利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.31】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT5038

利用課題名 / Title

無機層状化合物の有機誘導体の合成と評価

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance,核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance,スピン制御/ Spin control,パワーエレクトロニクス/ Power electronics


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

町田 慎悟

所属名 / Affiliation

東京理科大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

菅原義之

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

服部峰之,大沼恵美子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-505:固体NMR装置 (SSNMR)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

層状粘土鉱物カオリナイトの層間のOH基と酢酸中のカルボニル基との脱水縮合反応によって、アセチル基(CH3(O)CO-)が共有結合(-C-O-Al-)によって層間に固定化されて層間修飾されたカオリナイトの有機誘導体を得た。そのため、有機基の存在、結合状態、層との相互作用等について、固体NMRにより解析する。

実験 / Experimental

アセチル基が共有結合によって層間に固定化されて層間修飾されたカオリナイト有機誘導体(AcO-Kaol)の有機基の存在、結合状態、層との相互作用等について、固体NMR(1H, 27Al, 13C CP, 29Si CP MAS NMR)を用いて分析した。また、アセチル基が固定化されている有力な証拠を得るために、酢酸-d4によるカオリナイトの有機誘導体(DcO-Kaol)を作製し、2H MAS NMRを測定した。利用時間が限られていたため、一部の各種(29Si CP MAS, 2H MAS)については積算回数の少ないブロードなプロファイルで十分とした。また、いずれの核種も回転数は8kHzで測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

アセチル基のC=O基およびCH3基帰属されるシグナルはいずれの試料の13C CP/MAS NMRスペクトルにも観測されたが、いずれのシグナルにも信号強度が弱いシグナルがスプリットしていた(一例としてFig. 1にAcO-Kaolのスペクトルを示す)。また、134ppm付近にもシグナルが観測された。今回の反応にはカオリナイトとN-methylformamide(NMF)の層間化合物から合成したメトキシ修飾カオリナイトを反応中間体に用いるが、NMFが完全に除去されていなかったことが、後日IRスペクトルから明らかとなった。そのため、メチル基のスプリットおよび、134 ppm付近のシグナルは試料表面上に残存したNMFであることが考えられた。試料の洗浄が不順だったため、IRスペクトルの確認を怠らずに測定に臨む。 いずれの29Si CP/MASスペクトルもブロードではあったが、カオリナイトの層構造に由来する-90.3、-90.7 ppm付近のシグナルの高磁場位にカオリナイトのSiO4層に層間分子がキーイングし、SiーOーSiの角度が広がったことが考えられるシグナルが観測された(Figs. 2 and 3)。このシグナルの強度は酢酸-d4を用いた試料の方が弱かったため、CH3基またはCD3基がキーイングした可能性が高い。今後の利用の際には、積算回数を向上させてS/N比を向上させたスペクトルを得るとともに、コンタクトタイム依存性も測定する予定である。 1H MAS NMR スペクトルにおいては、酢酸-d4を用いた試料ではCH3の シグナルはカオリナイトの水酸基のシグナルにオーバーラップしないため、層内のOH基、層間のOH基、層間のOH基の強度の減少、また水素結合の形成によりシフトしたOH基のシグナルに帰属されるシグナルが観測され、有機分子の層間の修飾後のOH基の情報を調査する有力な情報が取得できることが明らかとなった(Fig. 4)。 27Al MAS NMRスペクトルにおいては、カオリナイトの6配位のAlに帰属される0ppm付近のシグナルの高磁場位(-10 ppm程度)に弱いブロードなシグナルが観測された(一例としてFig. 5にAcO-Kaolのスペクトルを示す)。このシグナルが、層と有機基の相互作用によるものか、酢酸の酸性によりカオリナイト層中のAlが溶解して生成した酢酸とAlの化合物によるシグナルかは現在検討中であるが、前者の場合なら27Al 3MQ MASも今後の測定に対象となりうる。また、産総研での測定の前にこの点を明らかとすることが必要であることもわかった。2H MAS NMRのスペクトルはCD3基に帰属されると思われるシグナルが観測された(Fig. 6)。今後はCD3基の固定化を証明するため、Staticsで測定するなどを検討する。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1. 13C CP/MAS NMR spectra of AcO-Kaol.



Fig.2. 29Si CP/MAS NMR spectrum of AcO-Kaol.



Fig.3. 29Si CP/MAS NMR spectrum of DcO-Kaol.



Fig.4. 1 H MAS NMR spectrum of DcO-Kaol.



Fig.5. 27 Al MAS NMR spectrum of AcO-Kaol.



Fig.6. 2 H MAS NMR spectrum of DcO-Kaol.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

産総研先端ナノ計測施設(ANCF)令和4年度 第1回設備利用講習会「固体NMR」


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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