挙動から局所的な電子構造について考察した。
実験 / Experimental
市販品ディスプレイパネルを解体してTFT部を抽出し、ソースドレインとIGZO薄層とのコンタクト部、およびゲート電極が含まれるような断面試料をFIBで作製した。IGZO薄層のうち、ゲート電極下のチャネル領域、および、ソースドレインとゲート電極の間に位置する低抵抗n+領域において、STEM-EELSスペクトルを取得した。IGZOの電子構造を調べるには1 ~ 5 eV 付近のエネルギー領域においてゼロロスピークに干渉しない信号検出が必要であり、モノクロメータ搭載低加速原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて加速電圧60 kVで測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(b)にチャネル領域、n+領域で得たlow-loss EELSスペクトルを示す。1.6 eV程度より低エネルギー側はゼロロスピークの裾に相当するために強度が大きく上昇しているが、1.6 eV程度以上ではゼロロスピークに干渉せずにシグナルを検出できている。チャネル領域では、3.2 eV付近から強度が立ち上がる様子を確認でき、チャネル領域のIGZOのバンドギャップが3.2 eV程度であると言える。一方、n+領域では、3.2 eV付近で強度が立ち上がることはチャネル領域と類似しているものの、バンドギャップエネルギー以下の領域においてスペクトル強度が上昇している。これは、図1(c)に示すように、欠陥等に由来するギャップ内準位への電子励起を観測しているためと推測される。昨年度に実施したEELSによるキャリア電子濃度評価(課題支援番号:A-21-KT-0043)では、n+領域の方がキャリア電子濃度は高いことが示されていた。これらの結果を併せると、n+領域ではIGZOのバンドギャップはチャネル領域と顕著には変わらないものの、ギャップ内に存在するエネルギー準位に電子が存在しており、キャリア電子として電導に寄与していると推察される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a) BF-STEM image of IGZO-TFT, (b) normalized EELS spectra and (c) the schematic diagram of estimated band alignment at channel and n+ region of the IGZO thin film
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
測定の際にご指導を頂いた、京都大学化学研究所先端ビームナノ科学研究センター 倉田博基教授、治田充貴准教授に感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 川崎 直彦, 稲元 伸, 大塚 祐二, 治田 充貴, 倉田 博基, ARIM令和4年度秀でた利用成果発表会, 令和5年2月1日(昨年度成果に追加する内容として発表)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件